「監督には誰でもなれる。ただ、なり続けるのが難しいんだ」俳優・映画編集者 原田遊人さんが父・原田眞人監督から受けた教え
俳優として…編集者として…原田組の一員として…様々な角度からお話しを伺ってきたインタビュー。最後の章では、今後、遊人さんが思い描く目標についてお聞きしました!
■卒業文集の将来の夢には「監督」の文字
―――今後の目標・夢は?
そうですね…実は、小学校の卒業文集には、将来の夢は「監督」って書いてあるんですよ。
―――おぉ!それは楽しみですね!
でも目標の監督は、スピルバーグとかルーカスとか書いていて…SFかよって思いました。
―――(笑)そこは小学生っぽい感じがしますね。でも実際、監督をすることへの想いは?
う~ん、難しいですね。難しいというのは、いまの時代、わりと「監督」ってやろうと思えばすぐできちゃうじゃないですか。これは父から教わったことの1つでもあるんですが、“監督には誰でもなれる。ただ、なり続けるのが難しいんだ”と。その言葉を聞いて、迂闊に、気軽にやってみようとはならないんですよね。
例えば知り合いの役者仲間が自主制作で映画を作ってたりもするんですけど、正直、なかなかクオリティが…というのも多いんです。そうすると絶対行き詰って、“ちょっと遊人、編集手伝って”って言われることも多いんですけど(笑)。
―――頼りにされちゃうんですね
去年、おととしだけで、10本ぐらいは面倒見ましたよ。その様子を見ていると、最初から編集を雇っていれば、あとからそんなに困ることはないと思うんですけど、みんな自分でできると思うんでしょうね。なので、僕が監督をするときは、編集は編集として誰かにお願いしようと思っています。
■撮るならちゃんとした“映画”作品を!
―――監督として映画を作るときにはしっかり準備してからということなんですね
はい。今の時代、スマホで撮影したものでも、作品として簡単にネットにアップできるようになりましたけど、クオリティが高くてもそれは映画と言えるのか?いま、映画というものの定義が揺らぎつつあると思うんです。僕はやっぱり、映画は劇場で上映してこそのものだと思うんですけど。その辺りを考えると、やっぱりやるならしっかりしたものをと思います。特に僕の場合、近くには監督であり、批評家でもある父がいますので。ものすごく怖いです。ハードルも上がっているので。
―――間違いなく、日本一映画に厳しい身内ですね
「原田」という名前に関しては誇りでもありますが、それだけ大きいですからね。一時は芸名を遊人だけにしていたこともあります。でも『クライマーズ・ハイ』あたりから、“まあ生まれて死ぬまで原田ということは変わらないしなあ“と思って。なら別にいいか。と今では良い距離感でいますが。ただ、うちの監督と仕事をやればやるほど、俺もまだまだだなと思うことも多いです。僕が監督と同じことをやっても二番煎じになっちゃうので、映画を撮るなら、どこで自分のオリジナリティを出すかということも大事になってきます。
―――そういうところもハードルの高さはありますよね。いつ頃までにという目標はありますか?
そうですね…これまでは、父が28歳で映画監督デビューしたので、それまでには僕も、と思ってたんです。でも、自分が30歳を超えてからは、どうせならちゃんとプランを練って、配給が付くぐらいのモノを練ってからやりたいなと思っています。
―――そのときは、遊人さんが、監督であり続ける覚悟を持ったときなんですね
そうですね。でも結構な覚悟が必要ですね(笑)。19歳のときに、役者で一生食べていくと決めた気持ちもありますし、いろいろ複雑なところはあります。でも、“役者”で思い出しましたが、自分が監督として撮るときには、ぜひ親父を役者として使いたいですね。ラストサムライであれだけできたんだから、大丈夫だろうと(笑)。
―――それは楽しみですね
監督もラストサムライをやってから、“俺でもできたんだからお前らもできるだろ”と役者たちに言ってますよ(笑)。まあ、でもあの経験で、役者も大変なんだなというのは思ったそうですが。
―――具体的に監督としての作品の構想は?
企画やアイデアはあります。監督に言ったら面白そうだなと言われたのもあって、本を書き始めているものもあります。ただ、それが監督好みな作品であっても、自分がやりたいものなのか、自問自答しながらまた一から考えてと、本当に練っている感じです。考えれば考えるほど難しいですね(笑)。
■演技を磨き続ける
―――いいですね。将来の監督としての遊人さんの姿を楽しみにしつつ、近々での目標は?
そうですね。編集の仕事はもともと、演技の研究で始めたことなので、やっぱり演技をもっと磨いていきたいですね。編集で食べていけるようになったのは嬉しいんですが、その分、演技をする時間がなくなったというのはちょっと皮肉ですよね。編集の仕事ももちろん楽しいからいいんですけど…天職かなとも思いますし、でも演技もやっぱりもっと深めていきたいです。
―――あらためて、向上心がすごいですね
せっかく役者として生きているからには、磨きを掛けて…きれいな女優とも仲良くなりたいですし(笑)。編集の仕事は技術を覚えれば、あとは経験を積めば良いところがありますが、演技は研究が尽きないですから。そういった意味で、編集をやり続けることも、いろんな役者の演技を隅々まで見られることで、勉強に繋がると思います。
―――たしかに、そこは遊人さんの特別の強みですね
いまも、原田組が動きだすときに、編集を誰にするかというところで、僕の名前が挙がるのは嬉しいです。カメラの前も後ろも含めて映画作りと思います。そういう点では、一番近々の目標は、マイ編集スタジオとか持ちたいですね(笑)。
終始、明るくインタビューに答えてくださった遊人さん。インタビュー後には、原田眞人作品の貴重な資料(前回のインタビューで紹介)も見せて頂きました。原田眞人監督は、若い頃、美大に行くなど、絵を研究していたそうで、コンテも見ごたえあるものが多いとお話されていました。父と息子…理想型のひとつを垣間みた思いがしました。「監督であり続けることが難しい」この言葉の意味を常に問いかけている遊人さんが、いつ、どんな作品で監督デビューされるのか!?注目です!
【原田遊人さんインタビュー一覧】
(1)映画界デビューは「小道具」でした 『日本でいちばん長い日』編集 原田遊人さん
(2)松坂桃李さんを盗み撮りしたシーンがあったんです 『日本のいちばん長い日』編集:原田遊人さんインタビュー
(3)今夜、地上波初放送『日本のいちばん長い日』知られざる編集の舞台裏! 貴重な絵コンテも公開!
(4・最終回)「監督には誰でもなれる。ただ、なり続けるのが難しいんだ」
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(c)2015『日本のいちばん長い日』製作委員会
■原田遊人さん情報
株式会社つばさプロジェクト
http://www.tsubasa-project.co.jp/index.html
原田遊人さんのプロフィールページ