週1回 東京でデリヘルする彼女の気持ち 『彼女の人生は間違いじゃない』廣木隆一監督インタビュー
主人公の金沢みゆきを演じるのは『日本で一番悪い奴ら』の瀧内公美さん。共演には、デリヘルの従業員役の高良健吾さん、みゆきの父親役の光石研さんはじめ、柄本時生さん、篠原篤さん、蓮佛美沙子さんと、実力派俳優が顔を揃えています。
主演の瀧内公美さんはプレッシャーからか、みるみる痩せていったそう。市役所職員でありながらデリヘル嬢のアルバイトもしているという難しい役を、どう掴んでいったのでしょうか? また、廣木作品には『M』(07年)をはじめ『僕らは歩く、ただそれだけ』(09年)、『雷桜』(10年)、『軽蔑』(11年)、『きいろいゾウ』(13年)など数多くの出演作がある高良健吾さんは、現場ではどう過ごされたのでしょうか?
インタビュー第3回では、気になるキャストについてお伺いします。
■住んでいる人の気持ちになってやってくれた
-主演の瀧内さんは真に迫った演技をされていました。心境を理解するのが難しい役柄だったと思います。
そうですよね。だから、福島の僕らが撮影した場所に、本当に長くいてもらって、そこから毎日通ってくださいって。
-仮設住宅に滞在し、そこに実際に住んでいる方とお話しされる中で、掴んでいった役なのですね。
映画にもちょっとだけ映っているあのおばあちゃんたちとは、けっこう話してますよ。撮影場所から30分ぐらいのいわき湯本というところに泊まっていたので、もうずっと福島にいっぱなしでした。
-演出されるときは、役柄についてどんなお話をされましたか?
役柄については全然話はしてないですね。それは自分で作ってくれないと。あそこに住んでいて区役所に勤めていて、週に1回、東京に行ってデリヘルをしている。
彼女はどんな気持ちでそれをやっているんだろうと、ちゃんと自分で考えてほしいなと思っていたので、こうしろとも言わないし。まあ芝居の中では言いますけどね。あとはその場所にいて感じてくれれば、それは自然にね。
-瀧内さんが最初、作ってきた役については、どう思われましたか?
最初はダメでしたね。だって瀧内本人も福島の子ではないので、そういう経験をしているわけではないから。でもそこはやっぱり役者さんだし、その気持は理解できてるんだろうと思うし。それはすごく理解してやってくれたと思います。
■気持ちを保ち続けるための作業をした高良健吾
-主人公の金沢みゆきと対象的な役に、高良健吾さんが演じるデリヘルの従業員があります。主人公と同様に地方から出てきながらも東京に居場所があり、それぞれの人生が対照的に見えました。
でもやっぱり彼もまだ、さまよっている状態ではありますよね。自分の夢があり、でも家族がいて、そして東京で生きていくんだと。夢を追いながら、自分の夢と現実をちゃんと共生させている人かなと。
-バランスが取れている人ですね。
うん。そんな人も東京にはいるよという。そんな人ばっかりじゃないですけどね。
-高良健吾さんは、高校生の頃から監督の作品に出演されています。そこからの俳優としてのステップアップをご覧になっていかがですか?
健吾とはプライベートでも仲がいいので、僕の中の健吾は変わらないですけど。もうすごく役者として素直にっていうかすごく成長してるんで、すごい人だなと思いますよ。
-撮影現場ではどんな方ですか?
すごく真面目でしたよ。自分で取材に行ったりもしますし。基本的には真面目なので、自分で芝居に集中しようとして、自分で自分の気持ちを保ち続けるための作業をしますね。
【インタビュー全4回 】
(1)震災直後の衝動が原作小説に結実!
(2)社会って"普通"でない人たちの集まり
(3)週1回 東京でデリヘルする彼女の気持ち
(4)「いいじゃん別に、そんなに急がなくても」(7/15配信)
■『彼女の人生は間違いじゃない』公開情報
2017年7月15日(土) ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:廣木隆一
脚本:加藤正人
原作:廣木隆一「彼女の人生は間違いじゃない」河出書房新社
出演:瀧内公美 高良健吾 柄本時生/光石研
戸田昌宏 安藤玉恵 波岡一喜 麿赤兒/蓮佛美沙子
小篠恵奈 篠原篤 毎熊克哉 趣里