その世代でしかできない仕事をしなさい 奥寺佐渡子さん(4/4)
脚本を書く上での事前準備についてお聞きした前回のインタビュー。最後となる今回は…今後映画界で求められる作品や、奥寺さんが書いてみたい作品についてお聞きしました!
■男性主人公のほうが余計なコトを考えず面白がって書ける
ーーー新作のご予定は?
いま書いている映画は、2016年に撮影して、2017年に公開になる予定です。ジャンルは刑事モノ。それ以上はまだ言えないですけど(笑)
ーーー楽しみにしています。今後こんなテーマも書いてみたいというものは?
男の人の群像劇は好きなので、そういう作品はもっと書いていきたいです。けっこう母親が主人公というテーマでの依頼も頂くんですけど、男臭い作品が好きなので、そっちの方を書きたいです!
ーーー奥寺さんもお母さんですから、母親の物語は書きやすいものでは?
いえ、できるだけそこは忘れたいんです。40代で子持ちの平凡な主婦の話が一番やりたくないです(笑)
ーーーそういうモノなんですね(笑)
自分が男じゃないので、男主人公の方が、余計なことを考えずに面白がれるんでしょうね。
■映画は多少難しくても良い
ーーー映画業界はシネコンの影響で20年前よりスクリーンの数は増えて、邦画の公開本数も増えて活気があるように見えます。だけど、業界全体の興行収入は横ばい傾向で、ヒット作も偏っていて…一作品あたりの入場者数は減少傾向です。映画業界が盛り上がるカギを握るのは若い世代だと思いますが…そういった層に刺さる作品ってどんなものだと思いますか?
考えて出てくるものでもないと思います。これまで、若い人にもわかりやすいようにと、話を丁寧に説明するとか工夫はしたんですが…どう頑張っても若い人は映画見ないですね。漫画原作ものやアニメは別ですが。
ーーー映画の入場料が高いという要因もあるんですかね?
1800円とか1500円って高いと思うんです。しかも面白いかどうかも分からずに、観る前に払うっていうのはハードルが高いですよ。“原作もので、内容が分かっているものを見よう”となるのも仕方がないと思います。
ーーーではこれからは30代以上を意識して書くということに?
多少難しくてもいいんじゃないかなと。映画を見る習慣のある人たちに向けてまた良いモノを作っていこうよという風になってきたと思います。もちろんそれで良い作品が出来て、若い人が興味持ってくれたら嬉しいですけどね。
■若手クリエイターへ「その世代でしかできない仕事をしなさい」
ーーー“若い人達”という話が出ましたが、若手クリエイターに対してアドバイスするとしたら?
いまの若い人達は、すごく真面目でしっかりしてると思います。あえて私がよく先輩から言われた言葉を使うなら、“その年代でしかできない仕事をしなさい”ってことですかね。まあ、私もいまだにちゃんと意味はわかってないんですけどね(笑)。
ーーーえっそうなんですか?
その歳の自分だから感じられることを作品に当てるってことなんだとは思います。20代のときは若さを前に出してダーンと、30代は大人と子どもが半分ずつ、40年代は大人として…とか。40代で書けることを20代では書けないけど、その逆もそうなんですよね。
ーーーなるほど。ちなみに奥寺さんはご自身が監督として映画を撮りたいという想いは?
ないです(笑)。以前、留学していたときがあってその授業で、8ミリで撮ったことはあったんですけど、撮る作業より編集作業が1番面白かったです。
ーーーやはり、そういう部分の方が好きなんですね
ただ、そのとき、役者さんとの交渉とか予算の問題とか、映画作りってすごく大変なんだなっていうのは良い経験になりました(笑)。
【取材後記】
脚本家とはただひたすら台本を書く人というイメージでしたが…監督の意見を聞き、視聴者の反応を聞き、自分の心の声を聞き、そして全国各地を、脚を使ってグルグル周り…と、文字通り“脚”を使って“本”を書く仕事だと感じました。
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