織田裕二の持っている「少年らしさ」がハマった『ボクの妻と結婚してください。』

 

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バラエティ番組の売れっ子放送作家・三村修治(織田裕二)はある日、体に異変を感じて訪れた病院で、末期のすい臓がんだと告げられる。余命6か月だと突然宣告された修治は、どうすれば家族に幸せを残せるのか頭を悩ませ、そして妻(吉田羊)が笑顔でいられるような人生最後の企画を思いつく。それは「妻の結婚相手を探すこと」。

 

自身もバラエティ番組の売れっ子放送作家である樋口卓治の原作『ボクの妻と結婚してください。』映画化を手がけるのは『阪急電車 片道15分の奇跡』(2011年)で、繊細な人間ドラマの描写を高く評価される三宅喜重監督。織田裕二、吉田羊、原田泰造、そして高島礼子と、実力派俳優陣が顔を揃え、主人公のまさに命を懸けた一大プレゼンテーションを、切なく、そして優しく描き出します。

 

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■「笑い」を忘れずに盛り込んでいる

――樋口卓治さんの原作をお読みになり、テーマに共感した部分はありますか?

僕は原作をすごく面白く読ませてもらったんですよね。日記形式で書いてあって、人が亡くなっていくのに、面白い、おかしいといった「笑い」というものを必ず忘れずに盛り込んでいる。確かに、人が死んでいくという時でも周りの人がずっと難しい顔をしているかというと、そうでもないでしょうし…笑いってやっぱり大切だと思うので。それが本当に巧く盛り込まれていて、実はこれを最初に読んだ時は「これ、実話なのかな!?」と思ったぐらいで(笑)。

 

――この作品を監督することになった経緯は?

青木裕子プロデューサーが早い時点で読んでいて「やりたいから読んでくれ」とすぐ渡されたので、もう4年ぐらい前ですかね。その半年後ぐらいから打合せは始めていたので、けっこう長い時間がかかって、やっとという感じですかね。(*原作本のリンクは記事の最後に掲載してあります)

 

――泣いたり笑ったりしながら最後はほっこりと癒される映画でした。作品を撮るにあたっては「笑い」の部分はやはり大切にされましたか?

そうですね、やはり原作を読んで「面白いな~!」と思いましたし。ただ少し気をつけないといけないと思ったのは、主人公が荒唐無稽というか奇天烈というか、ちょっと変わったキャラクターなので、彼が考えたことが観る人に伝わらないといけない。彼というキャラクターに乗っていけるかというのが、一番の勝負所とは思っていました。

 

――確かに「妻の再婚相手を探す」という設定は、ファンタジーの要素がありますね

そうですね。最初にそれを聞くと「そんなのアリ!?」なので、それが「アリ」だと思えるかどうかがこの映画の肝かなと。

 

 

■織田裕二の“少年らしさ”がハマった

――そこで織田裕二という役者の存在感、説得力が際立ちますね

そうですね。織田さんの持っている“少年らしさ”というんでしょうか。そういうところが上手くこの映画と、そして主人公像にすごくハマったという感じはしますね。

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織田さん自身、ひとつの作品に入るとその演技のことをずっと考えている人なんですけど、この映画の主人公である放送作家の修治も、自分が立てた企画を実現できるように一生懸命やっていく。そこがすごく近いんだろうなと。

 

――織田裕二さんは絶対に死なないようなあの役の印象も強いですね。

それまで基本的にヒーローとかスーパースターといったそういう役が多かったので、その彼を等身大にするというのが今回の試みですね。

 

――織田さんご自身も「ようやく自分がやるべき作品と役柄に出会うことができた」とおっしゃっていましたが、役作りに関してはどのようなやり取りをされましたか?

撮影に入ってからはずっと、このシーンはどうしようかとか、テストを見ながら「もっとこうですかね」と提案をもらったりと、何かしら話していたという感じですね。織田さん自身も演じながらいろいろと考えておられたので。

 

――役になりきって、主人公の修治だったらどう考えるかと?

そうですね。職業もバラエティの放送作家ですし、主人公にとって「笑い」というものがものすごく大切な作品だと思うんですね。とはいえ悲しいシーンもある訳ですし、それをどの程度入れていくか、そこのバランスを2人で話をして探りながら作っていった感じはすごくしますね。

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修治はすごく家族思いの人ではあると思うんですけど、どちらかというとやはりすごく忙しくて仕事に追われてきた人。そんな主人公が最後に何を考えるかというと、やはり「家族に笑顔を残したい」ということだというのがストレートに出ていればと思います。「悲しい」よりも「優しい」とか「温かい」というのが最後に優ったという感じの映画ですね。

 

【三宅喜重監督インタビュー(全4回)】
(1)織田裕二の持っている”少年らしさ”がハマった
(2)現場では織田裕二がピッチャー、吉田羊がキャッチャーという感じでした
(3)ディテールを積み上げることで得られるリアリティ
(4)人生観を変えるかもしれない名台詞が満載!

( ↓ 予告編 ↓ )

■『ボクの妻と結婚してください。』公開情報
2016年11月5日 全国ロードショー
監督:三宅喜重
原作:樋口卓治『ボクの妻と結婚してください。』(講談社文庫)
脚本:金子ありさ
出演:織田裕二 吉田羊 原田泰造 込江海翔 森カンナ 眞島秀和 佐藤ありさ 前川泰之 大塚千弘 小堺一機 大杉漣 / 高島礼子
音楽:菅野祐悟
主題歌:中島美嘉『Forget Me Not』(Sony Music Associated Records)
公式サイト:http://bokutsuma-movie.com/

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