巧妙なフィクションの定義とは?『岸辺の旅』黒沢清監督(3/4)

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『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で感じた映画の可能性

撮影の様子から、小松政夫さんのギャグのルーツまで…なかなかレアな話も飛び出した前回のインタビュー。今回は、黒沢監督御自身のルーツを探るべく、影響を受けた映画作品についてお聞きしました。

 

 

今でもよく見直す作品は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

ーーー前回、小松政夫さんのファンだったというお話が出ましたが…好きな映画ってありますか?

いろいろありますが、あまり大昔のことを語っても面白くないと思うので、僕にとってはそう若くないときに影響を受けて、今でもけっこう見直している作品を言うと、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』です。あれが世に出た頃には僕も大人になって、映画も撮っていたんですが、そのときに観た面白さは、号泣しかかりました。

 

 

話はくだらないんだけど…泣きそうになる

ーーー号泣しかけるって、すごい衝撃だったんですね!

映画でこんなに泣きそうになるもんなんだなって思いました。何度も見直す中で、これは良くできてるなあってカットごとにわかるんですよ。正直、話自体はくだらなくて、こんな話でよく面白くなるなって感じなんですけど、あそこまで見事に作られると面白いんだなと感動しました。

 

ーーー観るたびに映画人として発見がある感じですか?

あれを見るまでは、映画を作る上では、物語のレベルとか、人間の感情のレベルとか、深みとかに、何か強烈なものがないと面白くならないんじゃないかという先入観があったんですけど、そうじゃなくても良い映画は作れるんだなと思いました。そこには監督の意志とセンスと巧妙な計算を強く感じました。そこで、僕にもそういうものを作りたい、できるかもしれないという勇気をもらいましたね。

 

ーーーやはりプロが見ると違った発見があるんですね

もちろん世界的に大ヒットしたという、多くの人に通じているという凄みや説得力もありましたけどね。

 

 

1カットでさりげなく見せるカッコよさ

ーーー黒沢監督が特にすごいなと思うシーンはどこですか?

例えば…マイケルジェーフォックスが演じる主人公マーティが恋人と話したあと、また明日会おうって言って別れるシーンがあるんですけど…じゃあねって言ったあと、走って来た車にぱっと手をついてスケボーでサーッと行くんです。それが1カットで撮られてるんですけど、そこがカッコイイなと思いました。

 

ーーー入念なリハーサルを重ねたことに気づかせないさりげなさはかっこいいですね

今ならCGを使っていろいろできると思うんですけど、昔のものですから。本当に女の子と話しているシーンから車に手を着いてサーッと行くところまで全部ちゃんとやってるんですよ。まあ今でも、トムクルーズならやるかもしれないですけど(笑)、マイケル・J・フォックスもきっちり実行している。そういう周到な準備が必要なカットを至るところでやってるんです。そこに感動しました!

 

ーーーでも、ボクは完全にスルーしているシーンでした

シーンとしては何気ないところなんです。そんなところでもちゃんと本人が実際にやっているところを見せているんですよね。次のシーンでも、マーティがスケボーで走ってきて、階段のところで止まってポンッと蹴り上げて手に持って行くなんて、しびれますね。カットを割ってしまえば簡単にできるのかもしれないですけど、それを本人に練習させて、あくまで1カットでやらせているわけです。こういうところが面白い映画の秘訣、演出のツボなのかなと思いました。

 

ーーーぜひ今度、そういう目で『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を見直したいと思います!

変な言い方ですけど、巧妙なフィクションは極めてドキュメンタリーに近いってことだと思いました。

 

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©2015「岸辺の旅」製作委員会/ COMME DES CINÉMAS

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■「岸辺の旅」公開情報

*20015年10月1日(木)〜 テアトル新宿ほか全国ロードショー

*第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞受賞!

監督:黒沢清

脚本:宇治田隆史

出演:深津絵里、浅野忠信、小松政夫、蒼井優、柄本明、村岡希美、奥貫薫、赤堀雅秋、首藤康之

公式サイト:http://kishibenotabi.com

「岸辺の旅」予告篇