「ひるね姫」に観る、距離感が絶妙な神山ワールド 『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督&満島真之介 対談(第3回)
巨大ロボットや変形するバイクなど、メカ&ガジェットファンが熱狂する造形も『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』の魅力のひとつ。監督のこだわりを聞くと、すごく厳密に設定して描かれていることがわかりました!
■造形へのこだわりは「お父さんの作った話が、ココネの中ではどうなるか」
満島 神山さんがこの作品をやるにあたっては、すごい新しい挑戦だと思っています。僕には外国人の友達がけっこういるんですけど、神山監督の名前を出すと浮足立っちゃうんですよ。「マジかよ!」「次は何をやるんだ!?」と。で、一人の女子高生の話だと言うと、もうイメージが勝手にバーっと広がるわけです。「何? メカの女の子か? アンドロイドか?」って(笑)。
神山 なるほど(笑)。
満島 そんなイメージがどんどん出てくるけど、まさか岡山の女の子だとは誰も思わないぐらい今回の設定は意外性があるし、監督の世界観って世界に広がっているものなんですよね。
編集 おっしゃる通り、監督の世界観には海外にもファンが多いと思いますが、今回の造形には、どんなこだわりがありますか?
神山 ファンタジーって、設定がしくじってると見ている人たちもしらけちゃうから、そこはブレないようにするってことかな。その物語の二重構造になっている世界を。
編集 その二重構造とは?
神山 これはお父さんが話して聞かせた物語なので、(東京出身の)お父さんはおそらく東京のことを想像している。物語では、お姫様だって言ってみたり、王国だって言ってみたりしているけど、あれは東京のことを話しているわけだよね。でもココネは東京を見たことがなくて、ディズニーランドにも行ったことがないから、中世ヨーロッパのファンタジー世界じゃなくて、自分の家のガレージにある機械の部品などから世界を想像している。だから、ああいう世界になっている。ロボットの造形も、お父さんのガレージのバイクの部品から想像していたりとか。それは一個一個説明はしていないけど、全部意味を持たせながら作っているんですよ。
編集 ココネの夢の世界だから、ああいう造形になったと。
神山 お父さんがココネの夢の世界に入った時に、自分の夢の中での姿に一瞬驚いたりするけど、あれはお父さんが「ああ、ココネは俺のことをこう思ってたのか」っていうことを、初めて見たということで。同時に、俺はこう思って話してたけど、ココネにとってはこういう世界なんだなっていうのを実感するというね。
満島 だからモリオが出てくる時はモリオ自身だったりするわけですね?
神山 そう、モリオはお父さんの物語には出てこないから。
■「全部の要素がギリギリまで行っている!」
満島 僕はこの作品は、監督の「距離感」が絶妙だと思って。離れすぎずくっつきすぎず、ファンタジーすぎず、なんか…もう、「あーっ」っていう(笑)。
神山 (笑)。
満島 説明がしづらいんだけど、たとえば、いろんな要素を六角形の枠でグラフみたいに表すとしたら、それの全部の要素がギリッギリまで行くんですよ。だけど、その一つが行き過ぎたり、はみ出したりすると、しらける人もいる。
神山 そうだね。
満島 でもこの作品はそうじゃないっていう。六角形の角まで全部いっぱいに行ったりするけど、それがはみ出すことは絶対ないんですよ。
編集 独自の世界観を盛り込みつつも、観客をないがしろにしないバランス感覚ですね。
満島 また、「夢」っていう設定だから、このファンタジーの世界もみんなに受け入れられると思いますし。
編集 「夢」ならではの自由な画作りも印象的でした。ココネとモリオが瀬戸内海の空をバイクのロボットで走る爽快なシーンは、物語の中とはいえ、運転された満島さんがうらやましいです!
満島 そうだよね、あのシーンのモリオはめっちゃかっこよかった!
神山 モリオは普段はリアリストだとか何だとか気取ってるわりに、ノリノリだからね。
満島 そうそう! そういうのも全部含めて、この作品はスゲーぞと思ったんですよ。
神山 うれしいですね。演じてくれた人がそう思ってくれるっていうのは。
【『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督×満島真之介さん特別インタビュー(全4回)】
(1) 「日常がファンタジーになってきた」『ひるね姫』神山健治監督が感じる時代観
(2) 神山監督が満島真之介に見いだした “オタク気質”
(3) 「ひるね姫」に観る、距離感が絶妙な神山ワールド
(4) アニメ監督と野球の監督の共通点
『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』公開情報
2017年3月18日(土)全国ロードショー
原作・脚本・監督:神山健治
出演:高畑充希 満島真之介 古田新太 釘宮理恵 高木渉 前野朋哉 清水理沙・高橋英樹・江口洋介
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/