「自分と向き合う」をテーマに撮影された映画 「武曲 MUKOKU」熊切和嘉監督インタビュー(4)
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
キャスト、スタッフが一丸となってその世界観を作り上げた”現代の剣豪”を描く『武曲 MUKOKU』。熊切和嘉監督へのインタビュー最終回では『武曲 MUKOKU』のみどころについてお話を伺いました!
■「自分と向き合う=自分を斬る」というもうひとつのテーマ
-はじめにこの作品のテーマのひとつとして、主人公・研吾の抱える「父と子の複雑な関係性」を挙げておられましたが、いま、この作品を社会に送り出す意義を感じていたりしますか?
いや、あまりそういうのはないです。でもそういう意味でいうと、「自分と向き合う」みたいなところもテーマではあるので、それは日常生活でも必要なことかなとは思っています。
-劇中でも、柄本明さん演じる禅僧・光邑が「自分の弱さを認められない人間」について話すシーンもありましたが、「自分と向き合う」とは、そういう本当の自分を見つめる、自覚するということでしょうか。
ええ、「自分を斬る」ということですかね。やっぱりそれは、主婦の方にでも伝わることなんじゃないかと思って、撮ってみました。
-剣の道を極めた者ではなくても、日常生活でも共通のテーマだと。主人公の研吾は、剣の道と父親に複雑な思いを抱え、道を踏み外した部分もあると思いますが。
踏み外していた時は、そこは逃げていたんじゃないですかね。最後は「向き合った末に」という。
■とにかく圧倒的な何かを見せられると思っています
-激しく緊張感たっぷりの格闘シーンもこの映画の魅力のひとつです。研吾とその若きライバル・融が対決するシーンは何度かありますが、同じ2人の対決でも、「自分と向き合う」過程が描かれるように、それぞれ意味合いが違うというのも印象的でした。
そうですね。
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
-とにかく迫力のあるシーンが満載ですが、特に格闘シーンの撮影現場は、鬼気迫るものがあったのではないでしょうか?
俳優は満身創痍で大変だったと思いますし、スタッフもみんな大変だったと思います。僕は、はしゃいでいるようなところもありましたけど(笑)。
-監督だけは楽しかった!?
ああいう格闘シーンっていうのは、意外と変な迷いは生まれないんです。それよりもある意味、地味なシーンのほうが、芝居で迷ったりすることもありますし。その点、あそこは「もう、やるしかない」というようなところもあるので。
©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
-勢いを感じる迫力のシーンが続き、そして感動のラストに向かいます。少し話が逸れますが、映画には希望が持てるラスト、絶望するラストなど、さまざまな終わり方がありますが、監督としてはどっちにしたいという方針などありますか?
僕は絶対的に、それはどっちもアリだと思います。絶望を描いたものを観たことで希望を生じる人もいると思うし、だからそれは作り手が信じきれる方を取ればいいんだと思います。そこで希望を信じきれなければ、無理に希望にする必要はないと思いますし、希望を信じきれたならば、希望を描けばいいと思います。まあその2つじゃないですし、もっと客観的なものもあると思いますし。
-たとえば誰か特定の人や、こんなタイプの人に見て欲しいというのはありますか?
男の人は何か刺さるものがあるのかなと思います。かといって、女の人にも観ていただきたいですし、色んな人に観てほしいですね!
-では最後に、劇場に足を運ばれる方、弊サイト「Filmers」の読者に、メッセージをいただけますでしょうか。
『武曲 MUKOKU』という漢字のタイトルで、もしかして堅苦しいのかなとか、古臭いのかなと思われる方もいるかもしれませんが、全然そんなことはなくて、いまを生きている人たちの話なので、きっと共感してもらえると思います。とにかく圧倒的な何かを見せられると思っていますので、ぜひ映画館で体感してください。
【熊切和嘉監督インタビュー】
(1)綾野剛が肉体改造して表現する父と子の確執
(2) 監督が「完璧」と語る「武曲MUKOKU」のキャスティング
『武曲 MUKOKU』公開情報 6月3日全国ロードショー
監督:熊切和嘉
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫)
出演:綾野剛 村上虹郎 前田敦子 風吹ジュン 小林薫 柄本明
公式サイト http://mukoku.com/