間違えない恋愛ってあるの? 『ピースオブケイク』田口トモロヲ監督(4/4)
実は男も含めて、この世をもがきながら生きる皆に当てはまる物語だった『ピースオブケイク』。そこで最後のインタビューでは、田口監督に、この入り組んだ現代の ”恋愛ダンジョン” をどう生き抜いていけばいいか、ほぼ恋愛相談のつもりでお聞きしました!
■昔の方が恋愛においては混とんとしていた
―――監督はこの作品で描かれている「20代の恋愛」に対してギャップは感じましたか?
まあ僕の20代の頃とは時代が違うので、そこはジェネレーションギャップみたいなことは感じました。
―――どんなところに違いを感じました?
自分の頃はもっと暗かったかなと思います。こういう言い方はなんですけど、こんなポップな恋愛ではなかったのかなと思います。
―――いまのほうが、恋愛というものがオープンということでしょうか?
う~ん、例えばこの作品の話でなら…友人の1人にゲイの人がいるとか、そういうキャラクターだったり…一番最初に出てくるDVというテーマだったりとかですね。当時は、そういう言葉すら語られてなかったし、いろんなキャラクターを上手くジャンル分けするような言葉もなかったので、その分混沌とした状態だった気がします。
■恋愛の苦しみは普遍的
―――では、今の20代の方が恋愛で考えると生きやすい時代なんでしょうか?
いや、そこはやっぱり20代って、自分の感情をコントロールするのが難しい時期で、自分が思っていることと世の中の価値観のズレを大きく感じる年代なので、外的なスタイルが変化しただけで、その息苦しさは普遍的に変わらないと思います。
―――なるほど。いつの時代になっても恋愛は苦しいものなんですね
そうですね。僕もこれを撮りながら、自分の20代の頃の恋愛を思い出すのはイヤでしたから。今、ようやく年齢を重ねてその苦しんだ時代が終わったかなって感じがしていたのですが、撮影していると、どうしてもあのささくれだった感情を思い出さないといけなかったですね。そうだよな~って(笑)。
■『失敗』も人生を楽しんでいる証
―――作中で志乃(多部未華子)がよく「間違えないように」という言葉を呟いていました。間違えない恋愛をアドバイスするとしたら?
僕が言えるのは、失敗しないようになんて無理なんだから、失敗してもいいじゃないですかってことですね。その経験は、後で振り返ってみれば、人生においてめちゃくちゃ良いネタなんですよ。イコール思い出づくりです。失敗の数だけ人として大きくなれるのかもしれないし、もっと客観的に観れば人生を楽しめていることになるのかなと思います。
―――たとえつらい経験でも楽しめたことになる?
人生は楽しみも苦しみもセットなので、そういう意味で、いろんな感情を持てたというのは、より人生を謳歌できたことになると思います。
―――そう思うとちょっと気が楽になりますね
いろんな経験ができるのはラッキーだと思いますよ。だからどんどん失敗しましょうよ、寄り道しましょうよっていう。それでいいと思いますね。
―――最後にあらためて、読者にメッセージをお願いします
この映画を作り上げるときに、脚本を書いた向井くんと話し合ったのは、どんな恋愛も肯定したいねってことでした。人それぞれにそれぞれのケースがある。この話も決してシンデレラストーリではなくて、見た人達が、自分が直結しているものに何か繋がりを感じて、その気持ちを現実のヒントに持ち帰ってくれるといいなと思います!
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■「ピース オブ ケイク」情報
*Blu-ray&DVD 2月2日発売
監督:田口トモロヲ
脚本:向井康介
音楽:大友良英
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫
発売元:ハピネット/パルコ
販売元:ハピネット
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会