地下アイドル「めめたん」にハマる男に、監督自身が重ねた想い『堕ちる』村山監督インタビュー
30分の短編映画としては異例の劇場公開で話題の『堕ちる』。じつは、村山監督の記念すべき初監督作品。「(短編では終わらない!)長編もできることをプレゼンしたかった」という想いがこもっているだけに、登場人物の設定も細かにイメージされていたようで…地下アイドルにハマる寡黙な職人・耕平と、勤め先である織物会社の社長との間には、裏設定まで存在していました。
■耕平さんと社長の間には、実は裏ストーリーがある
-撮影期間はたった2日という30分の映画ですが、長編のように感じられます。
いわゆる“3幕構成”にはしてあります。短編を撮り続けたいわけではなくて、やっぱり長編への第一歩として長編もできることをプレゼンしたかったので(笑)。短編だと終わりが投げっぱなしだったり、それを描く時間がないからと変な設定が急に出てきたりしますけど、そこを僕は長編映画の形にはしたかったので、設定はちゃんと見せていますね。
あと、嫌な気分で終わるより、観終わった後の気持ちよさが、映画としては大事というか、映画の良さだと思っていて。僕はやっぱり映画は好きですし、カタルシスのある映画にしたかったというのはあります。
これは僕の思いが詰まった映画でして、決意表明みたいなところもあるんです。ふだんは映像の仕事を請け負って職人のようにやっているところもあるんですけど、やっぱり映画をやりたい、新境地に行きたいというところで、主人公の耕平さんも同じようなところがあるというか。自分が請け負う仕事だけじゃなくて、めめたんのために新しいステージに行くという話なので。
-職人からクリエイティビティを発揮していくステップアップの物語でもある、と。
それもあるし、社長と耕平さんの友情の話でもある。僕の中では裏ストーリーがあって。耕平さんは現社長が子供の頃から面倒を見たりしてて、その社長は東京の大学に行って、もっと現代的にやらないといけないと先代社長であるお父さんとバトルになり、その先代社長が亡くなって自分が跡を継ぎ、このままじゃダメだと考えているうちに…という長い歴史も、2人の裏設定にあるんです。
-あの2人にそんな長い歴史があったとは! 耕平さんがアイドルにハマっていくところがすごくリアルですが、それは実際に取材にも行かれたのですか?
そうですね。僕はアイドルファンではまったくないのですが、実際にファンミーティングに行ったり、去年の3月に初めてアイドルのライブに行きました。その時にペンライトを渡されたり、ハマったきっかけをファンの方に聞いたりして、わりとリアルなエピソードは入れています。ライブハウスの店員ってバンドマンみたいな愛想のない人がいたりして、入り口でサイリウムを配っていたり、それも実体験から入れていますね。
アイドルファンへの取材で得たエピソードがそのまま反映されているシーン。「そっと耳打ちされてハマった」…わかる気がします(笑)
次回…インタビュー第4弾(最終回)は…『堕ちる』に影響を与えた過去の名作についてのお話をご紹介します。
【『堕ちる』村山和也監督インタビュー(全4回)】
(1)地下アイドルに恋した中年の物語『堕ちる』30分の短編が異例の劇場公開へ!
(2)地下アイドルにハマった主人公を演じ切った中村まことの存在感
(3)地下アイドル「めめたん」にハマる男に、監督自身が重ねた想い
(4)地下アイドル×中年男 異色の題材で長編監督へ名乗りを上げる『堕ちる』村山和也の挑戦
『堕ちる』公開情報
監督・脚本:村山和也
出演:中村まこと 錦織めぐみ 古川順 金子昌弘 水井章人 乗定裕 中島誠二 小保方裕哉 岡野絹恵 西山厚美
シネマート新宿(東京) 4月8日〜14日(監督とゲストによるトークショー付き)
★4/8(土) 19:30 中村まこと、錦織めぐみ(Luce Twinkle Wink☆)※初日舞台挨拶
★4/9(日) 20:30 宇多丸(RHYMESTER)
★4/10(月) 21:15 佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
★4/11(火) 21:15 福原香織(声優)
★4/12(水) 21:15 前口渉(作曲家)
★4/13(木) 21:15 鈴木亜香弥(衣装デザイナー/スタイリスト)
★4/14(金) 21:15 都築響一(編集者)
シアターセブン(大阪) 4月29日〜5月5日
4/29(土) トークショーあり。ゲスト:土佐和成(ヨーロッパ企画)
4/30(日) トークショーあり。ゲスト:酒井善史(ヨーロッパ企画)