子役時代の撮影現場にも足を運んだ『バースデーカード』主演・橋本愛の想い

『バースデーカード』吉田康弘監督インタビュー最終回!

吉田康弘監督インタビューの最終回では、橋本愛さん、宮崎あおいさんの役作りに掛ける気迫を感じるエピソードをはじめ…撮影現場の舞台裏についてお話を伺いました。

 

 

■子役の芝居を「自分の体験」として見つめた橋本愛

――人の成長を15年分も描くとなると、ご苦労もあったのでは?

そうですね、紀子に関しては子供時代から役者さんを4人繋いでいる訳で、それがいちばん苦労したかもしれませんね。橋本愛さんを決めてから子役を探したんですけど、お芝居ができることも大事だけどやっぱり顔にも説得力を持ちたいので、似てる子を探しました。なおかつ、顔が似てる子が見つかったら、今度は芝居。だからオーディションもリハーサルもだいぶやりましたね~(笑)。その点、橋本愛さんは宮﨑あおいさんと子役の芝居を現場にしっかり見に来てくれてたんですよ。「母親」から「自分」に言われた言葉なので、やっぱり自分の芝居に影響があると思って「自分の体験」として感じたいという気持ちでいてくれてましたね。

 

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――すごく力を入れて臨んでおられたんですね。

主演女優ということで、現場でもそういう存在としてみんなを引っ張ってくれてましたよ。疲れた顔を見せないとか挨拶を元気にしてくれたり、そういうところでは素晴らしい仕事をしてくれました。宮﨑あおいさんも然り、です!

 

 

■現場をまとめた宮﨑あおいの集中力

 

――宮﨑あおいさんは、映画の中では器用に編み物の腕前を披露されていましたが・・・

最初からすごくできる人だったんですよね。設定でお伝えした時にも、こちらでご用意した先生とお話されて少し練習するとすぐ掴んでくださって、現場の最中でもずっとやってたりとか。あと集中力がすごいので、スタッフは宮﨑あおいさんの一番いい芝居をちゃんと撮りたいという気持ちになってやってましたよね。

 

――と、いいますと?

例えば、現場であるシーンが終わった時にも控室に行かなかったりするんですよ。そこに居たいと思われる時はずっといて、端っこでその衣装のまま編み物をしている。やっぱり役の集中を切らしたくないということですよね。するとスタッフも、セッティング替えだけど気持ちをフッと抜くんじゃなくて「早く次の準備をして撮ってあげたい!」という気持ちになるんです。そういうこととかはすごくありがたかったですね。

 

――そういう現場の一体感があったとは…。本当に「チーム」ですね!

あと、紀子がお母さんのバースデーカードを読んで涙するシーンでは、現場では実際に宮﨑さんの声を流しているんですけど、テストでは聞かせないで本番に取っておくんです。

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やっぱり集中力が全然違うし、初めて聞くほうが新鮮だし。手紙もテストの時はただの真っ白な紙で、実際に書いてある手紙は本番の時だけ。そして本番で、橋本さんが読むスピードに合わせて宮﨑あおいさんの声を流すんです。そうすると現場での芝居の泣き声などは使えなくなっちゃうんですけど(苦笑)でも声を聞いてる方が気持ちはぐっと入るじゃないですか。で、どっちが欲しいかというと表情なので、音は諦めてその表情をとらえるようにしました。

 

――あの表情は、本当にリアルなものだったんですね!

なおかつ、その宮﨑さんの声は映画では使わない声です。映画用にはちゃんとスタジオで撮り直すので。だから毎回、橋本愛さんのお芝居を撮るためだけに、前日わざわざ宮﨑さんに手紙を読んでもらって、それを流していたんですよ。そういうことは役者さん同士で当たり前のようにやってくれてました。相手のお芝居を引き出すために自分ができることだったら、それは何でもやりますよという気持ちで。みんな当然のようにやってくれました。

 

――では最後に、今このタイミングでこの映画を作った意味をお聞かせください。震災で家族を亡くした方も多い中、そんな方にも向けて作られたのかと思わされました。

2010年から2011年あたりに初稿を書いているので、脚本を書いていた時に実は震災を挟んでいて、また自分自身に子供が産まれたりして、書いている時にそういうことを考えていたというのはあります。途中でも触れましたけど、家族っていうのは、誰かが亡くなってからでも家族であり続けるんじゃないかというのが、ひとつメッセージとしてあります。それは普遍的なことだと思いますし。家族の形は多様化してきていますから、離れて暮らす人もいるし片親になる人もいっぱいいます。でも家族の絆はずっと続くんじゃないかと。そういう意味は感じ取ってもらえればいいなと思いますね。そんな重たいテーマですが、説教っぽくない笑いと涙と爽やかな風でお送りします(笑)!

 

 

 

【『バースデーカード』吉田康弘監督インタビュー(全4回)】
(1)オリジナル脚本で東映配給100館を勝ち取った理由とは?
(2)橋本愛さんの指摘で足された大切なシーンがあるんです
(3)木村カエラの主題歌「向日葵」は「ヘイ・ジュード」の"女性版"
(4)子役時代の撮影現場にも足を運んだ主演・橋本愛の想い

 

■『バースデーカード』公開情報

2016年10月22日(土) 全国ロードショー

出演:橋本 愛 ユースケ・サンタマリア 須賀健太 / 中村 蒼 / 谷原章介 木村多江 宮﨑あおい

監督・脚本:吉田康弘(*「吉」の字は「土」に「口」です)

主題歌:「向日葵」木村カエラ(ELA / ビクターエンタテインメント)

公式サイト:http://www.birthdaycard-movie.jp/

 

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