綾野剛が肉体改造して表現する父と子の確執『武曲 MUKOKU』熊切和嘉監督インタビュー(1)
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
矢田部研吾(綾野剛)は、幼い頃から剣道の達人だった父(小林薫)に鍛えられ、その世界では一目置かれる存在となった。しかし、父との「ある事件」から研吾は生きる気力を失い、酒に溺れるどん底の日々を送っていた。そこに現れたのは、ラップのリリックづくりに熱中するいまどきの高校生・羽田融(村上虹郎)。実は彼は、本人も知らない恐るべき剣の才能の持ち主だった――。
藤沢周の原作『武曲』を、『私の男』の熊切和嘉監督が映画化! 主演の綾野剛さんは、なんと2ヶ月に渡る猛特訓で肉体改造を果たし、6分間にも渡る決闘シーンなど、アクションにも真っ向から取り組んでいます。
熊切監督へのインタビュー第1回では、役者に肉体改造を課した、本作に懸ける想いについてお話を伺いました。
■セリフでなく肉体で語る映画
-この作品を撮ることになった経緯として、脚本の0稿を読んで気に入られたとのことですが、気に入ったポイントはどこですか?
いちばんテーマとなる「父と子」の話の部分ですね。父親と息子との関係というか確執というか、父と息子って不思議なライバル関係じゃないですけど、そういう複雑な関係性ってあって。その部分については、男は誰しもそうだと思うのですが、僕も思うところがあったので。
若い頃は「父親みたいになりたくない」と思っていた時期もあったんですけど、今は「そっくりだね」と言われたり(笑)。そういう部分ですごく共感できたと言うのはありました。
あと、ちょうどその時期は、俳優の生身の肉体を使っての表現にすごく興味があったんです。この作品ならそれを思う存分にできるかなと、そういう思いもあったのは大きいですね。
-俳優の肉体を使っての表現ということですが、身体表現について、演出する時にはどんな話をされましたか?
身体表現っていうのは映画全体のことなので、特に演出で語ったということはありません。セリフで語るのではなく、肉体で語る映画ということですかね。セリフで説明せずに肉体で表現するというのをやりたかったんです。
■2ヶ月に渡る猛特訓で、肉体改造をした綾野剛
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
-まずは矢田部研吾を演じた綾野剛さんについて伺いたいのですが、今回、剣道5段という役柄に向け2ヶ月の特訓を積まれたそうで、その体づくりには目を見張るものがありました!
そうですね(笑)。
-爽やかな役から優男風まで幅広い演技が魅力の綾野さんですが、現場ではどんなやりとりをされましたか?
綾野くんとやるのは2回目ということもありますし、逆に綾野くんが「監督のやりやすいように」と場を作ってくれる感じといいますかね。現場って、予算もありますし、スケジュールもありますし、いろんな制約があったりするんです。そういうところで綾野くんが最大の味方になってくれたというか、協力してくれたので、そこはすごくありがたかったですね。
-テーマとして「父と息子の確執」があるとおっしゃいましたが、たとえば自分の経験などを盛り込んで欲しいなどという話もされましたか?
いや、経験を盛り込むとまではいきませんが、そういう話になった事はありますね。それは、クランクイン前に脚本について話したときに、そういう話になったんですけど。そこには役をつかむ上でのヒントもあると思ったし、お互いの確認作業というか、それぞれのシーンでどういう心境なのかを、お互い確認しながらやっていたようなところはあります。
-ということは、役柄についてはクランクイン前にしっかりすり合わせをしてから、撮影に臨んだということですね!
【熊切和嘉監督インタビュー】
(1)綾野剛が肉体改造して表現する父と子の確執
(2) 監督が「完璧」と語る「武曲MUKOKU」のキャスティング
『武曲 MUKOKU』公開情報 6月3日全国ロードショー
監督:熊切和嘉
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
公式サイト http://mukoku.com/