ディテールを積み上げることで得られるリアリティ
結婚相談所を経営する知多かおり(高島礼子)は主人公・三村修治の良き理解者として、命をかけた最後の企画をバックアップします。そして、その結婚相談所の劇中CMのイメージキャラクターを務めるのは、誰もが知るあの大物女性タレント。バラエティ番組の放送作家が主人公ということもあり、遊び心のあるキャスティングや細やかな演出が施されています。その裏には、監督の「リアリティにこだわる」という思いがありました。
■こういうところからリアリティが出てくる
――結婚相談所の社長・知多かおり役の高島礼子さんとは、何度かお仕事はされているんですよね?
はい、以前に何度かご一緒させていただいたことがあって、原作を読んだ時に高島さんはこの役にぴったりだと思いましたね。
――余談ですが、その結婚相談所のCMイメージキャラクターがあの“バツイチの”有名女性タレント。その方が「バツイチの私でも大丈夫!」とニッコリしたり、そういう小ネタも楽しい作品です。
よく出ていただけましたよね(笑)。CMキャラクターという以外は設定も何もなく、そのCMもどの程度、映画に映るか分からないので、観ている人がすぐ分かる人がいいということでお願いしたら、面白がって引き受けていただけたんです。
――そんなディテールからも、スタッフ、出演者とも面白がって「楽しい」に変換している雰囲気が伺えますが、企画会議などではそんな小ネタも含めて提案があったのですか?
もともと人が亡くなっていくという話なので、暗くならないようにということで。ほかにも、修治の企画メモを妄想のシーンとして実写化したりとか。本当に一瞬のシーンなんですけど、そういうものを頑張ってちゃんと形にしようと考えていたので、その中のひとつですね。そういうところからリアリティが出てくると思っていたので。書いてあるだけのノートよりも、この人の頭の中ではこういうことを考えているんだとか、そういう妄想を実写化して見せていくと、この人が奥さんと誰かの結婚式を想像しているというのもすんなり受け入れてもらえるかなという。
――確かにこの修治なら「妻の再婚相手を探す」というあり得ないアイデアも思いつきそうです。細部にこだわって、ある種のファンタジーを組み立てて行ったのですね?
現実的にあり得る感じがやっぱりしてほしいなと。スクリーンの中だけでも、観ている人がちゃんとリアリティを感じて、応援したくなる人にしたいと思っていたので。
――案の定、引き込まれて応援してしまいました!
良かったです(笑)。
■これがTVの現場だ!大杉漣は理想の上司!?
――テレビの制作現場のシーンがたくさん出てきますが、実際にテレビ局で撮影されたのですか?
バラエティ番組のスタジオのシーンは実際のテレビ局のスタジオセットですね。他のところは違いますけど。
――三宅監督も関西テレビ所属とのことですが、制作現場の経験も?
ええ、若い頃はバラエティ番組のADとかもしていたので、その時のことを思い出して…(笑)。
――キツそうですね…! テレビの現場って、実際に映画の中のような感じなのですか?
あんな感じだと思います。もちろんそれぞれでイメージは違うと思いますが、自分が若い頃はあんな感じのイメージで、朝方デスクで寝てる人がいたり(笑)。
――大杉漣さん演じるベテラン編成マンは、一見怖いけど優しい好人物です。モデルはいますか?
いえ、原作ではモデルにされた方はいらっしゃるのかなとは思いますけど、特にいないです。ただテレビ局では、バラエティを作っていた人もどこかの時点で現場を離れて、部長とか局長になってく方がいらっしゃるので…、まあ、自分の上司としてこういう人だといいなという(笑)。
【三宅喜重監督インタビュー(全4回)】
(1)織田裕二の持っている”少年らしさ”がハマった
(2)現場では織田裕二がピッチャー、吉田羊がキャッチャーという感じでした
(3)ディテールを積み上げることで得られるリアリティ
(4)人生観を変えるかもしれない名台詞が満載!
( ↓ 予告編 ↓ )
■『ボクの妻と結婚してください。』公開情報
2016年11月5日 全国ロードショー
監督:三宅喜重
原作:樋口卓治『ボクの妻と結婚してください。』(講談社文庫)
脚本:金子ありさ
出演:織田裕二 吉田羊 原田泰造 込江海翔 森カンナ 眞島秀和 佐藤ありさ 前川泰之 大塚千弘 小堺一機 大杉漣 / 高島礼子
音楽:菅野祐悟
主題歌:中島美嘉『Forget Me Not』(Sony Music Associated Records)
公式サイト:http://bokutsuma-movie.com/