テーマについて何か響くものがないと基本的には断っています 『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』中村義洋監督インタビュー

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『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』誕生のキッカケから、中村監督と原作の小野さんが共通して持っていた「怖さの感覚」についてお聞きした前回のインタビュー。今回はさらにそこを掘り下げるべく、小野さんも昔からファンだったという「ほんとにあった! 呪いのビデオ」など、中村監督が作品を撮るうえでのこだわりについてお聞きしました!

 

 

 

■大事なのは作品で何が言いたいのか、伝わってくるもの

――中村監督といえば、伊坂幸太郎さんの作品の映画もイメージがあるのですが、監督心をくすぐる作品の特徴は?

それは本当にバラバラですよね。作品ごとにいろんなテーマが別々にあって、それに僕が響くかどうかであって、共通点と言われると難しいですね。実はあるのかもしれないけど。ただテーマについて何か響くものがないと基本的には断っています。この作品で何が言いたいのか、とかそういう部分は大事にしています。

 

――前回のインタビューで、ホラー映画的なシーンを入れるかどうか少し考えたと仰っていましたが、映像化しやすいかどうかは気にしますか?

いえ、映画化に向いているかとか、そういうのは全く考えないです。

 

 

 

■過去の自分の作品からつながった小野さんとの信頼関係

――あらためて『残穢』では、どういうところが監督の心に響いたのですか?

『残穢』に関しては、オファーされた時点でほぼ受ける気満々でした。それは10数年前に僕が撮っていた「ほんとにあった! 呪いのビデオ」について、小野さんが見ていてくれたというのが大きかったです。

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――どういうことですか?

あの作品は、視聴者に演出があると思わせちゃいけないもので、ただ取材しているだけのように見せなきゃいけないっていう、けっこう作るのに大変なものなんですけど…だからといって、褒められもしないし、けなされもしないし…という中でやっていたんです。でも小野さんは当時から、そこを見て認めてくれていたというのがすごく嬉しかったですね。

 

――その話を聞いた時点で既に通ずるものがあったということなんですね

はい。しかも小野さんは、具体的に、どこが好きという部分もけっこう言ってくださって。ますます、話をいただいた時点で受ける気でいました。

 

 

■「穢」という感覚について

――作品のテーマである「穢れ」については、監督はどういうイメージを持っていますか?

正直、僕はその「穢れ」に関する感覚はあまりないですね。ホラー映画を撮る以前はそういうものに対する怖いって感覚はあったんだけど、ホラーに一回手を染めちゃったら、もう別にというか、逆に怖くなくなっちゃったところがあって。

 

――慣れちゃったということですか?

そうですね。慣れてきたというのもあるし、まあ実際、怖いことにもなかなか遭遇しないし(笑)。

 

――意外と怖いことって起きないものなんですね

だから「穢れ」という言葉に関して思ったのは、この映画の場合だと、襲ってこない部分が逆に大事で、「呪怨の“怨”」という字とは、線引きされる別の感覚なんだと思いました。襲ってこないけど間違いなく隣の部屋にいるとか、作る上では、そういう部分を大事にイメージしました。

 

【中村義洋監督インタビュー】
普通のホラーと全然違うから怖い...夏の終わりにオススメのホラー
テーマについて何か響くものがないと基本的には断っています
撮影があまりに怖いので、心霊スポットの噂がないところをロケ地に選んだこともあった
試写会で竹内結子さんに「めちゃくちゃ怖い!」と怒られました

 

■「残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-」ブルーレイ&DVD発売中!

監督:中村義洋(最新作「殿、利息でござる!」公開中)

原作:小野不由美(新潮社刊)

脚本:鈴木謙一

出演:竹内結子、橋本愛、佐々木蔵之介、滝藤賢一 ほか

公式サイト:http://zang-e.jp/

発売元:ハピネット

(C)2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会

 

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