原作にない侵略シーンを映像化したい!『散歩する侵略者』黒沢清監督×原作 前川知大さんインタビュー(全4回)
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
『CURE』『回路』『岸辺の旅』『クリーピー 偽りの隣人』など…心の奥底に眠る闇や哀しみをサスペンスフルに描いてきた世界的名手 黒沢清監督の最新作は“侵略者”の物語。原作は、劇団「イキウメ」を主宰する劇作家、演出家 前川知大(まえかわ・ともひろ)さんによる同名の舞台作品、小説作品。
夫婦仲がうまくいっていない加瀬鳴海(長澤まさみ)と加瀬真治(松田龍平)。ある日、行方不明だった真治が帰ってくるのだが、明らかに様子がおかしい。やがて、一家惨殺事件を追うジャーナリスト・桜井(長谷川博己)の物語が交差しはじめ、事態は思わぬ方向へと発展していく…。
はたして…“侵略者”とは何者なのか? 侵略者の目的とは何なのか? そこから浮かび上がってくるのは、人々がいかに“概念”に囚われているのか?という存在の儚さ。前川作品らしい文学性とエンターテイメント要素を併せ持った物語が黒沢監督によって鮮やかに映像化されています。フィルマーズでは、黒沢清監督と前川知大さんにインタビュー! その製作秘話、物語に込められた意図など…その舞台裏を伺いました
■原作にない侵略シーンを映像化したい!
—前川さんが手がけた同名舞台、小説が原作ですが…映像化について、どのような想いを持たれていましたか?
前川知大さん(以下、前川)
期待することしかありませんでした。監督が侵略SFとして、原作にない侵略シーンを絵にしたいと最初におっしゃっていたので、そこが一番「ああそうか、そこまでかくんだ!」と…そこが結果的に一番おもしろかったです。
—実際に出来上がった作品をご覧になっていかがでしたか?
前川
侵略する最後のシーンで、得体のしれないものがきた感じがすごくおもしろかったですね。その前のストーリー部分は、原作にすごく忠実に丁寧に描いていただいたのでそこもすごいなと思いました。そして、ディティールがぜんぜん違うので、演劇とストーリーが同じなのにまったく違うものになっているという驚きもありました。
(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
—舞台版と映画はラストがだいぶ違いますね
黒沢清監督(以下、黒沢)
やはり映画らしくしたいとも思っていました。ですから、これまで一回もやったことがない「侵略SF」というジャンルとして、手間もかかるのですが…やらせていただきました。
前川
SF小説の古典的なテーマみたいなモノがすごく好きで、しょっちゅう描いているんです。宇宙人が地球にやってきたとき、地球人が戦争をやめて立ち向かう展開っていうのがあります。それは人間がもう一段階レベルアップするきっかけになる話。(舞台を)書いたときはたぶんそこまで意識していなかったと思うのですが、いま映画のラストシーンを見ると、そういう点ではすごく正当なSFの流れになっていると思いました。舞台版では、人間から戦争の元になるような概念を奪っちゃえばいいじゃんみたいなセリフがあります。それができたとしたらもう一個違う文明に気づけるんじゃないのか、というイメージで書いているんですけど、それがはっきり出たと思いました。
【監督 黒沢清 × 原作 前川知大インタビュー(全4回) 】
(1)原作にない侵略シーンを映像化したい!
(2)黒沢清監督は原作のどこに惹かれたのか?
(3)監督 黒沢清 × 原作 前川知大が共感する笑いのメソッド
(4)奪われたくない「概念」は何ですか?
『散歩する侵略者』公開情報
2017年9月9日(土)新宿ピカデリー他にて全国公開
監督:黒沢清
原作:前川知大「散歩する侵略」
脚本:田中幸子 黒沢清
出演:長澤まさみ、松田龍平、高杉真宙、恒松祐里、長谷川博己