撮影が苦しい時期がありました 『無伴奏』俳優 池松壮亮さん
■なかなか決まらなかった衣装
――衣装合わせでは自ら衣装のイメージを伝えたそうですね
ああ、矢崎さんって衣装合わせがもう何回もあるっていう。毎回らしいんですけど、自分で決めないんですって。
――そうなんですか!?
衣装合わせって絶対すぐ決まるから、なかなか決まらないっていうのを見たことなくて。僕はもう何でも着ますって態勢でいるし。…でもたぶん着てる顔とかを見てるんですよね。(衣装を試着して)出てきた時にしっくり来てるか来てないかを。だから何回かやりましたね。で、「どんなのがいいと思う?」って聞かれて、何か象徴的なものがあったらいいんじゃないですかってことで、こういうことになったんですよ。
――渉の印象的な茶色の革ジャケットですね。
渉といえば、これをずっと着てたよねっていう。
――確かに映画って、パッと見た時にその役者さんの表情と洋服にまず目が行きますもんね。
そうなんですよね、やっぱり人としてのシルエットにね。だから矢崎さんも、洋服に余分な部分がないジャストなものが、ピタッとしたものが好きらしいんですよ。その人間のシルエットが見たいらしくて。
――それで特注になったんですね。
上着は作りました。その時代のものを探したけど見つからなかったということで。
――そういう細かいところからリアリティを出して行ったんですね。シャツを「イン」にちゃんとされてましたもんね。
時代考証で(笑)。
■矢崎監督と原作『無伴奏』は繋がらなかった
――この作品自体に参加されるのも楽しみだったと思うんですけど、やっぱり矢崎さんとやるってことも最大の楽しみだったのでは?
でしたね。僕が福岡にいた頃とかは、矢崎さんの映画というのはアイコンのようになってて象徴的な存在だったんですね。やっぱりその記憶があったし、それに実際観てたし。で、なんか面白かったのが、僕は本を読んだ時に『無伴奏』っていうものと矢崎さんがあんまり繋がらなかったんですよ。
ふだん自分の想像の範囲内でできてしまうものはあまり受けないようにしてるので、その違和感がすごく面白くて、それに僕が飛び込んでと考えると…。またキャスティングもまったく安易なところがなかったので。やっぱ成海璃子さんが真ん中に立ってくれるってすごく面白いなと思ったし、そういうのがけっこう重なったなあとは思いますけどね。
■普段の僕からすればすごくコミュニケーションを取った
――成海璃子さんが叫んでる顔は真に迫ってましたね。
いい顔してますよね、あそこは。
――撮影する中でいちばんコミュニケーションを長く取ったのは?
ああ、それはやっぱり成海さんじゃないですかね。常に一緒でしたし、普段の僕からするとすごくコミュニケーションを取ったと思いますね。
――普段はあまり話さないんですか?
あまり話さないですね(笑)。
――食事に行ったりは?
一回、みんなで仙台撮影の時にありましたけど、二人で飯行くことはなかったですね。仙台のホテルに泊まった時に、ロビーで二人で晩酌したのは覚えてます。とても撮影が苦しい時期で、みんなが迷ってた時期でもあったので、頑張りましょうって会をしたのは覚えてますけどね。
――撮影が濃密すぎた感じはしますね。
(撮影)期間も短かったんですよ。
――じゃあ余計にみんなパンクしてるんじゃないかと思っちゃいますが。
してますね(笑)。
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■『無伴奏』公開情報
2016年3月26日(土)公開
監督:矢崎仁司
原作:小池真理子『無伴奏』(新潮文庫刊、集英社文庫刊)
出演:成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜、松本若菜、酒井波湖、仁村紗和、斉藤とも子、藤田朋子、光石研
公式サイト:http://mubanso.com/