アニメ監督と野球の監督の共通点 『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督&満島真之介 対談(第4回)

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神山監督が率いる現場を見た満島真之介さんは、「野球の監督」との共通点を感じたのだとか。また今回は、高畑充希さんが主人公ココネに扮して歌う主題歌『デイ・ドリーム・ビリーバー』誕生秘話も伺いました。

 

アニメーション映画の監督と、野球の監督との共通点

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満島 こういう現実と非現実を持ってくるとなると、やっぱりステレオタイプになりがちじゃないですか。実写もそうなんですけど、ちょっと行き過ぎたかなとか、もうちょっと行っていいんじゃないかとか、ギリギリで調整してると思うんです。それがアニメになると、何でもできる分、もっと葛藤とか悩みがあると思うんです。

 

神山 ああ、そうだね。

 

満島 だからこそ、監督の持つセンスだと思うんです。頭でどうこう考えても、結局どこか感覚的というか。スポーツの監督と似てると思うんです。スポーツって先が読めないし、ここは代打にしようとか、バントさせようとか、ここは任せて打たせようとか、その采配がすべてなんです。しかもそれを、敵のいない世界でやるわけですよ。映画の現場には敵なんかいないんだから。

 

神山 そう、相手チームはいないからね(笑)。

 

-確かに、スタッフが一丸になって作った感じがすごく伝わります。

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神山 確かにね、アニメの監督って野球の監督に近いと思う。

 

満島 僕もそれ、すごく感じました。

 

神山 似ているようで、サッカーの監督とは明らかに違う。

 

満島 そう、サッカーじゃない。

 

-えっ、それはどういう違いなんですか?

 

満島 サッカー、ラグビーは、任せなきゃいけないんです。

 

神山 もう戦術を伝えたら、もう後はグランドにすらいないからね。

 

満島 タイムアップまで見ているしか方法がない。それはそれで別の信頼関係があるけど、でも野球は1球1球が勝負なんで、監督が決めている。だから甲子園はだいたい監督で決まるんですよ、勝つチームか負けるチームかは。

 

-まさにこの作品も、監督の采配が決めたということですね?

 

満島 そうだと思います。僕は今回、制作現場を見せてもらったんですよ。どういう風に作られているのか、絶対見たいと思って。アニメのひとつの絵を完成させるために、どれだけの人がどういう感じで関わってるんだろうと。たくさん資料が積まれた部屋で作られてるようなイメージだったんですけど、行ってみたら、超スッキリしてるんですよ。もう、画面ひとつだけ。

 

神山 今回はタブレットで作画をしたからね。

 

満島 しかもスタッフも、外国の方もいれば若い女の人もいればおじさんもいればと、いろんな世代のいろんな人種の人たちがいて。この人達が一つの作品を作っているんだと実感して、「あ、野球の監督だ」って思ったんです。その監督のもとに精鋭が集まってて。

 

神山 僕もその感覚はすごく近いね。

 

 

■主人公ココネが歌う主題歌『デイ・ドリーム・ビリーバー』はこうして決まった!

 

-この『ひるね姫』は、これまでの神山作品のメカや戦闘といった要素も持ち合わせつつ、たとえば岡山の普通の女子高生・ココネの人生を肯定するような、やさしさも持った作品に仕上がっています。

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神山 やっぱり作る時は、なんかこう結末にね、未来であったり、テクノロジーであったり、希望を見出したいなと思っていつも作っているので。まあそれがね、やっぱり体調や環境でそういかないときもあるし、なかなかそれはいつも苦戦するんだけど(苦笑)。

 

しかも今回は、途中で「果たして希望を見いだせるか」って思いがあったりね。そんないろいろな思いがありながら、でも最後はすごく希望があるチャーミングな話になったなと。

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-そして最後に主題歌『デイ・ドリーム・ビリーバー』が流れてきて、それも物語の内容と見事にリンクしているようで「なるほど」と納得させられます。主題歌にあの曲を選んだのはなぜですか?

 

神山 脚本を書いていた時に、ふと自分で口ずさんでいたんです。それで思ったのは、これはお父さんとココネの話だけど、お父さんとお母さんの話でもある。そしてそれをココネが後から知るっていう話で。だからこの歌がピッタリなんだと。

 

で、できれば主題歌で使えたらなって思ったけど、最初はホントに希望程度。やっぱり原曲を使うというのはすごくハードルが高いし、ただ主題歌として誰かにカバーしてもらうんだったら、意味が変わっちゃうので、この歌を使う必要はないかなと。

 

そんな中で、ココネ役の高畑さんのキャスティングが決定してOKを頂いた時に、彼女は歌も歌えるよなと思って。だとしたら、これはもう僕としては台詞の延長線なので、ぜひココネに歌って欲しいなとなってね。

 

-そういう経緯があったんですね。物語を補完する役割も担っているような、この作品の主題歌にふさわしい歌詞で、心に残ります。

 

神山 脚本を書いている時から、すごく言い当ててるなっていう思いがあったね。

 

満島 面白いのが、僕らの世代がこの「ひるね姫」を作るとしたら、絶対に出てこないんですよ、この歌は。

 

神山 そうなんだ。

 

満島 清志郎さんも含めてだけど、僕らロック好きは知ってるし好きな曲だけど、曲へのイメージが違うんですよね。僕らの世代からすると、リズムに親しみは持てるけど、どういう歌詞だったっけ?になっちゃう。

 

神山 聴いたタイミングでね、その歌をどう受け取っているかというのは違ってくるし。流行歌だったときと、懐メロで聴いた時とはやっぱり違うし。

 

満島 そうですよね。だからこれは、神山さんが書いているから出てきた曲なんですよ。それは作る人の世代によって違うし、そういうのが今回、全部噛み合ってるんです。

 

 

もしも魔法が使えたら?

 

-ではお時間が来てしまったようですので、最後の質問です。もし魔法が使えたら?

 

神山 もし魔法が使えたら…今はとにかく、休暇が取りたいです(笑)。

 

満島 切実(笑)! 休暇をプレゼントしたいです!

 

神山 はい。ヒュッと海外に行ってしまいたいですね(笑)。

 

満島 僕は魔法が使えたら、この『ひるね姫』の世界に入りたいです。満島真之介として、モリオとココネに会いたい! で、夢の中に入って行って、全部体感する!

 

神山 ああ、体感オタクとしてこの世界をね。

 

満島 もう全部できますから。空も飛べるし、かわいい女の子は隣にいるし(笑)。

 

神山 うらやましいよね(笑)。

 

満島 体感オタクとしては、アニメでここまで入ってみたい世界は珍しいかも。あとは、魔法が使えたら、もうちょっとだけ取材の時間が伸びればいいなと思います(笑)!

 

神山 (笑)。

 

-お忙しいところありがとうございました!

 

【『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督×満島真之介さん特別インタビュー(全4回)】
(1) 「日常がファンタジーになってきた」『ひるね姫』神山健治監督が感じる時代観
(2) 神山監督が満島真之介に見いだした “オタク気質”
(3) 「ひるね姫」に観る、距離感が絶妙な神山ワールド
(4) アニメ監督と野球の監督の共通点

『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』公開情報

2017年3月18日(土)全国ロードショー

原作・脚本・監督:神山健治

出演:高畑充希 満島真之介 古田新太 釘宮理恵 高木渉 前野朋哉 清水理沙・高橋英樹・江口洋介

公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/

 

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