苦労した広島弁のニュアンス『この世界の片隅に』のんさんインタビュー
(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
作品の舞台が広島・呉のため登場人物は全員広島弁。しかも、広島市と呉市では微妙にニュアンスが違い、アフレコ時には話し合いを重ね方言のルールを決めていったのだとか。兵庫県出身で関西弁には自信のある(?)のんさんですが…広島弁には苦労したそうです。
◆関西弁とは違う「ええですね」に苦戦!
――舞台は広島市と呉市ですが、これまでそういった土地に馴染みはありましたか?
ぜんぜんないのです…。
――それにしては見事な方言でした! 苦労されたのではないでしょうか?
難しかったです…、すごく!
――どういうところが?
言葉自体は「◯◯しとる」とか「◯◯じゃ」とか、自分が地元で使っていたような言葉が出てきたりしたんですけど、イントネーションがまったく違って。ちょっと標準語っぽいイントネーションだったりして、それが難しかったですね。(自分の地元の)「◯◯しとる」のイントネーションのパターンが、頭の中に刷り込まれてて。
――のんさんは兵庫県出身ですし、出身地が近いぶん余計に難しかったんですね?
はい。標準語の言葉に直して言うと、そのイントネーションで言えるのに、広島弁で言うと、言えないみたいな。変な感じでした。
――実際に難しかった表現ってありますか?
「ええですね」というのがありました。「いいですね」の「いい」が「ええ」に変わっただけなんですけど、それがすごい難しくて(笑)。毎回忘れちゃって、「関西弁ぽくなってるよ」って言われて毎回直していました。
(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
――やはり関西弁とは少し違うんですか?
ぜんぜん違いましたね。難しかった!
――方言の指導はどなたがされたのですか?
栃野さんという方が方言指導でいらっしゃって。あと、すごいガッツリとお世話になったのが、(すずの義母)サン役の新谷真弓さん。その方が広島市の出身の方で、ずっとついていてもらいました。
――では広島弁で会話しながら?
いえ、普通に会話しているときはしなかったんですけど、おうちではけっこうしてました。自分でしゃべったり、お友達としゃべる時に使ってみたり。広島市とか呉市がそうなのか、女の人がしゃべると、すごくかわいい方言になりますよね。
――確かに男性がしゃべる広島弁とは違いますよね。
そう思いました。新谷さんがしゃべるとすごいかわいくて…。「かわいい! 真似しよう」とがんばりました。
――すずもかわいらしかったです!
あっ、ありがとうございます!
◆片淵監督の綿密な下調べによるアドバイス
――原作のこうの史代さんは「戦争を知っている世代と交流できるのは私たちが最後の世代」だと言われていましたが、のんさんの周りには戦争を経験された方はいらっしゃいますか?
いえ、いらっしゃらないですね。
――では役作りが大変だったと思いますが、どんなことをされましたか?
まず、すずさんを掘り下げていく作業から入ったんですけど、そういうのをやっていくうちに、監督や方言指導の栩野幸知さんからすごい面白い話がいっぱい聞けて。
――たとえばどんなお話ですか?
捕虜になった日本の兵隊さんが、海外の兵隊さんの1食ぶんの食料が入っているパックを貰っていたらしいんですけど。日本の人はそれを貰った時に「これは何日ぐらいで食べきればいいんですか?」って聞いたという話とか。それぐらい切り詰めた生活をしていたっていうのを聞いて。
――そんな話があったんですか! 監督も相当下調べをされたそうですね。
すごいです。あと、マンガの巻末に書いてある資料の中に、サザエさんのマンガとかがあって。戦争の時代の日常の話が載っているので、そういうマンガを掘り出してみたりとかしました。
――しっかり役作りをして臨んだんですね。のんさんのお気に入りのシーンなどがあれば教えてください。
マンガを読んだときからお気に入りのシーンだったんですけど、リンさんとのシーンがすごく好きですね。呉の北條家に来て、奥さんとしてがんばってるすずさんが、お友達のリンさんの前では子供にかえってる感じがして、すごく好きです。
【のんさんインタビュー(全4回)】
次回の最終回では、初めてのアニメ映画主演に際しての経験、そしてのんさんの今後の夢についてうかがいます!
(予告編 )
■『この世界の片隅に』公開情報
2016年11月12日(土) 全国ロードショー
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊)
監督・脚本:片渕須直
出演:のん 細谷佳正 稲葉菜月 尾身美詞 小野大輔 潘めぐみ 岩井七世 牛山茂 新谷真弓/澁谷天外(特別出演)
音楽:コトリンゴ
公式サイト:http://konosekai.jp/