山本美月が転落する姿を見たかった 『少女』三島有紀子監督インタビュー

th_mishimakantoku01.jpg

100万部突破の湊かなえの原作を映画化した『少女』は、いよいよ今週末10/8(土)公開。17歳という多感な年頃の少女たちが心に抱える闇を繊細に描いたのは『しあわせのパン』(出演:原田知世、大泉洋)、『ぶどうのなみだ』(出演:大泉洋、染谷将太)、『繕い裁つ人』(出演:中谷美紀)などで知られる三島有紀子監督。

冒頭、三島監督から「【Filmers】読んでますよ!」と言っていただき、うれしさに浮足立って始まったインタビュー。第1回は、主人公のふたりを演じた本田翼さんと山本美月さんについて伺います。

 

th_「少女」メインスチール.jpg

 

■本田翼は“なまいきシャルロット”

 

――多感な17歳という女の子を描くにあたってのご尽力を伺いたいのですが、まず、桜井由紀役の本田翼さんとは、役作りにあたってどんなお話をされましたか?

由紀は文学少女で、自分の思っていることはあまり顔に出さず、感情を表現「しない」女の子だと思っていたら実は「できない」女の子なんです。でもそういう自分を受け入れるしかないし、「まあ、こういうものでしょ?」という諦観を持ってる人ですね。

 

ですから、本田さんにはいつも不機嫌でいてくれと伝えました。もともと本田さん自身も、いつもニコニコしているタイプではないんです。なので、私は現場で“なまいきシャルロット”と呼んでたんですけど(笑)。

 

――10代のシャルロット・ゲンズブールが主演した映画『なまいきシャルロット』ですね!

はい。基本のラインの表情としては、生意気な感じの顔でずっといてくれればいいって。で、由紀はぜったいに無理して愛想笑いをするタイプじゃないから、話を聞きながらなんとなく笑顔にはならない。お芝居の中でも、本当に笑いたいという気持ちになった時だけ笑ってくれと言ったんですよ。

あとは映画上の強弱を付けるために、思いっきり笑う時はいつもどうやって笑うのか聞いたら「大口を開けて笑う」って言ったんで。だったら、本当に笑いたい気持ちになった時は、いつもやっているように口を開けて笑ってもらいたいと言いました。

 

――では由紀が笑っているところは、本田翼さんの本当の笑顔なんですね!

そうですね。相手の芝居を受けてそういう気持ちになった時は、ちゃんと笑ってくれています。

 

 

■山本美月が“転落”する姿を見たかった!?

 

――草野敦子役の山本美月さんは、素直で彼女そのものという雰囲気でした。役作りはどうご指導されましたか?

山本さんは『桐島、部活やめるってよ』のイメージがとても強くて、なんでも揃っているというか、美しくて勉強もできてという。実際、本人もそのままの人なので、ある種、人生の勝ち組ですよね。

敦子という人も剣道では全国大会で優勝するほどの腕前で、自分が由紀を守るんだと思うぐらいの人ですから、自分に自信があって輝いていた人だと思うんですよ。そういう人が自分の失敗によって転落して、周りに虐げられながらどんどん自信を失って生きづらくなっていくっていうのを、山本美月さんがやったら面白いんじゃないかなと。転落した姿を見たかったというか(笑)。

 

th_サブ1_1103_1106.jpg

 

――ちょっと落としてみようと(笑)。輝いている時と自信を失った時の落差がすごかったです。

敦子が転落するということは、山本さんみたいな人が転落するっていうことなんだろうと思ったんですよね。勝ち組の人が転落していくことの哀しさ、苦しさを表現するには、パッと見た瞬間に人生の勝者と分かる山本美月さんがピッタリだと思いました。

 

あと、こういう「女子高生の闇」を描く時には、本当にそういうことを思ってそうな人よりも、非常にキラキラと輝いていて闇なんて持っていなくて、それに悩むことなんてこの人きっとないよねって人が、その闇に向かっていく、堕ちていく…っていうふうに見せた方が、寄り添って見ることができる人が増えるんじゃないかなと思ったのもあります。

 

【三島有紀子監督インタビュー(全4回)】
(1)山本美月が転落する姿を見たかった
(2)イケメンに興味がない監督が稲垣吾郎、真剣佑を起用した理由
(3)女子の友だち関係って恋愛に近い
(4)女子の世界を男性にのぞき見してもらいたい

 

 

■『少女』公開情報
2016年10月8日 全国ロードショー
監督:三島有紀子
脚本:松井香奈/三島有紀子
原作:湊かなえ『少女』(双葉文庫)
出演:本田翼 山本美月 真剣佑 佐藤玲 児嶋一哉 菅原大吉 川上麻衣子 銀粉蝶 白川和子/稲垣吾郎
音楽:平本正宏
主題歌:『闇に目を凝らせば』GLIM SPANKY
公式サイト:www.shoujo.jp

Related Post

インタビュー

2016.10.08Sat

女子の世界を男性にのぞき見してもらいたい

  ■男の人には「覗き見」してほしい世界 ――この映画は観ているとなぜか「自分語り」をしてしまいそうな魔力があるというか、自分のこの時代を思い出して友達と語り合いたくなるような「当事者性」があると感じました。 ああ、...
インタビュー

2016.10.07Fri

女子の友だち関係って恋愛に近い

いよいよ明日(10/8)公開の映画『少女』。女子高生の心の闇を描いた本作を撮影するにあたり、女子高生たちと話した三島有紀子監督が感じたのは、彼女たちの「もろさ」でした。     ■演...
インタビュー

2016.10.06Thu

イケメンに興味がない監督が稲垣吾郎、真剣佑を起用した理由 

女子高生の心の闇を描く『少女』には、監督のイチオシの(!?)3人のイケメン俳優が競演しています。今回は、その3人を起用した理由、演技について三島有紀子監督にお話を伺いました。     ...
イベント

2016.08.31Wed

原作:湊かなえ 主演:本田翼・山本美月『少女』試写会プレゼントのお知らせ

10/8(土)公開の話題作『少女』の試写会にFILMERS読者5組10名様をご招待します!     【試写会・概要】 日時:9/12(月)18:00開場/18:30...