小松菜奈の細かい演技に注目! 『ヒーローマニア-生活-』豊島圭介監督
街を守るために集まった自警団“吊るし魔”のメンバーは、ヘタレコンビニ店員・中津、ニートの下着泥棒・土志田、情報収集に長けたチームの頭脳的存在のカオリ、カナヅチで若者を成敗するオジサンと、個性的なキャラクター揃い。今回は、キャラクターたちへの愛着について話してくださいました。
■“ヘタレ”ヒーローたちのこだわりのディテール
―――中津は“ヒーロー”なのに、原動力が煩悩やリビドー的なもので、それが潔くて逆に痛快でした。人間の暗い面なのにコメディタッチに仕上がっていて、さじ加減が絶妙で見事だなと!
ありがとうございます。すごい綱渡りをしてる感じがしますけどねえ。
―――細かい描写にはこだわっておられると感じましたが、ここは観て欲しいというポイントはありますか?
ありますよ~! 小松菜奈さんがとにかくいろいろ細かいことをやっていてですね。例えば、ちょっと遠い絵で分からないかもしれないんですけど、暴走族を引き連れてやってくる時に、近い絵ではヒュ~ヒュ~って言いながら手を回してるんですけど、その前は三つ編みのおさげをぐるぐる回していたりとか。そんな彼女の一挙手一投足が超面白いんで!
―――「面白がらせよう」というサービス精神旺盛なんですね!
あとは、窪田くんのパンツの愛で方とか。丁寧に畳んで、こう、匂いを嗅いだり…(笑)。
―――カオリのかと思っていたら「母のですから」と言われたあれですね(笑)
あれはどっちだと思いました? 僕は、自分のなんだけど恥ずかしくてお母さんのだと言ってしまったっていうつもりで描いたんですけど。
―――ああ~なるほど、そうだったのか!
原作の福満さんには「パンツの種類が違うんじゃないか」とダメ出しされましたけど(笑)
―――女子高生のカオリにしては、白はナイかなと思いましたが…
それ、みんな言ってた(笑)。
■撮影中に気づいた中津との共通点
―――原作は“怒り”や“言い訳”などネガティブで暗い要素でいっぱいでしたが、豊島監督が撮るとポジティブな要素もたくさん入った世界になっていました。そこは明るくするように気をつけたのですか?
たしかに明るくもしたんですけど、そもそも僕の方が健全なんだと思います、人間性が(笑)! 健全というか後ろ向きじゃないっていうか、これはもうどうしようもないんですよ(笑)。
―――後ろ向きじゃないとご自身でもおっしゃる豊島監督が、そもそもなぜこの漫画に興味を持ったのか不思議です
そうですか!? でも福満マンガのファンだったんですよね。福満さんはもともとエロ漫画を書いていた人で、彼の描く女の子像とかすごいエッチだし、あとはそうですね、場末のものの…なんだろうなあ。
そういえば、これは現場中に気づいたんですけど、僕はすごく彼(ポスターの中津(東出昌大)を指差して)に惹かれるところがあって。人の大きなチカラを使って自分の目的を遂げようとするって、すごく卑怯なことだと思うんですけど、小学校時代に自分にもそういうエピソードがあったりして、「ああ、オレじゃん!」って思ったんですよね。
―――主人公の中津に自分自身を投影していたんですか?
それはねえ、気づいたらそうなっていたっていう。ケースによるんですよね。今回は客観的に世界を描いているつもりだったんだけど、気づいたら自分は中津だったって思ったパターンで。『花宵道中』では、安達祐実演じる朝霧という女性の目線の映画なので、とにかく朝霧に同化して映画を作ってたんですけど。またこないだやった『森山中教習所』という映画では、実は誰にも同化してないんですよ。
―――じゃあ作品によって全くスタンスを変えて行けるんですか?
変えたくて変えたというより、そこに関してはそうなったというか、客観でやろうとしたらこっちは「入っちゃった」という感じ。
―――心の深いところで同調するところがあったのかもしれませんね!
そうかもしれないですね。
豊島監督が知らず知らずのうちに“卑怯な”部分に同化したという主人公・中津を始め、原作通りの個性豊かなキャラクターが勢揃いしている『ヒーローマニア–生活-』。次回はこだわりのアクションシーンについて伺います。
■『ヒーローマニア-生活-』公開情報
2016年5月7日(土)公開
監督:豊島圭介
原作:福満しげゆき「生活【完全版】」(モーニングKCDX/講談社刊)
出演:東出昌大 窪田正孝 小松菜奈
山崎静代(南海キャンディーズ) 船越英一郎 片岡鶴太郎
公式サイト:http://heromania.jp