役としての緊張と芝居に対する緊張は違う 『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督(2/4)

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人との出会いをキッカケに、それぞれが新たな人生を歩きはじめる物語『起終点駅 ターミナル』。前回は、そんな出会いの中で展開される、恋愛とは違った、新たな男女の関係について語っていただきました。今回は…撮影現場でのお話を元に、俳優さん達との関係性はどんな感じだったのかお聞きしました。

 

 

 

原作と変えたラスト

ーーー映画化にあたって、原作者の桜木紫乃さんとはどんなお話をされたんですか?

桜木さんとは現場や試写会でお会いはしましたけど…じつは、僕はそれほど根を詰めて話したわけではなく、その辺りは同じ北海道出身というプロデューサーがしていました。ただ、桜木さんからは、“私も1人の観客として楽しみにしています”というようなメッセージは頂きました。

 

 

ーーー原作と変えた部分もあるんですか?

あります。原作では最後に、完治が敦子を駅で見送ったあとも、息子の結婚式へは行かない決断をするなど、変わらない日常を送るのです。むしろ余韻の中で完治の生き方を感じさせるというような。映画では、そこに留まるよりは、完治自身にも敦子との出会いなどで変化が起き、人生の新たな起点に立つという風にした方が面白いんじゃないかと思って若干の変更をさせて頂きました。

映画として、主人公の完治にもう1つ進歩した展開が欲しいなとは思っていたんです。でも、原作を元にした作品って、どこまで膨らませていけばいいのか難しいんですよね。変更を良しとしない作家の方もいらっしゃいますし。でも、そんな中で、今回は原作サイドの編集者さん達からもご意見が出たり、事前にお互いが納得し合う良い関係が生まれたのではないかと思います。

 

 

 

直接会って話すから生まれるもの

ーーー作品では人との関わりについて色濃く描かれていますが、監督は今の時代のコミュニケーションについてどう感じてますか?

生身で面と向かって人と関わることが昔よりは減っているとは思います。最近はメールとかSNSとか使ってやり取りすることは増えましたし。ただ、それで通じてると思った話が通じてなかったということもたまにあって、そこは便利だけど恐ろしいなと感じますね。

 

 

ーーー監督ご自身もそういう経験があるんですね

なので、僕は大事なことは直接会って話すべきだと思います。まあこうやって取材を受けるときなんかでも、アンケートを使って文章だけで済ますこともできると言えばできるじゃないですか。でもやっぱり人と会って話すとそれなりに浮かんでくる言葉も違いますから。

 

 

ーーー微妙なニュアンスなど直接話さないとわからないことは多いですよね

例えばこの作品の中でも、敦子が完治に、“自分の故郷まで連れて行って欲しい”って直接頼むシーンがあるんですけど、そのセリフは、それまで2人が一緒に過ごしながら関係性を築いて来て、自分のことをどういう風に見えているのかまでわかって初めて言えるセリフだったと思うのです。それを考えると、生身で人と接することで生まれてくるものは確実にあると思います。

 

 

 

役としての緊張と、芝居に対する緊張は違う

ーーー撮影現場では役者さんと結構、話し合われるんですか?

そうですね。僕らの仕事は俳優さんがいかに芝居しやすい環境を作るかが大事ですけど…スタッフ皆でそこは心掛けていますし、佐藤さんともけっこう相談含めて話しましたね。佐藤さんは、芝居に入る前から、いろいろ考えて来てくれる方なので、今回も、“台本上はこうだけどこう演じてみたい”ということは、リハーサルでも現場でも話し合いました。

 

 

ーーーすごく準備を大事にされる方なんですね

話し合って、僕もなるほどと思うこともたくさんありましたし、良い方向に変化が生まれた部分も多くありました。そういう意味では当たり前ですけど、俳優さんが集中できる場づくりは大事にしています。

 

 

ーーー本田さんとは印象に残っているやり取りはありますか?

本人も舞台挨拶などで話してますけど、佐藤さんとお芝居をやれることは大きな喜びだったみたいですね。ただ、やはり佐藤さんとは経験量が違う分、現場では彼女のことを待つということもありました。

 

 

ーーー待つというのは何を?

芝居の滑らかさの部分ですね。例えば敦子が初めて完治の元を訪ねてくるとき、かなり緊張してかしこまってるんですよ。そういう場面なので、確かに硬くなっていていいところではあるんですけど、演じている役としての緊張と、芝居に対する緊張は違うので、芝居が滑らかに見えないことがあったんです。

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ーーーそれはすごく難しそうですね

ただ、物語が進むに従って、本田さんが本来持っている無邪気であけっぴろげなところが、敦子とだんだんリンクしてきて良くなったと思います。僕達もそれを見ながら、そういう良さをまだ引っ張り出せるんじゃないかと、どんどん期待していったところはありました。最後の方は、本当に良い顔をするようになっていたなと感じましたね。

(1/4)『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督 恋愛ではない男女の関係を描く...

(2/4)『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督 役としての緊張と芝居に対する緊張は違う

(3/4)『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督 料理に込めた主人公の心情変化

4/4)『起終点駅 ターミナル』篠原哲雄監督 映画監督としてこのまま歩んでも良いかなと思えた...そんな出会いがありました

 

 

■「起終点駅 ターミナル」公開情報

*2015年11月7日(土)全国ロードショー

監督:篠原哲雄

脚本:長谷川康夫

原作:桜木紫乃「起終点駅 ターミナル」(小学館刊)

音楽:小林武史

出演:佐藤浩市、本田翼、中村獅童、和田正人、音尾琢真、泉谷しげる、尾野真千子

主題歌/「ターミナル」My Little Lover(TOY’S FACTORY)

配給:東映

公式サイト:http://www.terminal-movie.com/

 

 

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