あなたの正義...貫けていますか? 紀里谷和明監督『ラスト・ナイツ』(1/4)

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描いたのは“国も時代も越えた普遍的な正義”

今回のインタビューは…今作がハリウッド進出作となる紀里谷和明監督。写真家として様々なアーティストのCDジャケットを数多く手掛け、32歳の時にミュージック・ビデオ制作の世界へ進出!宇多田ヒカルさんの「traveling」や「SAKURAドロップス」の思わず魅入っちゃう映像を手掛けられました。そんな紀里谷監督が今回…2004年『CASSHERN』、2009年『GOEMON』に続き、5年の歳月をかけて撮った映画が11月14日より全国ロードショーとなる『ラスト・ナイツ』。

 

「忠臣蔵」を題材に描かれた作品で、政治が堕落した架空の帝国を舞台に、不当な死を遂げた主の意志を引き継いだ騎士たちが、己の正義を信じ、復讐を目指す物語。『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞を受賞した名優モーガン・フリーマンや、英国アカデミー賞受賞のクライヴ・オーウェン、韓国の国民的俳優アン・ソンギなど、様々な国籍の豪華メンバーが華を添えます。架空の国を舞台に描かれた「忠臣蔵」とは? そこには紀里谷監督自身が貫いている正義がありました。

 

 

 

昔だろうが現代だろうが変わらない普遍的なテーマを感じた

ーーー『ラスト・ナイツ』は2009年『GOEMON』以来の作品ですが、この作品を撮ろうと思われたキッカケは?

初めて脚本を読んだとき本当に素晴らしい脚本だなと感じた、この1点ですね。僕はアメリカのエージェントと契約して10年ぐらいなんだけど、送られてくる脚本を毎日1本…時には2、3本は読んでいる中で、本当に良いなと思ったんです。やっぱり映画は、脚本がダメならダメだし、良ければ良いものが出来ますから。

 

 

ーーーたくさんの候補から厳選した脚本なんですね

そうですね。たくさんの脚本を読むのは勉強になります。そのうちに、最初の10ページぐらい読めば、その脚本の良しあしもわかるようになりました。

 

 

ーーーでは『ラスト・ナイツ』も最初の方で“良いな”と?

最初の文体とかセリフから”良い”というのが伝わってきました。「忠臣蔵」を題材に描いていましたが、ここまでの精度で描かれたものはなかったし…人間として、これは忘れちゃいけないテーマだと思いました。あとは映画監督として、この脚本が持っている力をどれだけ表現できるかということだけでしたね。

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ーーーこの作品で訴えたいテーマは何ですか?

正義とは何なのか? そしてそれを抑圧しようとする権力があったとして、それにどう対峙するか、ということですね。社会で暮らしていると、生き延びるためにとか、会社でクビにならないようにするためにとか、いろんな理由で、自分が持っている正義をどこか曲げて迎合していくわけじゃないですか。この作品では、それと向き合う男達が描かれています。これは昔だろうが現代だろうが関係なく、極めて普遍的なテーマだと思います。

 

 

 

人それぞれが元々持っている正義

ーーー紀里谷監督にとっての正義とは?

自由を抑圧しようという悪に対して、自由を尊重しようという行為が正義だと思います。そしてそれは、もともとすべての人が持っているものだと思います。例えば、仮面ライダーとかのヒーローって人々の自由を守るために闘っていて、それは全世界共通だと思います。

 

 

ーーーたしかに…。だから応援したくなるんですもんね

偉人にしたって、ガンジーやキリスト、キング牧師とか…そういう人達は正義を強く持って闘って、だから多くの人に尊敬される。実際、この映画には、イギリス、ニュージーランド、イランと、いろんな国の人達がキャストとして入っていましたが、みんな根本のところは同じでした。

 

 

 

映画というのはシステムに対する戦いがほとんど

ーーーこのテーマを現代で起こっていることに置き換えるとしたら、どんなものがあるでしょうか?

現代で言ったら、戦争や企業同士の競争など、家族を守るためとか国を守るためという理由で残虐なことが日々繰り広げられているわけです。みんなそれぞれ、自分の家族に対する愛を持っているのにも関わらず、外に出たら他人にそれをしてしまっている。それでいいの? ってことを僕は投げ掛けたいんです。あなたの心はどう感じるのか? 映画を通して一人一人に対する問いかけです。

 

 

ーーーそれはたしかに多くの人が葛藤していることですよね

映画というのは、そういうシステムに対する戦いがほとんどだと思います。『タイタニック』は階級制度というシステムに対するアンチテーゼだし、『スターウォーズ』は、ダースベイダーが率いるシステムへの戦いだし…。それがなぜヒットするのかっていうのは、きっと観客もその想いを普遍的に持っているからだと思います。

 

 

ーーーなるほど。紀里谷監督の問いかけに、お客さんがどんな答えを出してくれるか、楽しみですね

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■「ラスト・ナイツ」公開情報

*2015年11月14日(土)全国ロードショー~

監督:紀里谷和明

脚本:マイケル・コニーベス

出演:クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、伊原剛志、アン・ソンギ

公式サイト:http://lastknights.jp