衝撃のラスト12分間...試写会場で何が起こったか?ゴーストライター騒動のその後を追ったドキュメンタリー映画『FAKE』試写会レポート
「ラスト12分間の内容は、これからご覧になるお客さんのために明かさないようお願いします」。5月12日、渋谷。映画『FAKE』試写会最終日。180人以上収容の会場はほぼ満席となった。客席にはテレビでおなじみの社会学者や編集長、作家、批評家が顔を揃え作品の注目度の高さを物語っている。
同作は2014年2月「週刊文春」の記事に端を発した、いわゆる『ゴーストライター騒動』のその後を…佐村河内守氏に密着する形で描いたドキュメンタリー映画だ。監督はオウム真理教信者たちの日常を追ったドキュメンタリー映画『A』で知られる森達也さん。
13:00。配給会社のスタッフがスクリーンの前に立ち、冒頭の注意を呼びかける。目線付けは完璧だ。作り物のフィクションとは対極にあるはずのドキュメンタリーに衝撃のラストシーンがある。観客は、未だ観ぬラストシーンを予想してやろうと…前のめりになってスクリーンと対峙し身構える。ところが、映画がはじまると、ラストシーンへの興味が端に置かれ、あの当時、自分が感じていた「真実」と目の前に展開する佐村河内氏の日常から感じる「事実」とを照らし合わせる作業で忙しくなる。はたして自分が「真実」だと思っていたモノは何だったのだろうか…と。
2014年、年末特番の放送に向けて自宅を訪れるテレビ局員に対して冷静に誤解を解こうとする佐村河内氏。そのやりとりに時おり、客席から笑いが起きる。それも一度や二度ではない。よくできた上質なコントを観ているように会場内が笑いで包まれるのだ。
そうして…めまぐるしく、でも…心地よく約100分のドキュメンタリーを見届けた観客に対して、いよいよラスト12分間、森監督から最後のお題が提示される。すると、さきほどまで笑いに包まれていたのがウソのように森監督と佐村河内氏とのやりとりを見守る空気が漂いはじめる。さらに最後の最後…前のめりな観客をさらに前のめりにするやりとりがあったところで…あっけなくエンドロールの黒い画面に切り替わってしまう。「そうなのかぁ…」観客は途端に気がゆるみ客席にもたれかかる。
そして記者は気がついた。静かにエンドロールが流れるなか、すすり泣く声が聞こえるのだ。それもひとりではない、記者が感じただけでも3人の観客が泣いていた。109分間を通して繰り返される「問い」と、ラスト12分間に示された衝撃に心打たれたのだろうか。これが記者が試写会場で観た「事実」だ。
ドキュメンタリー映画「FAKE」は6月4日(土)から公開される。おそらく試写会場で起きたことと同じ光景が観られる映画館もあるはずだ。みなさんは、森監督と佐村河内氏から提示される問いに何を感じるだろうか。
【 ↓ FAKE劇場予告編 ↓ 】