4人の誰も見たことのない顔を描きたかった『ヒーローマニア-生活-』豊島圭介監督

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さびれた地方都市・堂堂市。スラム化した「なごみ商店街」でうつうつとした日々を送るコンビニ店員・中津(東出昌大)。そんな彼が脅威の身体能力を持つ下着泥棒・土志田(窪田正孝)に出会い、「この腐った街のクズたちを掃除しよう!」と“ヒーロー”になることを持ちかけたことで、自警団「吊るし魔」の活動が始まる――。

 

福満しげゆきの漫画『生活【完全版】』を、『花宵道中』(主演:安達祐実)や『ソフトボーイ』(主演:永山絢斗)などで知られる豊島圭介監督が映画化した『ヒーローマニア-生活-』。「日本のアクション映画としては今までにない感じかな!」という豊島監督が、作品への愛着をノリノリで明かしてくれました!

 

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■原作の面白さに、テーマをどこに絞るかで苦悩…

―――2011年から企画が始動とのことですが、脚本に時間をかけたんですね

そうですね。原作は1冊の単行本なんですけど、まあどんな作品でもそうですが全部を映画に起こそうとすると2時間半ぐらいになっちゃってて。

 

 

――物語の長さの問題だったんですか?

つまり「テーマをどこに絞るか」みたいなことです。やっぱり漫画のディテールが面白いので、(登場人物たちが)チームや会社を作っていくくだりとかは「こういうの落としたくないよね~」って、原作ファンでいるとそうなってしまって(笑)。それをエイヤっと落としていく作業と、じゃあ何を残そうかとかいろんな判断をするのに時間がかかって、台本を作るのにたぶん2~3年、もっとかなあ!

 

 

 

■原作の面白さに、テーマをどこに絞るかで苦悩…

――東出昌大さんが初めて“ヘタレ”キャラを披露してくれています

実は主演が決まるまでも紆余曲折があって。

 

 

――そうなんですか!?

でも東出くんの前に特に誰がいたという訳ではないんです。2011年の時点ではまだ出会ってないので「こんな人かな、あんな人かな」って夢想してたんですけど、2年ほど前に台本が見えて来た時に、「今だったらでっくん(東出くん)がいるね」となり、アプローチしたという感じですかね。で、窪田(正孝)くんが来て、(小松)菜奈ちゃんまで来て、鶴太郎さんは拝み倒して出てもらって(笑)。

 

 

―――東出昌大、窪田正孝、小松菜奈、片岡鶴太郎と、最高のキャストが揃いましたね!

ビックリしますよね。「えっ、小松さんまで、いいんですか!?」みたいな感じですよね(笑)

 

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―――特に小松菜奈さんはクールビューティなイメージだったのですが、意外な面白いキャラクターに…。ニヤっと笑うと『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロを髣髴とさせるような異様な雰囲気もありました

本人にも言ったんですけど、小松さんは何も考えてなくても何か深いことを考えているように見えるんで。それが魅力ですよね。

 

 

―――他のみなさんもご本人からはかけ離れたキャラクターに変身していました!

東出くんをはじめ、4人の誰も見たことのない顔を描くっていうのが、キャストに関しては一番のテーマでしたからね。事前にそれぞれの人と個別に顔合わせをしたんですけど、キャラクターの履歴書を渡して、「見たことのない顔が見たいんだ」と、とにかくその話をしましたね。あまりリハーサルはできなかったんですけど、みんなそれを心に留めて準備してきてくれて、ドンとやったっていう感じですかね。

 

 

■「フィクション度」を上げることに注力!

―――じゃあみなさんあの面白いキャラクター達を各自で役作りをしてきて、と

たぶんそうですね。東出くんなんかもいきなり走るシーンで、なんかこうバタバタバタと(笑)。なんであんなひどい走り方するんだろうと思ったら、「いや、監督が考えて来いって言ったからですよ!」って言われて、ああ、そうだったと(笑)。例えば『デトロイト・メタル・シティ』の時にマツケンがおかしな走り方をするんですよね。ああ、なるほど、「フィクション度」を上げるってこういうことかと。

 

 

―――フィクション度を上げるとは?

架空の都市の話だったんで、とにかくフィクション度を上げたかったんですよ。漫画度が高いものなので、どれだけ「これはフィクションだ」っていうことを作れるかがテーマで。

こんな青いユニフォームを着る“吊るし魔”なんてありえないとか。ホントはたぶん黒ずくめですよね。ほかにも、カナヅチで叩いて人が骨折もしないとか。誰もコメディの芝居をしているつもりはないと思うんですけど、キャラクターのあり方とか。

あとフィクション度に関しては、冒頭に出てくる街「なごみ商店街」に限られた予算の全勢力をつぎ込んだという感じです。リアルな街で始まっちゃうといろんなアクションや設定が成立しなくなるんで、そういうことに注力しましたね。

 

 

―――静岡で撮影されたそうですが、「なごみ商店街」は“裏の”静岡のようなダークな雰囲気のある商店街になっていました!

ああいうカオスなフィクションの街を作るのがけっこう好きで、何度かやったことはあるんですけど、今回はあんな、なごみ商店街の看板の「な」の文字を落として「ごみ商店街」みたいな雰囲気にホントにしたくて…。でも日をまたいで撮ったので、「な」を落としたままだと自治体から「ごみ商店街のまま放置しないでくれ」と苦情が出ましたね(苦笑)。それで「な」を戻したりしました(笑)。

 

細かいところまでフィクションであることにこだわった『ヒーローマニア-生活-』。次回のインタビューでは“ヒーロー”たちのちょっと変わったキャラクターについて伺います。→(2)は近日配信!

 

■『ヒーローマニア-生活-』公開情報
2016年5月7日(土)公開
監督:豊島圭介
脚本:継田 淳
原作:福満しげゆき「生活【完全版】」(モーニングKCDX/講談社刊)
出演:東出昌大 窪田正孝 小松菜奈
           村上和成 黒田大輔 松岡恵望子
        山崎静代(南海キャンディーズ) 船越英一郎 片岡鶴太郎
制作:ジャンゴフィルム
配給:東映・日活共同配給

公式サイト:http://heromania.jp