亀岡拓次の生き方はカッコいい 『俳優 亀岡拓次』横浜聡子監督(2/4)
人ってどこかで能力以上に自分を大きく見せようとか…無理して上を目指そうとかしちゃいがち。そんななか…無理せず淡々と求められた仕事に応えてゆく俳優 亀岡拓次の生き方を監督ご自身はどう感じているのか? 良い意味でも悪い意味でも自分の色を出さない亀岡の生き方は、一見地味ですが、複雑な問題が絡み合う現代をシンプルに生き抜くヒントになるかも…。という想いのもと、今回は「亀岡拓次的生き方」についてさらに掘り下げてみます!
(撮影中の一コマ/亀岡を演じる安田顕さんと横濱監督)
■亀岡の生き方はカッコイイ
―――自分の色を出そうと考えない「亀岡拓次」。監督という立場から見て、こういう俳優はどうですか?
監督としてはすごくやりやすいと思いますよ。コチラの意見もすごく真面目に素直に聞いてくれそうだし。どんな演出にも応えようとしてくれるんだろうなと思います。
―――1人の人間としては、こういう生き方をどう思います?
日々、必死に仕事をこなして、それが終わったら酒を飲むと。まあ酒が本人の唯一の楽しみなんですけど。一見簡単そうに見えるけど、これを繰り返して生きることは簡単なことではないだろうなと思います。
―――自分のペースを崩さない生き方っていうのは難しいですよね
しかも、この生き方を誰かに教えられたわけでもなく、真似をしているわけでもないですからね。カッコイイ人だとは思います。
■自分の器を知っている強さ
―――“カッコイイ”までいきますか?
まあ、お酒を飲み過ぎるとか、たまに情けないところもありますけど。でもその情けなさも含めてカッコイイと思います。亀岡は自分の情けない部分を隠さないので。自分の器を知っているところも素敵だと思います。
―――それは確かに素敵ですね
だいたい、自分の「器」なんてたかが知れてるじゃないですか。そこをちゃんと認めるっていうのは頭が良いからできることだと思います。自分が出来ることを知っているし、無理して自分を大きく見せることはしないですし。
■こだわりは曲げた方が世の中上手くいく!?
―――監督自身は自分の性格は亀岡に近いタイプですか?
私は…どうなんでしょうかね。亀岡タイプだと思います(笑)。そんなにガツガツしてないですし、器用でもないと思うので。亀岡という人間も、目の前の役はしっかりこなすけど、同時に2つのことはできないタイプだと思うので、そういうところは似ています。
―――でも監督という立場だと、現場ではガツガツと我を通さなきゃいけない部分も必要になって来るんじゃないですか?
私はあまり我は通さないですね。もちろんケースごとで違うんですけど。もし現場で人とぶつかる場面があったとしても“とりあえずカメラ回してみます”と、合わせつつ進めようとしますね。それで映像を観て良かったらそれでいいし、どうしても納得できなかったらもう1回という感じですかね。
―――なるほど。でも、しつこいですが、監督として“ここは曲げられない!”という場面もあるのでは?
う~ん…でも、むしろ曲げていった方が面白いものをどんどん作れるんじゃないかと思います。それが本当に良いコトかどうかはまだわからないんですけど、現場ではいろいろ曲げなきゃいけないことは多いですから。
―――例えば?
例えばですけど、映画を撮っている途中、“予定していたこの場所は撮影に使えません”ってなったとき、その時点で、既に自分が思い描いていたイメージとは違うものになるわけですよね。そしたらもう、“じゃあ与えられた場所で何ができるのか?”っていう新しい発想が必要になるわけです。
―――自分の意志とは関係なく曲げなきゃいけないですね
そうしないと進まないですからね。それは場所だけじゃなく演出にも通じるところがあって…目の前の役者さんが全然違う演技をしたときでも、私は一度、その演技を頭の中で良い方向で捉えようとします。決して頭から否定はしないようにしています。
―――なるほど。目の前のことをまずは受け入れてから最善のアイデアを考えるというのは、亀岡に通ずるところありますね
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■「俳優 亀岡拓次」情報
*1月30日(土)テアトル新宿ほか全国ロードショー
監督・脚本:横浜聡子
原作:戌井昭人「俳優・亀岡拓次」(フォイル刊)
出演:安田顕、麻生久美子、宇野祥平、新井浩文、染谷将太、浅香航大、杉田かおる、工藤夕貴、三田佳子、山﨑努
音楽:大友良英「あまちゃん」
協力:文藝春秋(「俳優・亀岡拓次」文春文庫刊/「のろい男 俳優・亀岡拓次」文藝春秋刊)
製作:『俳優 亀岡拓次』製作委員会
配給:日活
公式サイト:http://kametaku.com/
(C)2016『俳優 亀岡拓次』製作委員会