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「妻が死んだ。」「これっぽっちも泣けなかった。」この衝撃の予告編で話題の『永い言い訳』が、いよいよ明日（10/14）公開されます。Filmersでは公開に先立ち行われたトークイベントをレポートしてきましたが、今回で最終回。映画にも深く関係する「不倫」について、西川監督、本木雅弘さん、樹木希林さんによるクロストークの模様をお届けします。

イベント参加者からの「恋愛相談」に応える形で進行してきましたが…最後の質問は、映画の主人公：幸夫にも通じる「不倫」について。「恋に堕ちてから長い時間が経過するとまた恋に堕ちたくなってしまいます。結婚はしたいですが、不倫をしてしまいそうな自分が嫌なんです。結婚されている方は、恋に堕ちそうになったらどうしているのでしょうか？」

この質問に本木雅弘さんは…「あれはある種の箸休めではないですけど、逃げ場所の一つだったっていう感じはしますけどね」。演じた幸夫についてそう語る本木さん。歪んだ自意識とコンプレックスを内包する人気作家の幸夫は、妻との後味の悪い別れに涙を流すこともできず、妻の親友の遺族である陽一郎（竹原ピストル）とは対照的です。陽一郎の家族と接することによって確かに変わっていく幸夫を、本木さんは人間味たっぷりのチャーミングな人物として演じきっています。

一方、本木さんご本人について、姑の樹木さんから「そんなことをすると、その後の自分の生活が面倒くさくなるから、それを考えたらしないみたいですね」というひとことが。樹木さんは続けて西川監督の恋愛について「婚期を逃しちゃってる」と言いながらも「物を作る、映画を作る、小説を書くというところで、エネルギーを費やしちゃうから、そっちまで行かないんですよ」と、監督としての姿勢に期待を寄せます。「こんな監督なのに、美人でしょう？　それに性格が悪くないのよね。珍しいわよね。性格が悪くない人って凡庸な作品を作るけど、そうではない。こういう人たちがどんどん出てくると、日本の映画界も楽しみですよね」（樹木さん）

さて、肝心の質問に対しては、「恋をしたりすると感受性が豊かになるところはあるのでは。小さなことにも一喜一憂することは、人生を豊かにしてくれるものかもしれないですし」（西川監督）、「そういう危険さって、初々しさを保つ秘訣でもあるかもしれないですね」（本木さん）と、真剣に質問について考えるお二人とは正反対に「好きにやって」と一言で片付ける樹木さんでした。

さて、イベントも終盤。スペシャルゲストが樹木希林さんだったこともあってか（？）緊張していたという本木さんは、今作について「じわじわっと浸透していく映画だと思いますので、ぜひ、みなさん劇場で」と締めのひとこと。最後に西川監督は作品の見どころについてこう語ってくれました。

「繋がらなければならないのは家族だけではないし、いろんな形の人の繋がり方があるのではないかなということを考えながら作った作品です。ですので、家族とか夫婦とかいうそういう関係性に閉じこもらずにこの作品を受け止めていただけると、自分の周りの世界の見え方も変わってくるかなと思います」（西川監督）

完成後、監督が「豊かな映画ができた」と言った通り、この作品にはさまざまな形の愛が、そして人間の悲喜こもごもが描かれています。1年を通して描かれる登場人物が遂げる変化に、静かな幸福感に包まれる作品です。

【「永い言い訳」トークイベントレポート（全４回）】
（１）妻が死んでも、ちっとも泣けない…そんな夫はクズですか？
（２）私には男を見る目がないの？　樹木希林さんの答えとは？
（３）『永い言い訳』の撮影現場で発覚！本木雅弘の“家事スキル”はハンパない！？
（４）不倫してしまいそう…どうしたら？ ３人が出した答えとは？

■『永い言い訳』公開情報
2016年10月14日（金）　全国ロードショー
原作・脚本・監督：西川美和
出演：本木雅弘・竹原ピストル　藤田健心　白鳥玉季　堀内敬子・池松壮亮　黒木華　山田真歩・深津絵里
挿入歌：手嶌葵『オンブラ・マイ・フ』
配給：アスミック・エース
公式サイト：http://nagai-iiwake.com/