地下アイドルに恋した中年の物語『堕ちる』30分の短編が異例の劇場公開へ! 村山和也監督インタビュー

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とあるきっかけで地下アイドル“めめたん”に恋をした無口な織物職人を描いた『堕ちる』。2016年9月、群馬県桐生市で開催された「第6回きりゅう映画祭」で初公開。たった1回の上映ながら、地下アイドル×中年職人というユニークな題材、映像の完成度が話題となり…ゆうばり国際映画祭にてスペシャルメンションを受賞! 30分の短編作品ながら異例の劇場公開に至りました。(*予告編は、この記事の最後に貼ってあります。インディーズの短編映画とは思えない完成度をおたのしみください!)

 

Filmersでは村山和也監督に単独インタビュー! まずは作品の誕生、そして劇場公開(4/8(土)〜)に至った経緯について伺いました。

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■村山監督が映画を撮るまで

-現在は映像ディレクターをされていますが、以前はニューヨーク市立大学で映画を学ばれていたそうですね。

そうですね、映画学科にいたんですけど。もともと日本でも大学に行っていて、そこでは考古学をやっていたんですけどね。

 

-考古学から映画に!?

まあ、二十歳前後に将来を悩む時期ってあると思うんですけど(笑)。その時に僕は一人旅をしてタイとかを回ってたんですけど、テロがあったりして、ふとNYに行こうと。行くまでは映画を自分で作ろうとまでは思ってなかったけど、行ってみるとみんな何かしら写真をやっていたり映画を作っていたりと、そういう環境があって。それで自分もできるかなと思うようになって。

 

その大学は卒業してないんですけどね。日本に帰ってからはCMの制作会社でバイトから始めて、1年ぐらいでやめてフリーになり、2008年ぐらいから映像ディレクターとしてやっています。

 

-映像ディレクターとしてはどのようなお仕事が多いですか?

CMやミュージックビデオ(MV)が多いですね。NMBとかアイドルグループもやっていたり、この映画の“めめたん”も、彼女が所属するLuce Twinkle Wink☆というグループのMVの監督を2本やっていたという縁があって。

 

-映像ディレクターとして活躍されながらも、映画を撮ろうとなったのはなぜ?

ずっと映画を撮りたかったんですけど、映画では“食えない”という現実的な問題がありまして。まずは生活があったというのはありますよね(笑)。ただ、このまま作らずに終わるのはちょっと怖かったので、ここ何年かは色々なところに企画は出していたんです。それでやっと通ったのが『堕ちる』の企画で。

 

-群馬県桐生市で行われている「きりゅう映画祭」のコンペですね。

企画書のコンペで、いい企画には制作費を70万円ぐらい出してくれて、それで桐生で作品を作ってくださいというもの。権利は監督のもので、ただ上映の最初は「きりゅう映画祭」でやってくださいという、そんなコンペに通って。

 

-では制作費はあまり多くはない?

そうですね。さすがに70万円ではできなくて、制作会社にもスタッフにも多大な迷惑をかけましたし、今まで仕事を一緒にしてきたという関係性があったからこそ、低予算でできた映画ですね。トータルいくらかはちょっと分からないです(笑)。

 

 

■30分という短編ながら話題を呼び、劇場公開へ

-ところでプロモーションはすべてご自身で手掛けているんですね!

そうなんです。自分で地道に電話したりメールしたりいろんなところにアプローチしていて、地方の映画館にはかなり冷たい対応をされたりしています(笑)。そんな中でシネマート新宿さんはサンプルを見てくれて、「これなら勝負できるからやりましょう」と劇場公開が決まりまして。

 

-そして連日トークショーが組まれていますが、かなり豪華なゲストが揃っています。

初日は主演のお二人が舞台挨拶に来てくれます。翌日はRHYMESTERの宇多丸さんですが、これはジェーン・スーさんが作品を観て絶賛してくださって、DVDを宇多丸さんに渡して下さっていたんです。それでお願いしたら快諾してくださって。僕もラジオとか好きで聴いていたし、うれしかったですね(笑)。

 

佐々木俊尚さんは、以前仕事でご一緒したことがあるので、予告編ができた時にまず最初にお送りしていて。佐々木さんのツイートを観た人が記事を書いてくださったりとか、作品が広まるきっかけを作ってくださったので、この機会にお呼びさせて頂きました。

 

福原香織さんは『らき☆すた』などの声優さんで、PVを撮ったこともあるしCMにも出てもらったことがあるし、観たいと言ってくれたのでお呼びしたんです。前口渉というのはこの映画の曲を作ってくれた作曲家で、実は中学からの友達なんです。鈴木亜香弥さんはめめたんのグループ(Luce Twinkle Wink☆)の衣装も作ってますし、今回も衣装デザインをしてくれたのと、タイトルも書いてくれたりと衣装以外でもいろいろお世話になっていて。

 

都築響一さんは全然面識はないんですけど、都築さんの本はたくさん持っていて、人づてに観たいと言ってくださっていると聞いて、連絡したら出ていただけることになったんです。

 

 

次回…インタビュー第2弾は…地下アイドルに恋をした無口な織物職人・耕平のキャラクターはどのように作られたのか? 脚本づくりの舞台裏に関するお話をご紹介します!

 

【『堕ちる』村山和也監督インタビュー(全4回)】

(1)地下アイドルに恋した中年の物語『堕ちる』30分の短編が異例の劇場公開へ!

(2)地下アイドルにハマった主人公を演じ切った中村まことの存在感

(3)地下アイドル「めめたん」にハマる男に、監督自身が重ねた想い

(4)地下アイドル×中年男 異色の題材で長編監督へ名乗りを上げる『堕ちる』村山和也の挑戦

 

 

 

『堕ちる』公開情報

監督・脚本:村山和也

出演:中村まこと 錦織めぐみ 古川順 金子昌弘 水井章人 乗定裕 中島誠二 小保方裕哉 岡野絹恵 西山厚美

シネマート新宿(東京) 4月8日〜14日(監督とゲストによるトークショー付き)

公式HP:http://ochiru-film.com/

 

★4/8(土) 19:30  中村まこと、錦織めぐみ(Luce Twinkle Wink☆)※初日舞台挨拶

★4/9(日) 20:30    宇多丸(RHYMESTER)

★4/10(月) 21:15  佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)

★4/11(火) 21:15  福原香織(声優)

★4/12(水) 21:15 前口渉(作曲家)

★4/13(木) 21:15 鈴木亜香弥(衣装デザイナー/スタイリスト)

★4/14(金) 21:15 都築響一(編集者)

 

シアターセブン(大阪) 4月29日〜5月5日

4/29(土) トークショーあり。ゲスト:土佐和成(ヨーロッパ企画)

4/30(日) トークショーあり。ゲスト:酒井善史(ヨーロッパ企画)

 

 

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