2015年キネマ旬報ベストテンにランクイン!『きみはいい子』呉美保監督(1/4)
今回のインタビューは『そこのみにて光輝く』でモントリオール世界映画祭最優秀監督を受賞した呉美保監督。今回、呉監督が手がけたのは「虐待」「学級崩壊」「独居老人」といった社会問題について描いた中脇初枝さんの同名小説『きみはいい子』を原作とした作品。誰もが望む幸せな人生や人との関係…それでも起こる負の連鎖を描いた本作は去年6月に公開され2015年第89回「キネマ旬報ベストテン」の第10位にランクインしています。そうした高評価も手伝って今週末3月17日(木)東京・池袋の「新文芸坐」毎年春の恒例企画『気になる日本映画達<アイツラ>2015』での上映も決定しています(★3月17日(木)20:40の回の上映前 高良健吾さんによる舞台挨拶が決定! *満席の際は入場できないコトもあるためご注意を!)
第1回目のインタビューとなる今回は、あらためて作品に込められた想い、そして公開してからの反響について伺いました!
■誰しも起こりうる問題
―――中脇初枝さんの小説を原作としている本作ですが、あらためて、この作品を映画化することになったキッカケを教えてください
プロデューサーさんから、映画化したいということでオファーをいただき、そこからまず、中脇さんの小説を読みました。いち読者として、とても胸が熱くなりました。それで、これは何としても映画化したいと思い受けさせていただきました。
―――特に心動いた部分というのは?
「幼児虐待」「学級崩壊」「独居老人」「障害を持つ子ども」など、いろいろな社会問題が描かれていますが、これらのことは、誰にでも起こりうることだと思いました。いま現在、自分自身がどれかの問題に当てはまっているということではないのですが、例えば、身近にいる人がそういうことに関わることになるかもしれないし、実は既に関わっているかもしれない…そう考えると、本当に他人事ではない問題がたくさんあるなと思いました。
―――厳しい時代ですが…おっしゃる通り、誰もが当事者になる可能性を持っているんですよね
虐待のニュースを目にしては、どうしてわが子に手をあげてしまうんだろうとか、障害を持つ子どもの家族はどんな思いで生きているのだろうとか考えました。また、認知症の独居老人については、私の亡き祖父が認知症によって人が変わっていく姿を見ているので、そういったニュースを目にするたびに気になっていました。
―――映画化する際にこだわったポイントは?
これらの問題は、スパっと解決することはできないと思うんですが、私は小説を読んだ後に、そのヒントになるものをもらえた気がしたのです。映画でもそのヒントを描けたらと思いました。
■公開後、友人からの反響も
―――去年公開されてから、どんな反響がありました?
映画を観た方から、お手紙を頂くこともけっこうありました。あと、私の友人が実は同じような問題を抱えていたことを語ってくれました。
―――どんなことがあったんですか?
小学生のときに、親に手を挙げられた経験があったそうです。そしていま、実際自分が親になってみて、あらためて、そのときの親の気持ちを考える日々だという話でした。
―――お友だちがそういう経験をしていたということは、監督はご存知でした?
いえ、長い付き合いの友人なんですが、そんな素振りはなく、わからなかったです。でも、それを聞いて、人はそれぞれ、表には出さないだけで、いろいろな事情を抱えているんだと思いました。そしてそれは、本当に誰しもに起こりうることだと。
■大きな幸せを夢見るばかりではなく、目の前の小さな幸せを見つめる
―――先ほど、監督自身が小説からヒントを感じたとおっしゃっていましたが、その友人の方はどんな感想を言っていましたか?
友人からは、映画を見て「自分が関わった問題から許されたというか、解放されたような気がした」と言ってもらえました。それを聞くと、映画化して良かったなと思いましたね。
―――何か心の整理につながったのかもしれませんね
さっきも言いましたが、人はそれぞれ何らかの事情を抱えていて、いろんな形の家族や人生の中でもがいて生きている。大きな幸せを夢見ることもいいのですが、目の前の家族と明日も一緒にいられますようにとか、どうしても当たり前に思いがちな幸せを見つめてもらえたらなと思います。
(1/4)『きみはいい子』呉美保監督 2015年キネマ旬報ベストテンにランクイン!
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(3/4)『きみはいい子』呉美保監督(近日配信)
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■「きみはいい子」
*2016年1月20日(水)Blu-ray&DVD発売
*2016年3月17日(木)東京・池袋「新文芸坐」『気になる日本映画達<アイツラ>2015』にて上映
監督:呉美保
脚本:高田亮
原作:中脇初枝 「きみはいい子」(ポプラ社刊)
出演:高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、富田靖子
配給:アークエンタテインメント
公式サイト:http://iiko-movie.com/index.html