『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を手がける 脚本家とはどんな方なのか? 脚本家・奥寺佐渡子さんインタビュー(1/4)
今回のインタビューは…脚本家の奥寺佐渡子さん。1993年に『お引越し』で脚本家デビュー。近年は細田守監督作品『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の脚本も手掛けています。他に『学校の怪談』(日本アカデミー賞脚本賞)、『八日目の蝉』(日本アカデミー賞最優秀脚本賞)など、「えっ、アノ作品も!?」となるものばかり! あまりマスコミ露出されない奥寺さんのレアなインタビュー記事がこれから4回に分けて配信です!
第一回目は…脚本家として第一線を行く奥寺さんに、あらためて「脚本家」になったルーツをお聞きしました。
■元々は雑誌記者になりたかった
―――まずは脚本家になったキッカケについて教えてください
大学生のとき、ディレクターズ・カンパニーという映画製作会社のシナリオの公募に、応募したのがキッカケですね。相米慎二監督や黒沢清監督など、名だたる監督たちで設立した製作会社があったんですよ。
―――すごい会社ですね。元々脚本家志望だったんですか?
脚本家というわけではないですけど、昔から書く仕事をしたいなとは思っていました。特に、何かを調べたり人に聞いたりするのが好きだったので、「雑誌記者」とかやりたいなと思っていましたね。
―――例えばどんな分野の記者になりたかったのですか?
分野へのこだわりは特になかったんです。各世界、第一線で頑張っている方はたくさんいらっしゃるので…とにかく、そういう方達のお話を聞いてみたいな、いろんな世界を見てみたいな、という思いが強かったです。
―――公募のあとは、そのまま脚本家としてデビューされたんですか?
いえ。それが…応募したのが大学4年生のときだったんですけど…それから連絡が来たのは卒業する頃で、もう別の道の就職も決まっていた時期だったんです。
―――そうなんですか? じゃあ最初は一般企業で働いていたんですか?
はい、石油会社の開発部門にいました。ガソリンスタンドの空いた土地で、どんなイベントをするかというものを考えていて、レストランを建てようかとか、雑貨屋さんをやろうとか。
―――それはそれで面白そうですね
楽しかったですよ! でも、脚本と両方は続けられないなと思って、会社を辞めて脚本の方に絞りました。最初の頃はアルバイトでコンピューター入力の派遣の仕事をしながらでしたけど…もともと、タイピングは早かったので(笑)。
―――やはり最初はそういう経験もあったんですね
はい。制作会社から、気になる原作があったら読んで感想を聞かせて欲しいと言われたり、プロット書いてみてくれと頼まれたりと、少しずつ勉強していって『お引越し』(監督:相米慎二 1993)でのデビューにも繋がりました。
■小学生の頃…「台本」の存在を知ってショックを受けた
―――さらに遡った話ですが、書く仕事をしたいと思ったのはいつ頃からですか?
意識しはじめたのは小学生ぐらいです。小学校の学芸会で劇をするときに、配られた台本を見て、 “えっ、劇ってこういう本を読んでからするものなの!?”っていうショックを受けたんです。
―――ショックだったんですか?
ドラマや映画って、役者さん達がその場で、“僕がこう喋るから、君はこう喋って”とか、その場で話し合いながら作るものだと思っていたんですよ(笑)。だから「台本」という設計図のようなものがあるのがすごく驚きでした。あとそれを演出する「演出家」という役割の存在も。それから「台本」を書く「脚本家」というものに興味が沸きました。
―――学芸会で、自分で台本を書くことはなかったんですか?
ありました。4年生か5年生のときだったんですけど、クラスのお楽しみ会があるとき先生から「書いてみる?」って言われて何本か書きましたね。それが私にとっては真のデビュー作になりますね(笑)。
■デビュー作は『シンデレラ』!?
―――どんな内容のデビュー作だったんですか?
童話のパロディで『シンデレラ』をベースにした作品でした。実はシンデレラは、もともと“玉の輿”を狙っていたみたいな。あとは、クラスの子達を数多く出さないといけないので『おそ松くん』みたいな大家族ものですね。ドタバタ感があるものが多かったです。脚本だけじゃなく演出もやりましたよ。
―――コメディタッチで面白そうですね!
昔から、人を楽しませるとか驚かせたいという想いはあったみたいです。自分では全然覚えてないんですけど、小学校の卒業文集には“将来は芸人になって、皆を楽しませたい”って書いてあるんですよ。テレビに出たいと思った記憶は一度もないんですけど(笑)。小学生の感覚では、楽しませる=芸人だったんでしょうね。
―――でも、そこがいまの原点になっているんですね。
そのときに、何か人に向けて書くことに手応えを感じた部分はあったと思います。
―――そこからこれまでに至るまで、脚本を書く上でこだわっていることってありますか?
「意外性」ですかね。ベタなもので楽しませるという展開も好きですが、やっぱりどこかで“見ている人を裏切りたい”っていう気持ちはありますね。特に映画作品だと、わざわざ映画館にお金を払って観に来てくださってるので“これは観て良かった!”って思ってもらいたいという想いは強いです。
―――では次回は、その「意外性」のあるものを作るために、具体的にどう作品を作っていくのか詳しくお聞きしたいと思います!
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