記者のリアルを習得!『愚行録』妻夫木聡さんの役作り
複雑な心情を内包する多面性のある登場人物が、『愚行録』の魅力のひとつ。しかし、そんな複雑なキャラクターを演じる俳優たちは苦労しそうです。今回のインタビューでは、主役である週刊誌記者・田中武志を演じた妻夫木聡さんと、その妹・光子を演じた満島ひかりさんについて伺いました。
■妻夫木 聡が細かくリサーチした記者のしぐさ
――複雑な内面を持つ人物が多い中、キャラクターに関しては、俳優陣とはどんな話をされたり、どんな演出をされましたか? 現場での話を教えてください。
今回は、皆さんすごく楽しんで演じて頂いたのではないかと感じております。やっぱり単純な役ではないですし、この人は悪い人だとか、この人がこの人を好きとか嫌いとかいった分かりやすい話でもないですし・・・。役者さんとは事前にも現場でも話す機会はたくさんあったのですが、それこそキャラクターについては、本当に1時間でも2時間でもずっと話せるぐらいの感じでしたね。
――妻夫木聡さん演じる週刊誌の記者・田中武志も難しいキャラクターだと思いますが、妻夫木さんとはどんなやりとりをされましたか?
妻夫木さんは、撮影前にけっこう時間を作ってくださったんですよ。よく考えればすごく贅沢ですよね。一緒に食事をしながら役の話もゆっくりできましたし、リハーサルの日も取ってくれたので、重要なシーンは全部確認できました。
――役のイメージをすり合わせる感じでしょうか?
本当にすり合わせる感じでしたね。妻夫木さんに関しては、現場に入った時には、もう細かく調整された状態にしてくれていました。記者さんにも事前に細かくリサーチをしてくれて。
例えば今、こうやって話しているじゃないですか。そんな時、ICレコーダーは最初からテーブルに置くのか? どのあたりに置くのか? 手帳に書く時はどうするのか? そんな時は取材する人から見られるのが嫌だから、ちょっと机の下に隠して書くとか、そんな風に細かくリサーチしてから、現場に入ってくれました。
――さすがですね! 記者としてのリアルな所作にも注目したいです。
そういう細かいところ以外にも、シーンごとの気持ちのテンションなども、撮影始まってすぐの時点で、けっこうドンピシャで共有しているものがあるなと感じました。だから妻夫木さんとは本当に微調整という感じでしたね。
■満島ひかりが「何かがおかしい」と感じている時は、たしかに何かある
――田中の妹・光子は、置かれた境遇も本心も謎に包まれており、演じる上ではヘビーな役ではないかと思います。光子役の満島ひかりさんには、どんな演出をされましたか? 例えば何かを参考にとか。
何を参考にとか、そういう話はしてないですね。でも、満島さんとは本当にいっぱい話しましたね。準備ができてからも、ひたすらずっと話すっていう(笑)。
――それはキャラクターについてですか?
キャラクターについてもたくさん話しましたし、現場でも「何かがおかしい」みたいな時も…。
――何かがおかしいとは?
カメラマンも私もよく言ってたんですけど、満島さんが何か違和感を覚えている時というのは、「何かがうまくいっていない」というのが確かにあって。たとえば座る位置とカメラとの距離感とか、そういう“何か”がうまくいってなくて。だから、そんな時は少しずつ時間をかけてやることで、確実にすごく前に進むという感覚がありましたね。
――そういうバロメーター的な役割もされていたとは!
やっぱり、満島さんを見ていると、“天才”ってこういうことなんだなと思いましたね。気持ちがぐっと乗るまでに時間がかかることはあるんですけど、いざカメラが回り始めると、ものすごい勢いでシーンが一気に成立する感じがあって。僕の中では、アスリートに近いような感覚がありました。
【『愚行録』石川慶 監督インタビュー(全4回)】
(1)爬虫類の肌のような独特の質感『愚行録』石川監督インタビュー
(2)撮影監督に外国人を起用した理由 『愚行録』監督インタビュー
(3)記者のリアルを習得!妻夫木 聡さんの役作り
(4)満島ひかりが作り上げた「光子」像は救いになった
『愚行録』公開情報
2017年2月18日(土)全国公開
原作:貫井徳郎「愚行録」(創元推理文庫刊)
監督・編集:石川 慶
出演:妻夫木 聡 満島ひかり 小出恵介 臼田あさ美 市川由衣 松本若菜 中村倫也 眞島秀和 濱田マリ 平田満 他
公式HP:http://gukoroku.jp/