女子の世界を男性にのぞき見してもらいたい
■男の人には「覗き見」してほしい世界
――この映画は観ているとなぜか「自分語り」をしてしまいそうな魔力があるというか、自分のこの時代を思い出して友達と語り合いたくなるような「当事者性」があると感じました。
ああ、そう言っていただけるとうれしいです。
――女性同士で観るとすごく盛り上がると思います。
母と娘とかもいいですね。「お母さんの時はこうだったけど?」とかね。確実に違いますからね、LINEのある世代とは(笑)!
――思春期の娘とその母親(笑)!? ただ、女の子が思春期に心に持つ闇は、普遍的なテーマだと思います。それは監督ご自身の中にもあったものですか?
まあ、私は暗い17歳だったので、まさかこんなキラキラとした青春が世の中にあったとはと、映画やドラマで知る訳ですけども(笑)。自分自身も非常に自分勝手でもろくて儚くて。でもこう自分のエネルギーがどこに向かっていいのか分からない、死と背中合わせの時代っていうか、それこそが私は青春だと思っていたので。
――これは男性には謎の世界かも…。
でも男の人にも見てもらいたいですけどね、「覗き見」として。自分の娘のことも思いながら、女子の世界のこととか、女子がどういうことを考えているかっていうことも含めて、感じてもらいたいですね。きっと覗きたくない、開けたくない扉だと思うんですけれど(笑)。
――秘密の花園のようなものですし、ここまで女子高生の生態が描かれている作品は珍しいので、思春期の娘がいるお父さんは見ておいたほうがいいと思います!!
いや、ほんとそうですよね(笑)。
■映画は伝えるというコミュニケーションツール
――「こんな人に観て欲しい」ということは考えて作っていましたか?
基本的に私は、映画は伝えるというコミュニケーションだと思っているので、自分自身がこういう映画が作りたいというのはもちろんあるんですけど、これを「見せる」ということは最終形として目指して作っています。
だから、さじ加減ですかね。100人中100人に分からせるつもりはもちろんないですけれども、100人中ひとりも分からないっていう物も作ろうとは思っていないんですね。その伝わり方や感じ方はそれぞれに違っていいと思うんですが。何かがちゃんと伝わって、次の日、なんかちょっと違う自分に出会えたりするといいなあと思いながら作っていますね。映画を観た時は自分自身がいつもそうなので。
――映画を観るたびに、自分の中に何かを見つけるということでしょうか?
自分の中の新しい扉が開くというか、何かが芽生えてしまうというか。それは良きにしろ悪しきにしろで、生きづらくなるパターンもありますけれども(笑)。こういう芽を見てしまったとか、こういう扉を開けてしまったとか、何かしら違う自分と出会わせてくれているし。もっと言ってしまうと私は自分が今、映画に生かされていると思っていますし、そういう意味では将来、そんな存在になれる映画を作れるように生きられたらいいなと思っていますね。
――ちなみにこの映画は100人中何人ぐらい分かってくれそうですか?
いやー、実はこの映画は最初、東映さんは140館しかかけないって言ってたんですね。だからそのつもりでやってたんですけど、いつの間にか200館になっていて。100人中50人以上は分からないと200館で公開する規模にはならないと思うんですけど…どうなんでしょう?(笑)
――担当さんが苦笑しちゃっています(笑)! ただ、ラストシーンに関しては、捉え方によってまったく違うものになりそうですね。
そうですね、ハッピーエンドでもあるし、バッドエンドでもあるので。それはもう観ている人が決めてくださればいいなと思っているんですけれど、どういう感覚で見ているかによりますかね。なので、あの最後のカットはちょっと(演出を)工夫をしているんですよね。
それは「終わりかどうかは分からない」という意味で。終わりだと思う方もいれば、終わってないな、ずっと続くんだ、この繰り返しなんだなと思う方もいれば、っていうつもりで作りました。
■『少女』公開情報
2016年10月8日 全国ロードショー
監督:三島有紀子
脚本:松井香奈/三島有紀子
原作:湊かなえ『少女』(双葉文庫)
出演:本田翼 山本美月 真剣佑 佐藤玲 児嶋一哉 菅原大吉 川上麻衣子 銀粉蝶 白川和子/稲垣吾郎
音楽:平本正宏
主題歌:『闇に目を凝らせば』GLIM SPANKY
公式サイト:www.shoujo.jp