生田斗真さんを起用した理由『彼らが本気で編むときは、』
トランスジェンダーの女性・リンコを演じるのは、生田斗真さん。なぜ彼に白羽の矢が立ったのか? 役作りに奮闘する生田さんと、それを支えるスタッフとのユニークなエピソードもお話いただきました。
■きれいな女性として成立する人にお願いしたかった
――主役のリンコに生田斗真さんを起用した理由は?
取材したお母さんの娘さんは、すごく綺麗な方なんです。もともと綺麗な子でもあるんですけど、お母さんの理解があったので、高校卒業してからすぐに性転換の手術をして、早めに男性ホルモンを出なくしてしまうことによって、すごく綺麗な子なんです。でも一方には、例えば子供が生まれてから40代か50代で自分のアイデンティティーに気づく人もいるじゃないですか。おじさんになってからのトランスはなかなかハードルが高くて、“おじさん度”が残っている人もいますよね。
今回は、最初からお母さんに理解してもらえたという状況の人を描きたかったので、女の子になった時に、ちゃんときれいな女の人として成立する男性をキャスティングしたかったんです。生田さんはなにしろビジュアルが綺麗な人なので、そういう面もあってお願いしました。
■男っぽい生田斗真を女の子に近づけるには、どうすればいい?
――おっしゃる通り、とても品のある美しい女性を演じていらっしゃいましたが…撮影現場でご苦労もあったのでは?
生田さんにお会いしたら、顔は綺麗なんですけど、意外とがっちりしているんですよね。だから、どうやって女の子に近づけるかは、最初はすごく大変でした。彼がスカートを履いたところで、やっぱり男なんですよ。髪の毛を伸ばしたほうがいいんじゃないかとエクステをつけたりしたんですけど、顔立ちがはっきりしていることもあって、逆に水商売のようなケバい雰囲気が出てしまう(苦笑)。
だから、スタイリストさんと生田さんと私で、最初はすごく悩みました。「おっぱいはこのサイズでいい?」とか、「もっと綿を入れたほうが…」とか(笑)。
――まずは見た目を“女の子”にするのに苦労があったんですね
そんな中で、彼自身は所作をやらなければいけない。その所作も「そんな飲み方じゃダメだ」とか「そんな歩き方ダメだ」とか、みんなでどうだこうだ言って(笑)。何人もに言われちゃうと混乱しちゃうから、最初から言う人は決めていましたけどね。
――現場に女性の先輩がいっぱいいらっしゃって、その女性たちからダメ出しがあったわけですね(笑)。
でも、そんなことに気を使っていると、役としてリンコちゃんの心が置いてけぼりになってしまったりもする。だからまた立ち戻って、キャラクターに向き合うための話し合いをしたり。そんな感じで、本当に女の人になってもらうために、最初はすごく苦労しました。
――見た目、仕草から心の中まで、本当にじっくりと役作りをされたんですね。その他、どんな演出をされたのですか?
例えば歩き方ですね。もともと本当に男気があってとても男っぽい方なので、歩き方が完全に男子なんですよね。そこはかなり練習してもらいました。彼も気を遣ってくれて、休み時間にでもスカートを履いてくれていました。
――具体的に歩き方の指導をされたのですか?
所作指導の先生が来て下さったんです。私もプロデューサーもこういう現場で働いているので、やっぱり男っぽくて、女らしい仕草が教えられないんですよ(笑)。だからそこは先生に来ていただこうと。そうすると、バックの持ち方も違うわけです。なんかこう…肩にかけるときの手の置き方とかも(笑)。
――生田さんが所作の指導を受けているなかで、女性としてあらためて発見した “女性らしい仕草”ってありますか?
やっぱり立ち方ですかね。ただ立っているだけなんだけど、カバンを持つ時の手の置き方とか、足の組み方とか。ああ、こうするだけで女性らしく見えるのかと気付きましたね。もう忘れちゃいましたけどね(笑)。
――そういう積み重ねで、あの役が出来上がったんですね!
そうなんですよ、すごく努力してくれましたね、彼は。
★予告編は公式HPからご覧ください★
【『彼らが本気で編むときは、』荻上直子 監督インタビュー(全4回)】
(1)癒してなるものか!『彼らが本気で編むときは、』荻上直子監督インタビュー
(2)生田斗真さんを起用した理由『彼らが本気で編むときは、』
(3)「お腹を空かせてきました!」桐谷健太さんも楽しみにしていた食事シーン
(4)祝・テディ賞審査員特別賞受賞作「彼らが本気で編むときは、」から学ぶセクシュアル・マイノリティの一歩先にある問題
『彼らが本気で編むときは、』公開情報
2017年2月25日(土)全国ロードショー
脚本・監督:荻上直子
出演:生田斗真 柿原りんか ミムラ 小池栄子 門脇麦 柏原収史 込江海翔 りりィ 田中美佐子/桐谷健太
公式HP:http://kareamu.com/