ニワトリを買うから泊めて! 『ブランカとギター弾き』長谷井宏紀監督 放浪時代を語る
20代のとき、友人の出した写真集をきっかけに、フィリピンに行ってみようと思い立った長谷井宏紀監督。それ以外にも、世界を旅しながらカメラマンとして活動をしてきました。今作には、その世界中で感じたことが盛り込まれているのだとか!
■フィリピンを舞台に、さまざまな国で感じたことを融合させた作品
-フィリピンには毎年、クリスマスの時期に行かれていたそうですね。
エミールに出会うまでです。出会ってから僕はそのままセルビアに住むことになったので。それまでは毎年、クリスマスの時期に行ってプレゼントを渡してっていうのを、ずっと続けていました。
-そのときフィリピンを選んだのはなぜですか?
当時、友人が出した写真集を見て、行ってみようかなって。その時は、いろんな国のいろんな人の暮らしを見てみたい、感じてみたいというのが大きかった。映画のタイプにはいろいろあるけれど、僕がやりたかったのは「人」の映画で、そんな映画をやるとなったら、いろんな人の暮らしを見たほうがいいんじゃないかなというのは思っていて。
だから「行かなきゃ!」という感じで旅していたところはあるかもしれないですね。これはいつか何かの役に立つんじゃないかという気持ちはありました。
-これまでには何カ国ぐらい行かれましたか?
けっこう行ってると思うけど、どれぐらいだろう? 何かのインタビューでは30と言ってみたり、何かの記憶では25だったり、もう分かんないですね(笑)。基本的にお金がない旅だから、必然的にストリートになっちゃうんですよね。で、路上の人たちに助けられていくという。
-フィリピンの他にはどんな場所に行かれましたか?
ルーマニアのロマ(ジプシー)の村にもしばらくいたことがあります。
タラフ・ドゥー・ハイドゥークスっていうバンドの人たちがいる村で、そこはエミールが『黒猫・白猫』を撮った村でもあって。そこにしばらく滞在したこともありまして。その時も、教会の前に突っ立っていると、「何やってんの?」って人が集まってくるんです。で、「いやー、泊まるところが欲しいんだよね」と言うと、「じゃあうちにおいでよ」って。
-宿も決めず、ノンアポの旅だったのですか!?
そうですね(笑)。その時は、泊まらせてもらうかわりに「1、2日後に鶏を2羽ぐらい買う」というディールを結んで。鶏を俺が提供して、1羽は締めてみんなで食べて、1羽は卵用に残す、と。
-鶏で払うと(笑)! そういう旅で集めた人の暮らし、人との会話が、だんだん蓄積されて、今回の映画という形になっていった?
そうそう。これはフィリピンという舞台、キャラクターだけど、僕にとってはフィリピン映画というわけではないんです。いろんな国の考え方とか、そこで感じたこととか、たくさんの要素が入ってる。世界のさまざまな場所で自分が味わったことと、フィリピンで味わったことを融合させているんです。
【インタビュー全4回 】
(1)お前、なんか面白いから旅についておいでよ
(2)ニワトリを買うから泊めて!
(3)盲目のギター弾き ピーターとの出会い
(4)ボクにとって映画は拡声器(7/28配信)
『ブランカとギター弾き』公開情報
2017年7月29日(土)シネスイッチ銀座他にて全国順次公開
監督・脚本:長谷井宏紀
製作:フラミニオ・ザドラ(ファティ・アキン監督『ソウル・キッチン』)
撮影:大西健之
音楽:アスカ・マツミヤ(スパイク・ジョーンズ監督短編『アイム・ヒア』)
出演:サイデル・ガブテロ / ピーター・ミラリ / ジョマル・ビスヨ / レイモンド・カマチョ
公式HP:http://www.transformer.co.jp/m/blanka/