観客それぞれの魔法を感じて欲しい『メアリと魔女の花』米林監督インタビュー
天真爛漫なヒロイン・メアリは、魔法の世界と日常を行ったり来たりするうちに、成長していきます。そんなメアリと一緒に冒険している気分になれるような、臨場感がある今作。その秘密は、舞台設定にありました。
(C)2017「メアリと魔女の花」製作委員会
インタビュー第4回では、この作品に込めた思いを伺いました!
■「魔法って何だろう」と、いろんな人に感じてもらえる作品
-普通の世界と魔法の世界が隣り合わせだという設定も、面白いです。
ファンタジー作品をやるという時に、その設定の部分って難しいんですよ。『指輪物語』みたいに、世界観が全部できあがっているというハイ・ファンタジーとか、『思い出のマーニー』みたいに、ちょっと不思議なものと出会うような日常の中のちょっとしたファンタジーとか、いろんなファンタジーがあるんですけど、なかなか中間のものってないんですよね。
だからこの原作のような、日常のどこか隙間に紛れ込んだらそういう世界があって、そこに行って戻ってきたりするというのは、あまりない作品。しかも魔法をもらっておきながら「魔法なんていらない」って魔法を否定したりするのも珍しい(笑)。人によって、いろんな見方ができる面白い作品になるんじゃないかと思いました。「魔法って何だろう」って、いろんな人にとっての“魔法”を感じてもらえるんじゃないかと思います。
■男の子でも女の子でも、普遍的に感じてもらえるテーマ
-これまでの作品では、ずっと女の子が主人公です。ヒロインにこだわる理由は何ですか?
それはよく聞かれるんですけど、あまり女の子だとは意識してやってないんですよ(笑)。ただ単に「主人公」だと思っているだけで。女の子か男の子かというよりも、その主人公がどうやって変わって行くかっていうところのほうが、面白いものを描けるんじゃないかと思っていて。
-あまり「女の子」という意識はないんですか?
ないですね。『思い出のマーニー』なんかは女の子の作品ですから、あの心情を描くのは難しいものがありましたけど(笑)。今回はそんなに女の子って感じじゃないし、“ガール・ミーツ・ボーイ”で、女の子が男の子を助けるところに面白みがあるかなと。ホウキに乗るにしても、前がメアリで後ろにかっこいい男の子が座っているというのも、絵的にも面白い。だから、主人公が女の子であることへのこだわりは、あまり意識してないんですよね。
-ジブリ作品のヒロインを中心に集めた画集『汚れなき悪戯』を出されているので、てっきりヒロインへの強いこだわりがあるのかと思っていました!
あれはたまたまそういうコンセプトで選ばれただけで、本当はもっといろんな絵を描いてます(笑)。でもこの作品のテーマは、男の子でも女の子でも、普遍的に感じてもらえるんじゃないかな。「魔女」というより「魔法」の物語。魔法を得て、それをどういう風に使うかとか。コンプレックスは、女の子であろうと男の子であろうと持っていると思うし。
結局、映画は作ってしまったら、もうお客さんのものですからね。この映画を通して、自分にとっての魔法とはなんだろうかとか、それがなくなった時にはどういう風に立ち向かえるだろうかとか、お客さんそれぞれに考えてもらえたら。そういう機会になってもらえたら、うれしいなと思います。
-では最後に、これからご覧になる方にメッセージを!
この物語は、魔法の力を偶然手に入れて、その力がなくなったときに、どういう行動ができるかというところに力を込めた作品です。新しい一歩を踏み出そうと思っている人の、その背中をちょっと押せるような作品になれたらうれしいなと思って作りました。ぜひ、劇場で見てください!
【インタビュー全4回 】
(4)観客それぞれの魔法を感じて欲しい『メアリと魔女の花』米林監督インタビュー
『メアリと魔女の花』公開情報
2017年7月8日(土)全国ロードショー
原作:メアリー・スチュアート
脚本:坂口理子
脚本・監督:米林宏昌
出演:杉咲花 神木隆之介/天海祐希 小日向文世/満島ひかり 佐藤二朗 遠藤憲一 渡辺えり/大竹しのぶ
公式HP:http://www.maryflower.jp/