友だちは1人いれば十分ですよ『きみはいい子』呉美保監督
虐待をする母親自身もまた、いろいろな理由で追いつめられている。「虐待」や「育児放棄」問題が抱える様々な側面について語られた前回のインタビュー。最終回となる今回は…呉監督自身が現在の子育てで実際に体験したママ友達のコミュニティについてお聞きしました。
■ママ同士のコミュニケーションを促す集い
―――監督の周りのママ友同士のコミュニティは?
私の周りでは、作品に出てくるようなママ友同士の張り合いとか、そういう関係はないのですが、私が住んでいる地域が主催する「フレッシュママの集い」という同じ月齢の子を持つママたちの集まりに参加したことがあります。
―――そんな集いがあるんですね
50人ぐらい集まっていましたね。ママ達が孤独にならないように出会いを作るイベントで、それぞれ気の合うママ同士でラインを交換したりしていましたね。ただ、見ていると、やっぱり学校と一緒で、見た目の雰囲気とかでグループが分かれちゃう感じはありました。派手なママ同士とか。
―――そういうのは大人になっても変わらないんですね
それを見ていて思ったのが、親同士の気が合うからといって、子ども同士も気が合うとは限らないってことですね。逆も然り、親同士は気が合わなくても子ども同士は気が合うというのも。
―――人間関係はシンプルに運ばないですね
子どもは子どもで、1人の人間として人格があるので、ママ同士で作る関係にも複雑さがあるなと思いました。
■1人頼れる友人がいれば十分
―――監督自身は、ママ友は増やしていきたいですか?
数に関しては思わないです。この間、テレビを見ていたら、ママ友同士の関係で悩むママが出ていて、相談を受けた人が、“ママ友は1人で十分、1人ちゃんとした友達がいればそれで十分”と言っていて、ふむふむと思いましたね。
―――確かに人間関係で新たな悩みを抱えるくらいなら気心知れたひとりのほうが良いですね
私は、仲の良い親友が同じ時期に出産していて、近所に住んでいるわけではないんですが、「あれ買った?」とか、気兼ねなく聞き合えるので、1人いれば十分という意見には納得感がありました。
―――家族との関係はいかがですか?
姉も子育てを経験しているので相談もできますし、親も相談に乗ってくれます。なので、何かあったときにはすぐ来てもらえるという安心感があります。
■日々忙しいママ達に送るメッセージ
―――やはり安心感というのは大事ですね。あらためて最後にDVDを見られる方へメッセージをお願いします
家で日々家事をこなしているママ達は、ゆっくり映画を見るなんて、そんな時間はないと思います。私も「映画は劇場で見てほしい」と思う反面、実際に子育てをしてみて、劇場に行けないどころか家でDVDさえもちゃんとは見れないと痛感しました。なので家事や育児をしながらの「ながら見」でもいいので、ぜひ見てもらえたら嬉しいです。
■「きみはいい子」
*2016年1月20日(水)Blu-ray&DVD発売
監督:呉美保
脚本:高田亮
原作:中脇初枝 「きみはいい子」(ポプラ社刊)
出演:高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、富田靖子
配給:アークエンタテインメント