「日常がファンタジーになってきた」神山健治監督が感じる時代観 『ひるね姫』神山監督×満島真之介 特別対談
『東のエデン』『精霊の守り人』『攻殻機動隊S.A.C.』など、独自の世界観で人気を呼ぶ神山健治監督の最新作のテーマは、「夢」。2020年東京オリンピック開幕の3日前という「少し先の未来」を舞台に、岡山の平凡な女子高生・森川ココネが、唯一の得意技である「昼寝」を武器に、現実と夢を縦横無尽に駆け抜けるファンタジー。
主人公・森川ココネの声は高畑充希さん
神山監督が自ら原作・脚本を手掛けたこの作品。これまでの重厚な世界観の中に、主人公として“普通の女子高生”を据えることで、思いもよらない冒険が展開する、神山ワールドの新境地となっています。
声の出演は、主人公の森川ココネ役に高畑充希さん、冒険をともにする幼馴染・佐渡モリオ役に満島真之介さんと、旬の若手俳優が爽やかに熱演! 江口洋介さん、古田新太さん、高橋英樹さんと、実力派が顔を揃えています。
ココネの幼なじみ佐渡モリオの声は満島真之介さん
【Filmers】では、新境地を切り拓いた神山監督と、モリオを演じ神山作品のファンを公言する満島真之介さんとの特別対談が実現!
まずは作品が生まれた背景、そして「夢」というモチーフについてお話いただきました。
■「日常がファンタジーになってきた」という感覚の変化
編集部(以下、「編集」と表記) 神山監督の最新作『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』。試写を拝見して、これまでの神山ファンが愛してきたメカやガジェットの要素もありつつ…。
満島 この作品は、メカだけじゃないところもまたたっぷり詰まっていて…
神山 てんこ盛りだからね。
編集 そもそもなぜ「ひるね」というモチーフを使ったのですか?
神山 『ひるね姫』というタイトルはわりと終盤で固まった要素で、キャスティングの寸前ぐらいですね。もともと最初にあったのは別のものですね。それは、震災があった後、何もない日常のほうが得難いファンタジーになってしまったなという感覚で。そういった意識の変化があった中で、世界を救ったり戦ったりする話ではなく、もうちょっと身近な物語を作れれば…というところからスタートしました。
ただ、アニメーションの映画である以上は、ファンタジーとして大きく飛躍する部分が欲しい。その中で思い出したのは、娘が子供の頃に物語を話して聞かせたりしたこと。でも、僕もただ『桃太郎』などをそのまま話して聞かせるんじゃつまんないから、途中から『ワンピース』みたいな海賊の話にしたりしていて。
満島 (笑)。
神山 そういうのを思い出したりした時に、子供の頃にマンガや特撮を見たりした後、現実と夢がごっちゃになる年頃ってあるじゃないですか。
満島 ありますね。
神山 やっぱりある?
満島 僕、今もけっこうそうです(笑)。
神山 (笑)。だんだん大人になるとなくなっちゃう場合もあるけど、そういうところって誰しもある。そこで、たとえば夢の世界に行くというファンタジーはいっぱいあるけど、夢のほうがこっちに来るような、そういう仕掛けにしたらどうかって。最初は比喩として説明していたんだけど、それ自体、面白いかもしれないねっていうことで。だったら「寝る」のを武器にして、このヒロインは前進していく。それはちょっと今までにないよねと進んでいって、タイトルも『ひるね姫』になったし、夢というものがモチーフになっていったという感じかな。
■自分だけの物語は「夢」と「現実の人生」と2つしかない
編集 夢の中にもう一つの人生が進んでいて、時にそれが現実と繋がる。夢と現実の境界線の部分の繋がりは、物語を作る上で大変だったのではないでしょうか?
神山 大変でした(笑)。
満島 そうでしょうね。夢って無意識の世界じゃないですか。自分が生まれてから死ぬまでの間に見る夢って、世界で自分一人しか見られないんですよ。自分だけの物語って、夢と、現実の人生と、この2つしかなくて。
監督は「夢」ってモチーフは後から決まったと言ってましたけど、根本的なところにそういう意識がないと、そこに行き着かないなと思っちゃったんですよ。だから僕は最初から、そういう意識の部分にめっちゃ惹かれてて!
編集 では、出演し、完成した作品を観ての感想は…?
満島 もう、「たまらんな!」っていう(笑)。もうね、僕の人生に新たな宝物ができました。
神山 それは嬉しいね。
満島 僕の人生という物語の中に、ひとつ大きな贈り物がトンと置かれた感じというか。エンドロールで自分の名前が上がってきた瞬間に、グッと来ましたね。ここはたぶん僕しかグッと来てないんですけど(笑)。
神山 (笑)。僕の夢に出演してくれたってことだよね。
満島 そういうことです!
【『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』神山健治監督×満島真之介さん特別インタビュー(全4回)】
(1) 「日常がファンタジーになってきた」『ひるね姫』神山健治監督が感じる時代観
(2) 神山監督が満島真之介に見いだした “オタク気質”
(3) 「ひるね姫」に観る、距離感が絶妙な神山ワールド
(4) アニメ監督と野球の監督の共通点
『ひるね姫〜知らないワタシの物語〜』公開情報
2017年3月18日(土)全国ロードショー
原作・脚本・監督:神山健治
出演:高畑充希 満島真之介 古田新太 釘宮理恵 高木渉 前野朋哉 清水理沙・高橋英樹・江口洋介
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/