"チュルチュルしやがってよ!"佐藤浩市が怒って出て行ったワケとは?

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「チュルチュルしやがってよ!」とは、撮影現場で実際に、佐藤浩市さん演じる三上が吐いたひとことです。すでに映画をご覧になった方は「え?そんなセリフあったっけ?」とお思いでしょう。もちろん、本編には使われていませんが…なぜそんな一言が出てきたのか?

主演の佐藤浩市さんをはじめ、三浦友和さん、奥田瑛二さん、椎名桔平さん、滝藤賢一さんなど、実力派俳優がずらりと顔を揃えた映画『64-ロクヨン-前編/後編』。役作りに関しては、それぞれが独自のやり方をお持ちだったようで…。

 

 

 

■滝藤さんは映画の中で自分がどう居たらいいかよく分かっている

――「64」の重要な部分でもある「警察内での権力構図」を描く上で、どのような演出をされたのでしょうか? 例えば、警務部長・赤間役の滝藤賢一さんに対しては、いかがですか?

滝藤さんは前にもやったことがあるので、滝藤さんという俳優の在り方は分かっているつもりではあったんですけど。滝藤さんは、台本が真っ黒なんですよ。

 

 

――どんなことが書かれているんですか?

それは「無名塾」(編集部注:俳優 仲代達矢さんが主宰する俳優養成所。98〜07まで滝藤さんも在籍)で培われたことなのかもしれないですけど、メモ書きがすごいんですよ。思いついたことを全部、もう何が書いてあるのか分からないようなことまで書いてある(笑)。彼はやっぱりそういう、すごく事前に組み立てていくんですよね、あるイメージを。現場に来るとその化学反応は抜群なものがあるというか、映画の中で自分がどう居たらいいかよく分かっている役者さんなんで、そこは安心してお預けしたところはありますけど。

 

 

――観ていると一瞬、滝藤さんが師匠の仲代達矢さんに見えるような気がした瞬間もありました。

ハハハ、そうですか!? 見えますか(笑)。そういえば僕は以前、滝藤さんと仲代さんが共演したのを撮っているんですけど、確かにその時の師弟対決はなかなか鬼気迫るものがありましたねえ。

 

 

 

■それぞれのやり方で向き合った豪華俳優陣の役作りとは

――ほかにすごく役を作って来られた印象的な役者さんは?

それは(県警本部長・辻内を演じた)椎名桔平さんですね! 桔平さんはもう衣装合わせの時に「監督、途中で“チュルチュル”していいですか?」って…。

 

 

――チュルチュル!?

「健康野菜ジュースをチュルチュルしたいんですよ」って(笑)。

 

 

――ああ、飲んでいましたね! 部下の必死の訴えをまったく聞いていない、嫌ぁ〜なキャリア官僚の感じが出ていましたよね

そしてキャリア的には健康にも気を遣っているという(笑)。テストの時も面白かったですよ。浩市さんが怒って出て行くシーンなんですけど、「チュルチュルしやがってよ!」なんて言いながら出て行ったりして(笑)。

 

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――現場のいい雰囲気が伝わってくるようなエピソードですね! 刑事部長・荒木田役の奥田瑛二さんは「刑事部長といえば県警のカリスマで、経験したことのない役だったので、どうやったら良いのだろう」とすごく悩まれたそうですが、現場でそういうやり取りはあったのでしょうか?

僕は立ち会ってないんですけど、奥田さんから撮影に入る前に「(本物の)刑事部長に会わせて欲しい」という要望があったそうで…こちらで探して…確か、お二人で下北沢で飲んだそうですよ。その時に色々聞いたみたいですよ。人柄も含めてそんなことをリサーチして挑まれていましたね。

 

 

――なるほど、あの荒木田部長はその事前取材がベースになっているんですね。奥田さんとお仕事をするのは初めてですか?

俳優部としては初めてですけど、監督同士としてはよく海外の映画祭で会いますよ。奥田さんもけっこう監督をやっているので。

 

 

――ああなるほど、そういうご関係ですか。あと、三上(佐藤浩市)にとって、かつての上司で捜査一課長・松岡役の三浦友和さんは「三上との関係性がお客さんに分かるだろうか」と、そこだけ注意したとおっしゃっていたのですが、監督に対してそんな質問もありましたか?

そういうこともありました。友和さんとも現場に入る前に2人で会っていろいろな話をして、そこで意思疎通を図ってから入ったんで。

 

 

――どんなやり取りがあったんですか?

うん、松岡という人物について、原作と脚本との関係というか、それに関していろいろ話しましたね。三浦さんが面白いのは、現場に早く来るんですよ。ふらっと来てセットを見て確認するわけなんですね。僕らや助監督が呼ぶ前に来るんです。場所の雰囲気をまず知って、そこでの自分の在り方を想像されているんでしょうね。

 

 

最終回の次回は、若手俳優・瑛太さんの意外な魅力について、そして作品の見どころについて語っていただきます!

 

■『64(ロクヨン)』公開情報

*前編公開:2016年5月7日

*後編公開:2016年6月11日

原作:横山秀夫『64(ロクヨン)』(文春文庫刊)

監督:瀬々敬久

出演:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、緒形直人、窪田正孝、坂口健太郎、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、瑛太、永瀬正敏、三浦友和

主題歌:小田和正「風は止んだ」(アリオラジャパン)

公式サイト:http://64-movie.jp/

 

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