日本が世界の風上に立つためのランキングプラットフォームを作る!『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』代表 別所哲也さん(2/4)

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今年で17回目を迎え、2004年には米国アカデミー賞の公認映画祭として認定されるなど、海外からも大きく注目されるようになった「ショートショート フィルムフェスティバル  & アジア」。前回はその誕生秘話について語ってもらいましたが、今回は、その成功に至るプロセスを元に、映画祭への情熱とビジネスマンとしての側面に迫ります!

 

 

 

映画祭をランキングプラットフォーム(価値づけ装置)のような存在に

―――「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を成功へ導くためのビジネスモデルはどのようにプランを立てたのですか?

映画祭自体は単純にイベントというか、国際交流文化事業なので、正直ビジネスモデルというほど変わったことはないですよ。映画を上映して人が集まってお金を頂く。地域活性化ということも含めたら、行政からも支援を頂いてお祭りをやると。

 

 

―――別所さんご自身、運営するにあたって意識されたことは?

僕が1番大事だと思った部分は、僕たち日本人は海外に向けて、自分達が良いと思うものを発信していないということでした。例えば、国内の監督がカンヌ映画祭で受賞して、初めて日本人は、にわかに騒ぎ出し、それがすごいとニュースにするけど、それはどうなのかと。音楽分野ではレコード大賞とか紅白歌合戦とかあったり、文学では芥川賞や直木賞があったりするけども、じゃあ映画界ではどうかと。確かに日本アカデミー賞はあるんだけど、世界が注目しているかというとやはり疑問がある。だからこそ、この映画祭は、外に向けて発信するための価値づけ装置…ランキングプラットフォームと言うんですけど、そういう存在にして行こうと意識しました。

 

 

―――海外で認められてやっと国内でも認められるっていう日本人は多いですよね

僕自身もハリウッド映画に出演して、日本に戻って来たとたんに、それまで何も言ってこなかった人たちが「いや~君はすごいと思ってたよ」なんて言ってくる経験をしてますからね。だから自分たちで良い物は良いと言って発信しないといけないと思います。それが日本人は極端に得意ではないと思います。だから、今あるものの価値を磨いて送り出すというランキングプラットフォームを育てないといけないんです。

 

 

 

 

世界を日本に呼び込み、日本が風上に立つ

―――具体的にはどのように映画祭を価値づけしていったのですか?

国際的なイベントにということは意識しました。例えば世界的に有名な監督が若い頃に撮ったショートフィルムを紹介するとか。それと同時に、まだ無名のクリエイター達で大規模なコンペもやると。こうすることで、海外の人達、作品をこっちで評価するという転換が起こせると考えました。

 

 

―――みんながその映画祭を目指したい気持ちになりますね

こういう価値づけは、映画以外の業態にも必要なことなんですが、日本はランキングランキングビジネス、アーカイブビジネス、オークションビジネスは苦手と言われているんです。ものづくりはきちんとするが、物語を発信するのは得意じゃない。でもそれを変えたいなと思いました。

 

 

―――実際それが成功へと繋がっていますが、軌道に乗ったと意識したのはいつ頃ですか?

アメリカのCNNとか、メディアで大きく取り上げてくれるようになったり、ロサンゼルス開催とかシンガポール開催とか国際的にイベントをできるようになった頃ですね。もちろん、4年目に米アカデミー賞公認映画祭になったときは1つの手応えがありました。

 

 

―――日本だけじゃなく、映画界全体にとっても大きな出来事ですね

ただ、これも言ってしまえば、彼らの方が上という目線だけど、いずれは僕らが向こうを評価したり認定したりできればいいなと思っています。映画祭を海の向こうに発信して世界を日本に呼び込み、こっちが風上なんだぞって感覚に代えていくことを目指してやっています。

 

 

 

日本人にはもっと世界を知って戦って欲しい

―――SSFFの立ち上げから17年を通して、映画界で感じた変化は?

全てのことに変化があったという感じでしたね。映画というのは20世紀の100年間で育った文化と産業ですけど、21世紀に入って、クリエイター達は“自分達は新しい時代の最初にいるんだ”っていう感覚をすごく持ってたと思います。その中で、映画はフィルムからデジタルに変わって行ったし、インターネットを介した映像コンテンツはどうあるべきかなど、一気に動き出した感じでした。

 

 

―――デジタル化は映画界にとって良い方向に進んでいると思いますか?

まあ、良い悪いかはなかなか言いきれないですよね。フィルムの方が好きだって人も多くいるし、両方の価値観が渦巻いてるんじゃないですかね。

 

 

―――その中で日本のクリエイターたちは変化に乗れていますか?

僕としては日本人には、もっともっと世界を知って戦って欲しいし、そうするべきだと思っています! 世界の人々と何が分かり合えるかとか、何が共通のメッセージや価値として伝わるのかとか、日本人にしか出せない個性やメンタリティは何かとか、海を渡って外を知らないと本当はわからないと思うんです。でも、語学とかで挫折しちゃう人も多いよね。

 

 

―――そこは大きな壁ですね

ただ果敢にチャレンジしている人も確実に増えてきました。少なくとも僕らの映画祭に応募してくれてる監督たちは、最初から自分で外に出ているし、フランスやアメリカで勉強してるという人も多いです。

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■「シネマミュージアム –秋の特別上映会-」情報

*2015年10月14日(水)~18日(日) 東京都美術館

*2015年10月13日(火)~16日(金) アンダーズ東京

主催:ショートショート フィルムフェスティバル アジア実行委員会

共催:東京都

SSFF & ASIA オフィシャルサイト:www.shortshorts.org

ブリリア ショートショート シアター:http://www.brillia-sst.jp/

旅もじゃ:http://www.tabimoja.com/

 

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