ゆとり世代に感じる「諦めの空気」『無伴奏』俳優 池松壮亮さん

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1990年生まれの池松さん曰く『超ゆとり世代』と称する同世代に感じる「諦めの空気」とはどこからくるのか? また、そんな世代に向けて『無伴奏』を観て欲しいと願う理由は何か? お話を伺いました。

 

 

 

■お客さんの人生と映画の人生がリンクする瞬間

――登場人物がたくさん煙草を吸う映画ですね。響子は背伸びしているようで煙草の持ち方もぎこちなく、いろいろ注目してしまいました。渉は左手で持つ派なのかなとか。

それは僕が左だからです(笑)。

 

 

――自然になんですね(笑)。あれだけ煙草を吸う映画も最近なかなかないですが、でも監督の作る色の中でマッチの灯りがすごく目に入ってきて印象的でした。

ずっと映画やってたり、今回も矢崎さんの作品をやったりして思うことは、人ってああいうことでフラッシュバックしたりするんですよね。煙の色とか。光の中に煙が入った瞬間とかに、お客さんにとっての人生と映画の人生がリンクしたりするんですよね。なんか面白いなあと思って。今回も、桃缶とか煙草とか喫茶店とかマッチとか、いろんなワードを入れてるじゃないですか。それってそういうことなんじゃないかと思ってますけどね。

 

 

■「選んだ」という意味で、諦めているようで諦めていない渉が見えれば…

――もし渉と同じ時代に生きてたら、友達になれると思いますか?

いや、別になろうとは思わないですね(笑)。あえて切り離して考えるとすれば。やっぱり自分との間に最初の段階で溝があればあるほど苦労するんですよ。そこから共通項を探して、自分に引っ張りこんでくるという作業から始まるので。今回は溝がでかかったというか、自分には自殺願望もありませんし。

 

 

――たしかに池松さん自身は生命力があり不屈の意思があるイメージがあり、渉とのギャップがあるにも関わらず、違和感なく演じておられました。

うーん、ただそれに乗るとすると、自分で生きることを「選んだ」という意味では、諦めているようで実はあまりにも諦めていないさまが見えればなあとはちょっと思いましたね。時代と合わなかったっていう。

 

 

――意思表示をしたという意味で?

そうです。これは今、僕の周りにも言えて、僕は平成生まれなんですけど、なんかこう「諦めの空気」って流れてるんですよね、昔っから

 

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――世代的に?

そうです。特に僕は超ゆとり世代なので、周りのそういう人たちって諦めてるように見えるんですよね。そうじゃないと生きてこれなかったんでしょうけど。

 

 

――それは人から言われるってことですか? それとも同じ世代を見渡して?

僕が感じることです。世代論とかあんまり好きじゃないけど、でも同じ時代、同じ社会を生きてきた者に対してそう感じるんで。だから、あの時の方がよっぽど苦しかったし狭い世界しかなかったけど、それでも自分たちで何かを掴み取ろうとして…、結果ダメだった者と、それを背負って生きていく響子っていう人が、「明日頑張ろう」に繋がればいいなあと思いはしましたね。

 

 

――なるほど。じゃあこの作品は同世代に観て欲しいというお気持ちはあったんですか?

それは常にあります。自分がやる時に、自分が福岡に置いてきた同級生たちがどう思うかっていうのは必ず考えますね。

 

 

――ちなみに登場人物の中でいちばん好きなのは誰ですか?

それはまあ響子って言わないと(笑)。あのキャラクターは好きですね。色んな物を背負って、背負って背負って…。人の死を背負って人に殺され生かされを繰り返しながら、それでも前を向いて生きていこうとする響子という人が、やっぱり今回の主人公だし、僕もいちばん好きですね。

 

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■『無伴奏』公開情報

2016年3月26日(土)公開

監督:矢崎仁司

原作:小池真理子『無伴奏』(新潮文庫刊、集英社文庫刊)

出演:成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜、松本若菜、酒井波湖、仁村紗和、斉藤とも子、藤田朋子、光石研

公式サイト:http://mubanso.com/