すぐに体を許す女の子を理解する 『ピースオブケイク』田口トモロヲ監督(3/4)
今回は、田口監督自身の20代の恋愛についてお聞きしつつ、本作のキャラクターに対する想いについてお聞きしました。すぐに体を許してしまうタイプの女性・志乃(多部未華子)のことを理解するためのヒントについても語っていただきました。
■20代の恋愛はわからないことだらけ
―――撮影中、監督も若い頃の恋愛を思い出すこともありましたか?
それは思い出しましたね(笑)
―――監督の20代って…どんな恋愛を?
まあ、20代の頃の恋愛って、本当にわからないことが多いですよね。でもその分、感情の爆発の力強さというか、後先考えないで、こんがらがりながらも進んでいくエネルギーというのは、この年代特有の貴重なものだと思います。
―――主人公の志乃(多部未華子)も京志郎(綾野剛)に彼女がいると知りながら告白しちゃう、向こう見ずなところがかなりありました
まさにそうですね。そういう20代特有の良さは出していきたいと思いました。
■すぐに体を許す女の子を理解する
―――今、監督ご自身は、その頃の感覚とは変わっていますか?
全然違います。当時は志乃と同じで、もっと激しくこんがらがってたと思います(笑)。でも、それを思い出したときに、“ああ、この作品でも志乃を女性ととらえず、若い男性に置き換えたら、より理解できるんじゃないか”と思いました。
―――なるほど
志乃って、他人から見ると、わりとすぐに体を許しちゃうビッチ感があって、中途半端にモテて少しイラつくんですけど、でも20代の頃の男だって皆、ビッチというか、性的欲求に従順なのは当たり前じゃないですか。だからそういう考え方もアリだなと。
―――確かにそうですね
そういうのもあって、本当は読んだ最初、志乃のことは嫌いだったんですけど、だんだん好きになりました。脚本を作っているうちにわかったのは、志乃は本当に普遍的で、ウソのないキャラクターだということ。世の中きれいごとだけじゃないというね。人に対して不快感を与えるという点も、現実の世界では当たり前ですし。だからその分、志乃を誰にでもあてはまる1人の人間として、成功も失敗も可愛く描けたらと思いました。
■実は原作者も志乃が嫌いだった!?
―――お話聞いていて記者も志乃に対しての見方が変わってきました
実は撮影に入る前、ジョージ朝倉さんともお話したんですけど、朝倉さんも最初は志乃が嫌いだったって仰ったんですよ(笑)
―――えっ、作者なのにですか?
そう。元々、この作品を描くこと自体に葛藤があったみたいです。出版社からのオファーで、一般的な女の子の恋愛を描いて欲しいって言われたそうなんですが、それまで朝倉さんは、ある意味尖ったキャラクター、自分にしか描けないものを追及していらっしゃったので、それは私じゃなくてもいいんじゃないかという想いがあったそうです。
―――なるほど
それで、やってみようとチャレンジして出来上がった主人公が志乃だったらしいんですけど、描いていく中で朝倉さんご自身も志乃に対する想いが変わってきたみたいです。朝倉さんからは、“私も志乃のことは、描いているうちに好きになったのでご安心ください”と言われました。そのお話を聞いて僕も、ああ一緒なんだなと思いました(笑)。
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■「ピース オブ ケイク」情報
*ブルーレイ&DVD 2月2日発売
監督:田口トモロヲ
脚本:向井康介
音楽:大友良英
出演:多部未華子、綾野剛、松坂桃李、木村文乃、光宗薫
発売元:ハピネット/パルコ
販売元:ハピネット
(C)2015 ジョージ朝倉/祥伝社/「ピース オブ ケイク」製作委員会