幼い頃からプロだった神木隆之介だからハマる役 『3月のライオン』大友啓史監督インタビュー
第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞をはじめ数々の賞に輝く羽海野チカによる国民的人気コミック「3月のライオン」(ヤングアニマルコミックス*連載中/12巻まで発売中2017.3現在)が待望の実写化! 脚本・監督には、TVドラマ『ちゅらさん』『龍馬伝』から映画『るろうに剣心』シリーズまで幅広い世界観を描いてきた大友啓史監督を迎え、映画ならではの豊かな物語になっています。
【Filmers】では、大友監督に単独インタビュー! 第一回は、主人公・桐山零の成長に焦点をあてた理由、そして零と神木隆之介さんとの共通点について伺いました。
■俳優として幼い頃からプロだった神木隆之介と、将棋のプロである桐山零とは重なるところもある
-神木隆之介さんは主人公・桐山零役にピッタリです! 最初から決めていたのですか?
脚本を書き始めるにあたって、プロデューサーと主役は誰がいいかという話になった時、僕は真っ先に神木くんと答えたんです。ひとつには当然、ルックスが似ているというのもあるけど、もうひとつには『るろうに剣心』をやった後で、もうちょっと神木くんを撮りたいなというのがあった。というのも、『るろうに剣心』では神木くんのアクションが凄いという驚くべき一面を見せつつも、彼の得意とする芝居部分での力は十分に発揮する尺(長さ)ではなかったから、もう少しどっしりと付き合ってみたいなと思っていたんです。なので、この『3月のライオン』という作品はピッタリだと思いました。
ただ、『るろうに剣心』を撮りながら、彼も少しずつ「男」になってきているなということも感じていて。彼はベビーフェイスだけど20歳を越えていたし、早くしないとこの『3月のライオン』が撮れなくなっちゃうなと、彼を早く決めて欲しいという思いはありましたね。
-間に合いましたね!
間に合ったね。あと、俳優として幼い頃からプロだったという彼と、将棋のプロである桐山零とは重なるところもあるから、そこが役作りの参考になる。10代でプロだった人の気持ちは分かる人は少ないけど、神木くんはそこを体験してきているから、よく分かるんじゃないかなと思って。
■桐山零の成長を描くとなると、「業」を描くことにもなる
-原作よりプロ棋士の「業」のようなものが際立っているような印象でした。このように人気のある原作ですが、どこに焦点を当てて描こうと思われましたか?
映画として一つの物語を描くとなると、主人公の桐山零の気持ちの成長を縦軸に、しっかりと描くことになる。では零はどういう子なのかというと、ご家族が事故で亡くなって、父親の友人・幸田のところに住み込みの内弟子として預けられた。その際に「君は将棋が好きか?」と尋ねられて「はい」とウソをつくところから、物語は始まっているわけです。
そのウソをついた彼がずっと将棋を続けていろんな人と出会う中で、「でも僕は将棋が好きなんだ」と思える。そこの成長を、2本の映画でちゃんと描こうと思いました。そうすると、彼のいろんな部分は将棋によって作られたわけだから、まさに桐山零の業を描いている物語にはなると思ったんですよ。
-ある重要な対局シーンは、ロケ地の風景も含めて美しいシーンでした。
山形県の立石寺ですね。いちばん最初にこの映画のロケハンをしたときに行ったんですよ。芭蕉が訪れたような有名な場所で、すごくいいので、あのシーンで使いたいなと思っていて。1070段も階段があって、見に行った時は雪がたくさんあって登るのは大変だったけど(笑)。
【『3月のライオン』大友啓史監督インタビュー(全4回)】
(1)幼い頃からプロだった神木隆之介だからハマる役
(2)思った以上にうまく行った染谷将太演じる二海堂
(3)有村架純が演じることで膨らむ原作イメージがある
(4)『3月のライオン』は向田邦子作品のような魅力がある
『3月のライオン』
【前編】 3月18日(土)【後編】 4月22日(土)2部作・全国ロードショー
監督:大友啓史
原作:羽海野チカ『3月のライオン』(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
出演:神木隆之介 有村架純 倉科カナ 染谷将太 清原果耶 佐々木蔵之介 加瀬亮 伊勢谷友介 前田吟 高橋一生 岩松了 斉木しげる 中村倫也 尾上寛之 奥野瑛太 甲本雅裕 新津ちせ 板谷由夏 伊藤英明/豊川悦司