『64』原作と異なるエンディングにしたワケ 瀬々敬久監督インタビュー

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たった7日間しかなかった昭和64年。その間に起きた少女誘拐殺人事件は未解決のまま時は過ぎ、時効まではあと1年に迫る――

ミステリーの名手・横山秀夫の原作を日本映画会最高峰の豪華キャストで映画化した『64-ロクヨン-/前編・後編』。メガホンを取ったのは、『ヘヴンズ ストーリー』で第61回ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞し世界にその名を轟かせた瀬々敬久監督。前編・後編合わせて4時間におよぶ濃厚な人間ドラマが詰め込まれた超大作に仕上がっている。

今回Filmersでは瀬々監督から、重厚な原作ゆえのご苦労や豪華俳優陣の役作りについて、お話を伺いました。

 

 

■たった7日間の出来事を引きずる様々な人間模様

――とにかくキャストが豪華で、東宝の今後の名作ライブラリーに残っていくような作品になっていると思いますが…。まずは今回、監督を引き受けられた経緯をお聞かせてください。

まあ、ある日ププッと電話が鳴って(笑)。企画のプロデューサーをやっている越智さんという方とお会いして、こういう原作があるんだけどというお話で。

 

 

――その時には原作の『64』はお読みになっていたのでしょうか?

ええ、出た時にすぐ読んでいましたね。

 

 

――きっと映画監督目線で読まれたのだと思いますが…。

いや、僕はミステリー好きなので、読書として普通に読んでいましたよ。

 

 

――では声がかかった時点でもう即決という感じだったのでしょうか?

ええ、そうですね。

 

 

――主演の佐藤浩市さんは原作をお読みになって「俺が演じるなら」とお考えになったそうですが、一読者として読んで、その後「俺も撮りたい」とは思わないものですか?

うん。こんな大作で声がかかるとは思わなかったですから(笑)。

 

 

――では一読者として、この『64』にはどのように魅力を感じましたか?

それはやっぱり、主人公が刑事ではない警務部の広報官であるというのがすごく新しいわけですよね。そして、昭和64年のわずか7日間の間に誘拐事件があって、そのことを今でもずっと思い続けている被害者の父がいて、喉に引っかかった骨のように今も引きずっている刑事を含めて、いろんな人たちがいる。そういう人間模様の中でまた、この事件が繰り広げられていくというのがすごく面白いなと思いますね。

 

 

 

■“行動する三上”でいきたい

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――原作は上下巻と膨大な量ですが、映画化に際して、上映時間は決まっていたのですか?

ええ、僕が入った時はもう前編・後編でやると決まっていて、脚本の久松真一さんがプロットを上げている状況でした。まだ脚本には入ってなかったですけど。

 

 

――脚本化してその前編・後編に収めていく過程の中で、いちばんご苦労されたところというか、改訂を加えたところはどこですか?

やっぱりそれは後編の終わりのところですよね。そこがいちばん難儀したっていうか。

 

 

――あの(原作と異なる)終わり方は、久松さんから出てきたアイデアですか? それとも瀬々さんが映像化にあたってここだけは変えたいというところだったんですか?

それは僕からで、「行動する三上でやりたい」ということを言ったんです。

 

 

――なるほど、広報官でありながら事件解決に向けて自分で行動を起こしていくという。それを聞かれた久松さんはどんな反応でしたか?

久松さんは横山さんの原作をずっとやられている方なので、横山節というか横山イズムをやっぱりすごく理解されているわけですよ。だからそういう意味ではちょっと冒険だなと思われたのではないでしょうか。

 

 

――その結果というか…横山さんは映画の印象として「作家としてはちょっと悔しい」とおっしゃっていたようですね。

(悔しいというのは)それは後編の終わり方のことじゃなくて、総体の感触じゃないでしょうか。 超えたとは思っていないと思いますよ、横山さんもいつも仰っているじゃないですか、「(映画に)負けたとは思っていません」と。

 

 

次回はキャストとともに作り上げたシーンの裏話。原作の横山さんからは、ただひとつだけ出された注文があったとか…!? お楽しみに!

 

 

■『64(ロクヨン)』公開情報

*前編公開:2016年5月7日

*後編公開:2016年6月11日

原作:横山秀夫『64(ロクヨン)』(文春文庫刊)

監督:瀬々敬久

出演:佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、夏川結衣、緒形直人、窪田正孝、坂口健太郎、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、吉岡秀隆、瑛太、永瀬正敏、三浦友和

主題歌:小田和正「風は止んだ」(アリオラジャパン)

公式サイト:http://64-movie.jp/

 

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