監督が「完璧」と語る「武曲 MUKOKU」のキャスティング 熊切和嘉監督インタビュー(2)
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
父親とのある事件から酒浸りの日々を送る主人公・矢田部研吾。彼の前に現れたいまどきの高校生・羽田融(はだ・とおる)は、実は本人も知らない剣の才能の持ち主だった――
その羽田融を演じるのは、期待値急上昇中の新鋭・村上虹郎さん。主演の綾野剛さんをはじめ、前田敦子さん、小林薫さん、風吹ジュンさん、柄本明さんと、実力派が顔を揃える、監督も「完璧」というキャスティングとなっています。今回は、そのこだわりのキャスティングについて伺います。
■村上虹郎は“融”の実写版“!?
-ライバル役・羽田融を演じた村上虹郎さんもまた、綾野剛さんとは違うタイプの凄い迫力を見せておられました。演出上でのやりとりなどがあれば教えてください。
融(とおる)役が彼に決まり、彼に改めて会ったとき、「ああ、こういうことなんだ」と、融の実写版を見たような思いでした。それまでは字面の上で存在していて、自分の中に漠然とあった“融像”が、実体化したような感じでした。だから演出では細かく言うというよりは、いかに伸びやかにやってもらうかということは気にしました。彼も違和感があるとすぐ顔に出る人なので、それがないように、できるだけ伸びやかにやってもらいたいなと思って撮っていましたね。
-既に“融”に限りなく近かったのですね。
そうですね。研吾って自分の世代なので、割とよく分かるんです。もちろん難しい部分もあるんですけど、ああいう過去にとらわれて後ろ向きにしか生きられない感じは理解できるし、すごく掴みやすい部分もあるんです。
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
でも、融は僕から見ると新しい世代で、そういったトラウマを抱えつつも、どこかでそれを乗り越える生命力があったり、どこかあっけらかんとしていたりとか、僕はそこが融の魅力だと思うんです。そういうものって、僕にはないんですよ。そこが虹郎くんにはあったので、逆にそれをいかに損なわないようにするかという感じですかね。
-劇中での同級生とのやりとりを見ても、彼が周囲の高校生とは違うことが伝わり、新しい世代の新しいタイプの強さを感じさせます。
なんかある種、危うさがあるというか、怖くなるときもありますしね(笑)。そこは彼だから出たということでしょうね。
■キャスティングは完璧だった
-キャスティングに関して、「この役にはどうしてもこの役者を」という方はいらっしゃいますか?
全員そうですけど、綾野くんはもちろん、虹郎くんはどうしてもと思いました。
-研吾の父親役・小林薫さんも鬼気迫る演技でした!
小林薫さんもそうですね。僕は何本もご一緒していてすごく信頼していますし、それだけじゃなくて、小林薫さんってやっぱりたまに殺気を感じるんですね。すごく優しいんですけど、黙っているとたまに怖いんです。こんなことを言うと怒られそうですが、地獄を見てきたような目をしますからね(笑)!
-お茶の間でも好感度の高い俳優さんですが、たしかに元のお顔立ちには怖さもあります…!
たぶん薫さん、じっと立ってたら怖いだろうなと思いましたね。今までの作品ではあまりそういうところを撮っていないので、あの“人殺しの目”を撮りたいなと(笑)。
-(笑)。まさに剣の道を極めた男にうってつけですね。研吾の師匠でもある禅僧・光邑を演じた柄本明さんもはまり役でした。
はい、柄本さんもそうですね。そういう意味では、僕は今回のキャスティングは完璧だったなと思っています。
【熊切和嘉監督インタビュー】
(1)綾野剛が肉体改造して表現する父と子の確執
(2) 監督が「完璧」と語る「武曲MUKOKU」のキャスティング
『武曲 MUKOKU』公開情報 6月3日全国ロードショー
監督:熊切和嘉
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
公式サイト http://mukoku.com/