女子の友だち関係って恋愛に近い
2016.10.07 Fri
いよいよ明日(10/8)公開の映画『少女』。女子高生の心の闇を描いた本作を撮影するにあたり、女子高生たちと話した三島有紀子監督が感じたのは、彼女たちの「もろさ」でした。
■演劇に打ち込んだ女子高生時代
――三島監督ご自身はどんな高校生で、何をされていましたか?
私はバスケ部と文芸部というちょっと変わった掛け持ちの仕方で。まあ、撮影現場は体育会系なので今と変わらないですけれど(笑)。バスケやりながら、文芸部で脚本や小説を書いて文集に載せたりしていました。自分の名前で出すのは恥ずかしいのでペンネームでしたけど(笑)。
――ではその頃からずっと物語を作るんだと思っておられたのですね。
そうですね。うちの高校はちょっと変わっていて、文化祭はみんなで演劇を作るんですよ。サッカー部の人も陸上部の人もハンドボール部の人もアメフト部の人もみんな演劇を作るみたいなちょっと変わった豊中高校という学校で、3月から10月ぐらいまでかけて毎年演劇を作るということをしていて。
だから私は演劇部じゃないのに、毎年演劇を作ってたんですよね。まあそれにちょっと燃えていたというか。通知票には「三島さんは授業中、授業を聞かないで脚本ばかり書いていて、その時がいちばんキラキラとしていましたね」ってやさしく書いてあったけど、実は怒られてるっていう(笑)。そんな感じでしたよ。
――高校の頃から打ち込めるものがあったとはうらやましいです!
その時は映画監督になれるかどうかも分からないですしね。とにかく、大学に入ったらバイトをして映画を作るんだって思いで、その時どういう映画を作りたいかっていうのをずっと脚本書いたりしてたんで。大学では機材が充実してた映研があったんでそこに入って、バイトしては撮り、バイトしては撮りで。
――ずっと映像を撮り続けていたと。その後はNHKに入社されるんですよね?
そうですね。その時にお金がかかりそうな企画があって、これはちょっと普通のバイトしてたら無理だな、どうしたらいいもんかと思った時に、なんかこう、テレビ局とかに企画を持ってったらお金出してくれるんじゃないかと思って(笑)。
――すごい行動力!
で、NHKに企画を持っていったんですけど、当然アポも取ってないんで断られ、そうだよな~ってすごすご帰ろうとしてたら「何しに来たんや?」って不思議なおじさんに声をかけられて。で、NHKの喫茶店で話を聞いてくれて、「面白い! でもNHKで個人にお金を出して撮ることはないから、来年受けたらどうや?」って言われたんですよね。
あっ、就職すると給料もらいながら撮れるんだ! と思って「受けます!」って。就職なんて考えてなかったけど、そこから時事問題なんかを勉強し始めて(笑)。それでNHKに入ってドキュメンタリーを10年作ってましたけど、まあやっぱり映画を撮りたいって思いがあったんで。
■今の女子高生の「もろさ」
――そのNHKで学んだものに「なぜ今なのかを必ず問え」というものがあるとおっしゃっていましたが。
ジャーナリズムという考え方だったので、なぜ今これを放送するのかというのを企画会議で必ず問われるんですよね。で、自分も映画を作る時に毎回、「自分がなぜ今これを作ろうと考えているのか」ということは、別に誰から言われる訳ではないですけれど、考えるようにはなりました。自然とそうなるようになったのは、まあNHKを経たからなのかなとは思いますね。
――ちなみにこの『少女』という映画は、なぜ今なんですか?
この映画を作るにあたって、女子高生たちにいろいろ話を聞いたんですけど、またこれは聞く前も感じていたことなんですけど…、すごく「もろい」というか。
――「もろい」とは?
コミュニケーションが、ですね。友情関係が本当にもろいなと。傷付かないように、友情はいつか壊れるという前提のもと生きているような所があって。それが「自分は友達なんかいりません!」とかそういう覚悟とかではなくて、「いや、なんか裏切られるかもしれないよね」というのがどこかに何%かあるというか。
――あらかじめ諦めている?
そうですね。自分が17歳の時って、絶対に裏切られないと思っていたのに裏切られた時ショックみたいな、そういう単純な感じだったんですけど(笑)。話を聞いていると「いや、だって何があるか分からないし」という感じの話をよく聞くんですよね。そのもろい中で果たして信じられるのか、あるいは信じられないのか。そういうことを見つめる映画を観てもらいたいなという思いがあって。
――なるほど。映画の中でも敦子が親友の由紀のことを信じられなくなる場面もありますが、そこは今、監督がおっしゃった「もろい」部分がキーになってる感じですか?
そうですね。あと、敦子が自分に自信がある時だったら、全然思わなかったと思うんですよね。自信がなくて自分がどん底だと思っている時に、自分の一番の恥部をさらけ出される出来事があってしまうと…。
時期ですよね、きっと。非常にもろいというか、すぐ疑ってしまうような時期。まあ繊細な時期だからこそというのもあるんですけどね。あの時の女子の友達関係って、恋愛に近いと思うので。
【三島有紀子監督インタビュー(全4回)】
(1)山本美月が転落する姿を見たかった
(2)イケメンに興味がない監督が稲垣吾郎、真剣佑を起用した理由
(3)女子の友だち関係って恋愛に近い
(4)女子の世界を男性にのぞき見してもらいたい
■『少女』公開情報
2016年10月8日 全国ロードショー
監督:三島有紀子
脚本:松井香奈/三島有紀子
原作:湊かなえ『少女』(双葉文庫)
出演:本田翼 山本美月 真剣佑 佐藤玲 児嶋一哉 菅原大吉 川上麻衣子 銀粉蝶 白川和子/稲垣吾郎
音楽:平本正宏
主題歌:『闇に目を凝らせば』GLIM SPANKY
公式サイト:www.shoujo.jp
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