香川照之さんは「早く役者を辞めなさい!」と言われていた!? 毎日映画コンクールレポート第3弾

女優助演賞は「シン・ゴジラ」で環境省の役人・尾頭ヒロミを演じ話題となった市川実日子(いちかわ・みかこ)さんが受賞。野生生物課・職員として未知の生物「ゴジラ」の生態を冷静に分析、大臣など上役に気づかうことなく、人の目を見ずただ自分の信じることを早口でまくしたてる理系女子キャラクター。そして物語の最後に見せた安堵の表情に垣間見せた優しさにゴジラファンの多くが熱狂! 尾頭さんブームを巻き起こした。

th_DSC02601.jpg市川さんのコメント

「作品が公開されてから道行く方、現場のスタッフから“観ました!”“おもしろかったです!”という言葉をたくさんかけてもらいました。その時の表情がみなさん、子どものようにワクワクしていて…自分が関わった作品に対して、こんなふうに投げ返してくれる温かい作品ってあるのだなと嬉しく思っていました。この場を借りて、庵野(秀明)総監督、樋口監督、あと…ゴジラさん(笑)。その他、大勢のスタッフのみなさんに感謝の気持ちを伝えたいです」

 

 

 

男優助演賞はサイコ・サスペンス・スリラー「クリーピー 偽りの隣人」で猟奇的な隣人を演じた香川照之さん。受賞コメントでは、新人賞を受賞した2人のコメントを引用するなどして笑いを誘っていました。

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「5年前(2011年)に歌舞伎の世界に入りましてからは、1年に5〜10本くらい撮影していた映画に出演することも難しくなりました。そんななか1年半前に撮影したこの作品で賞をいただけて、とても新鮮な気持ちです。先ほど新人賞のおふたりがご両親に感謝されたり…ウィキペディアにも載っていないとおっしゃっていたので、そのときボクは控え室にいたので調べてみたんですが…ホントに載っていない!(*会場爆笑)。そんな初々しい気持ちで新人賞を受賞されたというコメントを聞きながら、ボクにとってもこの賞は新人賞として受け止められるなと思いました。黒沢清監督の現場はとても素晴らしく、役者として誇らしいものでした。そんな現場のスタッフ、キャストのみなさんを差し置いて私が受賞させていただいて申し訳ないのですが…ありがたくトロフィーはいただいてゆきます。先ほど岡田裕介(東映)会長が登壇されていました。ボクが23歳ころに東映の映画に出演させていただいたとき、東映の本社に呼ばれまして…まだ若き岡田会長に“君は役者の才能が無いから辞めなさい!”(*会場大爆笑)“君の演技は観るに忍びない!”“ボクと同じように一刻も早く東映の社員になりなさい!”・・・とまあ、20数年前に言われまして…こういった賞をいただくたびに伝えています…会長!俳優を辞めなくて良かったです!(笑)」

 

 

 

続いて発表されたのは大正時代から活躍した銀幕のスター田中絹代の名前を冠した田中絹代賞。今回受賞したのは、芸歴55周年記念作と銘打った「ゆずの葉ゆれて」でソチ国際映画祭・主演女優賞に輝くなど、いまなお映画界の第一線で活躍されている松原智恵子さん。

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松原さんのコメント

「16歳で日活に入り、右も左も分からない撮影現場で監督、スタッフ、キャストのみなさんから教わり叱られながら、今年で56年目になりました。一時映画から遠ざかっていたこともありましたが、ここ最近は良い作品に恵まれ、やはり映画は楽しいなと思っています」

 

 

女優主演賞は第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞に輝いた「淵に立つ」の筒井真理子さん。平凡な家族の前に現れた、夫の旧友。その男に翻弄され心奪われる妻を演じた筒井さん。

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筒井さんのコメント

「受賞を知らせる記事に“淵に立つで受賞した筒井真理子、淵ではなくど真ん中に立って見せた”と書いていただきまして・・・ウマい!と(笑)思いながら、ホントに嬉しかったです」。

 

 

男優主演賞は「永い言い訳」の本木雅弘さん。この表彰式のため、現在お住まいのロンドンから駆けつけたという。

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本木さんのコメント

「あらゆる意味で話題作も多かったですし、激戦区のなかで唯一(主演男優賞として)授かった一冠です。噛み締めています。ありがとうございます。今回の作品は、自分のダメさを自覚していながらも、なかなか変われないという人間の役だったんですが…撮影現場では、監督の伝えたいニュアンスは分かるんだけど、なかなか、その表現に到達しない自分に苦しみました。あらためて、数では割り切れない感情と向き合っている役者という仕事がいかに難しいか実感した作品のひとつです。正直言って、主役としての出来映えは「聖の青春」の松山ケンイチさんの方が上だったと思います(笑)。ですが、わたしは映画の成せるワザ、監督の力という意味合いで、絶妙な調和の中でキチンと立つことができたというのが実感です。そして、今回の受賞でもうひとつ嬉しいのが、同じ年齢の香川(照之)さんと同じ表彰式に臨めたことです。わたしたちは51歳になったのですが、表には見えていないものの、わたくしも人生の如何ともし難たさをそれなりに経験し始めておりますので…この先、身から出たサビも、自分の持ち味のひとつにしていきたいと思います」

 

役者さんそれぞれの個性が現れるコメント。今回の記事では、その一部を抜粋して掲載していますが…これを最初から最後まで聞くことができるのは授賞式の醍醐味のひとつ。来年も各映画賞の授賞式イベントが開催される。一般にも公開されている授賞式もあるので、ぜひ、足を運んでみては?

 

【第71回毎日映画コンクール授賞式レポート(全4回)】
(1)樋口監督がゴジラポーズで登場
(2)タレント名鑑、ウィキにも載っていない無名俳優が新人賞
(3)香川照之さんは「早く役者を辞めなさい!」と言われていた!?
(4)「人は笑えることがあれば、明日が見える」のん感動の受賞コメント

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