恋愛ではない男女の関係を描く...『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督(1/4)
今回のインタビューは…11月7日(土)公開の映画『起終点駅 ターミナル』の篠原哲雄監督。『起終点駅 ターミナル』は、北海道の果ての街・釧路で静かに暮らす男が、1人の若い女と出会い、それぞれ新たな人生を歩きはじめる物語。原作は2013年に「ホテルローヤル」で第149回直木賞を受賞した桜木紫乃さんの「起終点駅 ターミナル」。男と女の物語と言っても、恋愛とは違う関係性が現れた作品と語る篠原監督。まずはその作品の見どころについてお聞きしました。
■50歳を超えた男が閉じていた心をどう開くか
ーーーあらためて監督から『起終点駅 ターミナル』はどんな物語なのか? お話いただけますか
簡単に言うと、佐藤浩市さん演じる裁判官の鷲田完治という男が、法律ではさばけない自分の過去の罪を罰するために釧路という北の果ての地に引きこもり、国選しか引き受けない弁護士となって25年、被告人の本田翼さん演じる敦子と出会って、変わっていくという話なんですけど…それが恋愛関係のような化学反応が起こるわけではないんですね。そんな中で完治が、心揺らぎながら、人との関係性を変化させて、閉じていた心をどう開くのかってところは作品の見どころの1つかなと思います。
ーーー恋愛関係を描いたものではないんですね
そうですね。まあ前半部分では、完治と尾野真千子さん演じる冴子による男女の関係も描かれてはいるんですけど。
ただ、その後に出会う敦子との関係に関しては恋愛とは違うものです。その様子はすごく淡々としていますが、今回はそこを描くことにトライする価値があると思いました。
■人生経験を重ねたからこそ築ける新たな関係性
ーーー監督ご自身…そういう恋愛とは違う男女の関係を意識することってありますか?
僕自身も最近、恋愛とは違った、人に対する情愛の度合いというのが変わって来ている気はします。女性と関わるとき、若い時は、今よりも恋愛感情を抱きやすかった気がします。でも、人としてどう関わるかというところに変わってきてますね。
まあ、それはもしかしたら歳のせいというのもあるのかもしれないですけど…恋愛感情がなくても異性と付き合えるということは、人生経験を重ねたからこそ築ける新たな関係性なのかもしれないですね。
■あまり人とは関わりたくないと思っている人物がどう変わるか?
ーーー佐藤浩市さん本田翼さんそれぞれが演じる2人の関係を意識して見ると面白そうですね
そこだけがテーマってわけではないですけど、1つの見どころですね。佐藤浩市さんが演じた完治というのは、あまり人とは関わりたくないと思っている人物なんですけど、それが、苦悩を抱える女の子と一緒に過ごすうちに自然と変わっていくんです。やっぱり人って、同じ空間にいると、それなりに普通の感情とは違うものが生まれてくるんですよね。
ーーー先ほど言われていた人としての情愛というところですね
完治が若かったり、敦子が逆にもっと歳を重ねた女性だったりしたら、また違った展開になるかもしれないですけどね。若い人の言い方だと友達以上恋人未満というような表現なのかな。でも、いずれにしても、恋愛じゃないけど親子愛でもない、ちょっと変わった愛情が現れた作品なんじゃないかなと思います。
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■「起終点駅 ターミナル」公開情報
*2015年11月7日(土)全国ロードショー
監督:篠原哲雄
脚本:長谷川康夫
原作:桜木紫乃「起終点駅 ターミナル」(小学館刊)
音楽:小林武史
出演:佐藤浩市、本田翼、中村獅童、和田正人、音尾琢真、泉谷しげる、尾野真千子
主題歌/「ターミナル」My Little Lover(TOY’S FACTORY)
配給:東映