安藤サクラは「能登半島のマリア」『追憶』降旗康男監督インタビュー
一つの殺人事件をきっかけに、25年ぶりに再会した幼なじみの3人。刑事、被害者、容疑者として再会した3人は、「あの事件」以来、会わないことを約束し、それぞれの人生を歩んできたのだった――
「あ・うん」「鉄道員」など高倉健を主演に迎え、数々の名作を送り出してきた降旗康男監督と、木村大作キャメラマンの黄金コンビが9年ぶりにタッグを組むということで話題の映画『追憶』。インタビュー第1回では降旗監督の今作に込めた想い、そして登場人物を描く上でのこだわりを伺いました。
■登場人物一人ひとりの不幸や悲しみ、喜びが出てくるのが、映画の面白さ
-いまこの作品を撮ろうと思った理由は何ですか?
それはもう、脚本が面白かったからですね。
(編集部注:『追憶』は脚本家・青島武、瀧本智行によるオリジナルストーリー)
-映画にとって、登場人物の情緒を作る過去のできごとを踏まえることは、大事だとお考えですか?
ひとつの事件から、それぞれの人がそれぞれの過去を持つということで、観てくださるみなさんが共感できる登場人物になると思います。その過去と現在が混ざり合っていく中で、登場人物一人ひとりの不幸や悲しみ、または喜びとか、そういった感情が出てくるのが、映画の面白さではないかと思っています。
-確かに、ひとつの事件をきっかけに、登場人物三者三様の生き方が見えてくるようでした。それぞれのキャラクターについて、どのような人物像を作っていこうと思われていましたか?
(C)2017映画「追憶」製作委員会
まずは、面白くなければいけませんね。それから、観てくださる大勢の観客のみなさんにとっても、心に響くものでなければいけない。生きていると、日常で忘れてしまったことや、あるいは「もう関係ないや」と思っていたことなどに、取り憑かれていくという経験をすることがあります。でも、それがなければ生きていけないと思うこともある。我々の気持ちは、そういう想いの中をさまよい歩いているようなものです。
観ている人のそんな気持ちが、映画を観ることで力づけられたり、自分たちと一緒だねと慰められたりして欲しいなと思っています。
-確かに、日常を生きていると、納得のいかないことや、自分の中でも辻褄の合わない感情が生まれます。この映画からは、それでもいいんだと肯定してくれるような優しい余韻を感じました。
■能登半島のマリア様になってくれたらいいなと思っていました
(C)2017映画「追憶」製作委員会
-ストーリーの要となるのが、安藤サクラさんが演じるヒロイン・涼子です。最初にあがってきた脚本からヒロインの設定を変えたいとおっしゃったそうですが、涼子はどういう人物像にしたかったのですか?
ヨーロッパに行くと、どこに行ってもマリア様がいますよね。僕は、涼子は能登半島のマリア様になってくれたらいいなと思っていました。
-それは、完璧な善人や信じられる存在ということでしょうか? あるいはその人がいれば、安心して暮らせるといったような存在ですか?
(C)2017映画「追憶」製作委員会
いえ、信じられるとか、善とか正しいとかではなく、また暮らしに直結することでもなく、何でも受け入れてくれる、温かい深さのある世界ということでしょうか。その温かさを象徴する存在かなと思います。安藤さんには、それを演じられる特別なものを感じたので、僕が推薦しました。
【『追憶』降旗康男監督インタビュー(全4回)】
(1)安藤サクラは「能登半島のマリア」
(2)降旗康男監督が岡田准一と小栗旬に出した「宿題」
(3)木村大作キャメラマンと降旗康男監督の「あ、うん」の呼吸
(4)「"活動屋"の世界は水が合った」降旗監督が映画業界に入った理由
『追憶』公開情報 5月6日全国ロードショー
監督:降旗康男
撮影:木村大作
出演:岡田准一 小栗旬 柄本佑 長澤まさみ 木村文乃 安藤サクラ 吉岡秀隆
公式サイト http://tsuioku.jp/