『映画 妖怪ウォッチ』シナリオ創作法 製作総指揮・原案 日野晃博さん(レベルファイブ)インタビュー
今回で3作目となる妖怪ウォッチ劇場版。1作目の『映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!』は興行収入78億円を記録。2作目『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』は55億円を超え、大ヒットシリーズとなっている。そのヒットの裏側には、初回から一貫して「とにかくお客さんを楽しませたい」という日野さんの思いが込められていたのです。
■子供達にとっての「ファンタジー」とは?
――妖怪ウォッチの劇場版は、子供達の世界や発想を広げるサポートをしている作品ではないでしょうか。たとえば1作目では、過去=おじいちゃんとのつながりを通して、まだ親との関係性ぐらいしか認識していない子供に、過去へ思いを馳せさせる役割をしているようにも思えます。
僕はそこにはあまり深い志があるわけではないのですが、(子供の頃は)『ドラえもん』とかが好きで。タイムスリップしておばあちゃんに会いに行く話があるんですけど、それが僕はすごく好きなんです。それで、自分が会ったことのないおじいちゃんに会いに行くファンタジーっていいなと思って。
今言われたように、自分と繋がっているといえば「お父さん」しかイメージできない子供達にとって、昔に戻って「おじいちゃん」と一緒に冒険するというのは、ちょっとファンタジーかなと思ったんです。
――今回の3作目では、「もしかしたら妖怪ウォッチの世界の中に、自分というキャラクターがいるかも?」というパラレルワールドを感じさせるユニークな作品に感じました。
子供達がアニメの世界をどういう風に捉えているんだろうというところから始まったんですけど、アニメのキャラクターたちも、画面の向こうの世界で生きている、という設定なんですね。
だから、もしそこに繋がったら、アニメのキャラクターたちがこっちの世界に出てくるんじゃないか、そしてこっちの世界からアニメの世界に行くこともできるんじゃないかという、そういうちょっとおもしろい“if”なんですよね。テレビの画面を通じて、2つの別の世界が存在している。お互いにそれを覗き合っているみたいな概念ですかね。
■あらゆる手を使って楽しませたい
――毎回、自ら脚本を手がけておられますが、創作術などはありますか?
僕はやっぱり、どんな手段を使ってでも、お客さんをホントに楽しませたいなと思っていて。テレビを観て好きなキャラクターたちができて、そのキャラクターたちが映画でどんなことをしたらさらに楽しんでもらえるのかな、という視点で考えています。
第二弾を作る時も同じように、テレビでは観られないことをしようと思っていました。たとえば、コマさんがいつも「お母ちゃん」と繰り返し言っているけれど、テレビではお母ちゃんは絶対出てこない。だから映画では、そのお母ちゃんを観たいよね、という感じです。あとは、ケータはずっとウィスパーをバカにしているけど、もしケータがウィスパーになっちゃったら面白いよね、とか。
そういうテレビでは絶対に観られない“禁断のお話”のようなものを映画にしようという感じです。映画館までわざわざ足を運んで見なきゃいけないっていう敷居があるので、その特別感をどうやって出すかですよね。
――では、まずはそういった特別感があるものはなんだろうという企画出しみたいなものを、日野さんご自身の中でやっていく?
はい、それはいつも僕の役割なので。
――スタッフを交えてではなく?
やりませんね。その発想までは1人で決めます。納得感の低いアイデアをみんなで「それでいいかもね」と何回か使おうとしたことがあるんですけど、結局その後にいつも変えちゃうんですよ(笑)。やっぱり自分がどこかで認めてないものを使ってしまうと、結局それよりいいものが出たら変えたくてしょうがなくなってしまうので。
僕は書き始めたら人の何倍も早いと思うんですけど、それまでの間がちょっと長くて「ちゃんと思いつくまで待って」という感じなんですよね(笑)。本当に自分の中で腑に落ちてるアイデアじゃないと先に進まなくなるので、それはちゃんと考えるというか、何かが降りてくるまで頑張って悩み続けますね。
【製作総指揮・原案 日野晃博さんインタビュー(全4回)】
『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』公開情報
2016年12月17日(土)全国ロードショー
製作総指揮/原案:日野晃博
原作:レベルファイブ
連載:月刊コロコロコミック
監督:ウシロシンジ
実写パート監督:横井健司
脚本:日野晃博・加藤陽一
声の出演:戸松遥 関智一 小桜エツコ 遠藤綾 重本ことり 梶裕貴 潘めぐみ
出演:南出凌嘉 浜辺美波 黒島結菜 澤部佑/遠藤憲一 山﨑賢人 斎藤工/武井咲